今回から2回わたり、報告をまとめたり、口頭で質問に答えたりするときに使える「カウンティング」というテクニックとその習得方法を紹介します。前半ではカウンティングとは何かを説明し、後半ではドキュメントの執筆や口頭での説明で活用するためのポイントを解説していきます。

相手をいらいらさせる「またまた病」

カウンティングのテクニックを身に付けることで、わかりやすい報告ができるようにます。また、質問に効果的に答えることができるようにます。また、論理的な思考を身に付けることができるようになります。また、主張に納得してもらいやすくなります。また、度胸も据わってきます。また、……

お気づきのように、これは良くない例です。この例のような文は、考えがあまり整理できていない状態で書いたり話したりしたときによく現れます。この文の特徴は、「また、」という接続詞を使って、だらだらと説明をつないでいるところです。筆者はこれを「またまた病」と呼びます。

「また」という接続詞を使ってだらだらと項目を並べていると、聞いている方は全体像が見えず、理解するのが大変

「またまた病」は書くときにも話すときにも生じますが、話すときのほうが起こりやすく、相手をいらいらさせてしまう原因になります。というのは、このような答え方では、最後まで聞いてからでないと話全体がわからないので、聞いている間ずっと、見通しが悪い中で何が言いたいのか考えながら理解しないといけなくなるからです。毎回、終わったと思ったら、また次が出てくるので、聞くほうにとってはたまりません。

上の例は短いものですが、ひとつひとつの説明が長くなるとかなりの苦痛になってきます。本人が気づかないうちに、「要領を得ない話をする奴だ」とか、「もうちょっと考えを整理して話せないのか」といった評価を受けたりすることになりかねません。

これから、コンサルタント、上級SE、プロジェクトマネージャといったコミュニケーションが重要な職種で活躍しようとする人はくれぐれも注意が必要です。

カウンティングのテクニック

「またまた病」の克服は実はそれほど難しくありません。「カウンティング」と呼ばれるテクニックを使えばよいのです。カウンティングというのは、文字通り「数え上げる(カウントする)」というテクニックです。要するに、最初にどれだけの数のポイントがあるのかを宣言してしまうのです。

上の例だと次のようになります。

カウンティングのテクニックを身に付けることで得られるメリットは3つあります。

1つ目は、わかりやすい報告を作ることができることです。2つ目は、質問に効果的に答えることができることです。3つ目は、論理的な思考を身に付けることができることです。

といったぐあいです。

さらに一歩進んだ応用として、数字を示すだけでなく、それを代表する項目名も示す「ラベリング」というテクニックもあります。これは次のようになります。

カウンティングのテクニックを身に付けることで得られるメリットは3つあります。それぞれ、書く、話す、考える、という点に関わります。

書くという点では、わかりやすい報告を作ることができるようになります。話すという点では、質問に効果的に答えることができるようになります。考えるという点では、論理的な思考を身に付けることができるようになります。

カウンティングやラベリングのテクニックを使って、最初に見通しを示すことで聞く人にいらいらされることなく、話をすることができるのです。

次回は、このテクニックの習得方法に進みましょう。

(イラスト ナバタメ・カズタカ)

執筆者紹介

林浩一(HAYASHI KOICHI) - ウルシステムズ ディレクター


富士ゼロックスの総合研究所にて、オブジェクト指向、文書処理、ワークフローシステムなどの研究に従事した後、インターネットでの新規事業の開発に携わる。その後、外資系のXMLデータベース会社にて、企業間取引の電子化に関するコンサルタントを経て現職。コンサルティング部門を率いクライアントにサービスを提供すると共に、そのための新しい手法の開発と展開を進めている。その他、コンサルティング・スキルを持つIT技術者の育成にも力を入れている。雑誌記事執筆多数。著書に『ITエンジニアのロジカル・シンキング・テクニック』(IDGジャパン発行)がある。