今回は、最近話題となっている頓知ドットのAR(拡張現実)アプリ「セカイカメラ」。このアプリをクリエイターとしての活用方法にフォーカスして紹介していこう。アニメ「電脳コイル」でも知られるAR技術の魅力の一端を体験できる同アプリでは、現実の空間(リアルワールド)に、看板や、付箋ともいえる"エアタグ"というマークをアプリ上から付けていくことができる。

同アプリは、リリースされてから間もないが、秋葉原などを中心に、ユーザーの手により非常に多数のタグが続々と増殖中だ。主要なスポットが軒並みエアタグで埋め尽くされる日も近いかもしれない

セカイカメラでタグ付けされた情報は、実際の空間にレイヤー表示される形で、アプリ画面上に表示される。また、他のセカイカメラ・ユーザーが、同じ空間を同アプリを通して覗いた際にも反映されており、不特定多数で様々な情報を共有することができる。

ポケット機能を利用すると、お気に入りのエアタグを持ち運びできる。あらかじめ投稿したエアタグをアプリ内のポケットに保存しておけば、カバーフロー表示されるエアタグの削除や位置情報(Google Map)も後から確認でき大変便利

エアタグは、基本的にiPhoneの場所を基点として情報が紐つけられるわけだが、その位置情報自体はGPS、Wi-Fiアクセスポイント、携帯電話の基地局などを組み合わせて現在地を測定している。そのため、GPS衛星が補足できない、Wi-Fiがオフになっているなど、状況の変化により位置精度が悪化し、かなりおおざっぱな精度での位置測定となる場合もある。もちろん、GPSだけでなく、iPhone 3GSの電子コンパスにも対応しており、3GSの場合には方向も検出してくれる。例えば、テキストタグを投稿する瞬間に、下を向いて投稿すれば、その場所の床に対してエアタグを付けることも可能だ。

テキスト、フォト、サウンドの3種類が、エアタグとして貼り付けできる。自分のエアタグは、詳細表示から削除することも可能。ただし、投稿した場所から移動してしまうと詳細表示に切り替えることはできなくなっている

エアタグの情報は、現在のところ「テキスト」、「フォト」、「サウンド」(30秒間)の3種類。それらは、カメラに写る被写体を個別に認識しているわけでなく、あくまで場所に紐付けされるシステムなため、あらかじめ設定されている主なランドマークをはじめ、道や場所の案内、店舗紹介などインフォメーション的な利用が一般的だ。ただし、エアタグに入力する情報に制限は設けられてないので、アイディア次第で斬新で楽しめる活用方法を見い出すことができるはずだ。

例えば、セカイカメラをクリエイターが使う場合、比較的大きな場所(ロビーやホールなど)で、バーチャル作品展を開催してみると面白いだろう。ホールの壁、床、天井などに自分の作品(フォト/サウンド)を、エアタグとして展示する。その場所を訪れたセカイカメラ・ユーザーは、ギャラリー感覚で展示作品を自由に閲覧できるだけでなく、セカイカメラのポケット機能を使えば、来場者は気に入った作品を自分のアプリに保存して持ち帰ることさえ可能となる。また、感想やコメントを残すこともできるので、間接的なコミュニケーションツールとしても機能するのが楽しい。ぜひ、ご近所のコミュニティースペースなどで皆さんもARな即席展示会を開催してみていかがだろうか。

編集部のロビーに、刊行中の書籍を並べて展示してみた。今回は、ロビーの様々な場所にエアタグを貼り付けて簡単にバーチャルギャラリーを演出。会社の新製品をフロアに並べるなどビジネスシーンにも有効だ

ちなみに、エアタグが目の前に表示されて見えにくい場合は、エアタグを指先でドラッグして移動させることができる。また、エアタグを長押すると、複数のエアタグが回転表示されるので多数のエアタグを一度に閲覧する際に便利だ

なお、現在のセカイカメラでは、残念ながらエアタグへのハイパーリンクの埋め込み、カメラライブラリからの写真の読み込み、任意の音声ファイルの貼り付けなどには対応していない。つまり、自分の作品をエアタグとして展示する場合は、その場で撮影や録音する必要があるため、少々問題がある。しかし、セカイカメラを利用することで作品公開のチャンスが今後広がることは間違いないだろう。

エアタグは、フィルタ(種類、時間、距離、自分および他人など)でも表示を整理可能。また、設定アプリからTwitterのアカウントを登録すれば、エアタグの投稿と同時にTwitterへも投稿を行える

そのほか、機能面や活用方法など、そのすべてが発展途中であるセカイカメラ。これから多くのユーザーからのフィードバックやアイディアにより、さらなる進化を遂げていくだろう。また、セカイカメラはiPhone用アプリとしてリリースされているが、ゆくゆくはWindowsMobileやAndroidなど他のプラットフォームや多様なARアプリともタグの相乗り・連携ができるようなるなど、さらにその世界が広がりを見せることにもぜひとも期待したいところだ。

セカイカメラ

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カテゴリ ソーシャルネットワーキング
用途 プレゼン&コミュニケーション・ツール