マカフィーがAndroidスマートフォンに向けた詐欺電話、迷惑電話対策アプリ「マカフィーセーフコール」の提供を開始する。auスマートパスの契約者向けを皮切りに、ドコモでの提供も予定されている。

警察庁の調査では、今年の10月までに振り込め詐欺を含む被害総額は450億円を超え、すでに、過去最悪だった昨年のペースを上回るペースで増加しているという。

今回提供されるアプリは、パートナーとしてトビラシステム社と協業、同社のデータベースを使ったブラックリスト方式での対策となる。同社は固定電話を対象とした迷惑電話着信拒否システムで実績のある企業だ。具体的には、かかってきた電話番号と同社が蓄積しているブラックリストやユーザー自身の電話帳などの許可リストを照合し、安全、迷惑、危険、不明などを判別、それに応じて緑、黄色、赤、グレーのカラー表示を着信画面に出すといったことができる。また、設定に応じて迷惑電話、危険電話を着信拒否することもできる。

マカフィーとしては、これまでデバイスを守るということをやってきたが、このアプリによって、さらに踏み込み、ユーザーを守るというスタンスに立つことができるとしている。

今年は、携帯電話各社が音声定額システムをスタートさせたことから、迷惑電話や詐欺電話をかける側のコスト構造もこれから変わっていく可能性があるという。名簿業者などから入手した電話番号に片っ端から電話をかけるにしても、1回8円のコストがかかるのとかからないのとでは大きな違いがあるからだ。それが迷惑電話の温床となるのは間違いなく、それを今からブロックする体制を整えることは重要だという。

今回のアプリの実装では、個々のユーザーが独自にブロックした電話番号を収集するようなことはない。その情報があれば、リストの精度は上がっていくはずだが、現時点では、個人情報であるとして見送られている。ただ、将来的にはユーザーの同意を得て、同意したユーザーのみ、そのブロック情報を収集するようになる可能性もあるということだ。

これらの詐欺に遭いやすい高年層が、スマートフォンにアプリを入れて対策するということは難しいという課題もある。そもそも高年層が使っている端末は、まだ、ガラケーというケースも多い。本当なら、キャリア側でブロック等を行うほうが効果がありそうなものだが、通信事業者がそんなことをやってもいいのかどうかといった問題が出てくる。現時点ではできることをできるところからやるという判断なのだろう。

メールには迷惑メールフィルタの仕組みがあって、それをはじき出すことができていたが、音声通話ではそれができていなかった。今回のマカフィーの取り組みは、そこをなんとかしようというものだ。ちなみに、警察が悪徳業者を特定した場合、キャリアにその電話番号の本人確認が行われるが、その回答が出てくるまでには数日かかるのだという。その数日の間に増える新たな被害を防ぐためにも有効だということだ。

テクノロジーが人を救う方法論がまたひとつ増えたということか。年老いた親にスマートフォンを持たせる理由がまた増えそうだ。なお、同等のアプリをiPhoneで提供することは、システム的にまだ難しいとされている。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)