今回の選書

愛されるアイデアのつくり方(鹿毛康司) WAVE出版

愛されるアイデアのつくり方(鹿毛康司) WAVE出版

選書サマリー

お客様に愛されたい─ビジネスマンなら、誰でもそう思うはずだ。モノやサービスが溢れる今、画期的な商品を生み出すことは至難のわざだ。

多くの人々が、競合と大差ない「差別化」を作ろうとして「心」を忘れた戦いをしている。しかし、もしお客様に、会社や商品を愛していただけたら、どうだろう?

「差別化」といった戦略より、もっと強い「価値」を生み出し、競争力を手中にできるはずだ。だから、エステーという生活雑貨企業に身を置きながら「愛されるCM」作りに全精力を傾けているのだ。

おかげさまで、殿様が出てくる「消臭プラグCM」や、支店長が踊る「消臭ポットCM」、緑色のとぼけた熊が出てくる「ムシューダCM」など、エステーのCMは多くの皆様に愛していただいている。

そして2011年、ミゲルやT.M.Revolutionの西川貴教さんが歌う「消臭力のCM」が、とにかく愛された。日本で最も好感度の高いCMに選んでいただき、いくつかの賞も頂戴した。

エステーのCMはよく「奇策」と言われる。「自由にやられてますね」「よくそんなアイデアが出ますね」などと言われることが多い。しかし、それは誤解だ。

「奇策」を狙っているわけではないし、自由にやっているわけでもない。すべてのアイデアは、エステーという会社が置かれた状況に対応するために生み出された戦略的なものだ。

テレビのCMは、毎月新作が1000種類も生み出され、旧作も含めると4000種類も放送されている。そこで、どれほど立派なCMを作り、お金をかけて「枠」を押さえても、覚えてすらもらえないのだ。

しかも、エステーの広告予算が約30億円なのに対し「広告上手」と呼ばれる企業のほとんどは、その10倍近くの予算を持っている。そういう中でどう戦うかを考える必要がある。

ヒットCMの公式は「有名人×放送回数」だ。それにはカネが必要だ。エステーは、そこでは勝負できない。ではどうするか?「無難なアイデアでは、ぜったいにダメ」だ。

ここでは「突き抜けたアイデア」が必要だ。ただし「押し付けがましさ」があってはいけない。なぜなら、視聴者にとって、CMとはテレビ番組の間に訪れる「休憩時間」だからだ。

その休憩時間に、これみよがしに「ウチの商品いいでしょう?」などと言えば、嫌われるのは当たり前だ。

それより、気持ちよく「こんにちは」と声をかけさせていただくような、心の中に温かいものを感じていただけるCMをつくるべきだ。

そんな「愛されるアイデア」に、他のCMにはない、視聴者を惹きつける「何か」をプラスする。必要なのは「みんなをほっと笑顔にする、突き抜けたアイデア」だ。

それが、エステーでの「条件・制約・目的」から導き出した結論だ。これまでのアイデアは、すべてこの基本戦略を実現するために生み出されてきたのだ。

自由こそ、アイデアを生む。よく耳にする言葉だ。しかし、自由の意味をはき違えてはいけない。

「条件」や「制約」を踏まえた戦略も持たず、野放図に考えることが「自由」なのではない。それはただ闇雲に歩き回りに等しい。そこに生まれるのは、アイデアでなく、単なる思い付きだ。

大切なことは、まず自分の足元をしっかり見つめることだ。その上で、どこを目指すのかを明確にすることだ。これは、戦略を持ち、その目的に向かってどう進むかを考えることを意味する。

この時はじめて、あらゆる束縛を解き放って、自由にならなければならない。これが本当の自由だ。戦略なきところに、アイデアなし、これこそが、アイデア発想の第一歩なのだ。

選書コメント

世間をアッと言わせ、しかも愛される、素敵なアイデアの作り方を教えてくれる本です。お客様を笑顔にする、究極のアイデア発想法です。

著者は、ムシューダの熊雄や消臭プラグの殿様、そして「消臭力」のミゲル君など、ユニークで、しかも国民的に愛される広告で支持されるエステーの特命宣伝部長、鹿毛康司さんです。

アイデアを連発する著者の原点は、何とあの「雪印事件」の体験にあるそうです。そこで、培った徹底的にお客さまと向き合い、対話するアプローチが、見る人を幸せにする広告に結実したのです。

「発想法」とありますが、方法の解説本ではありません。著者いわく、アイデアで大事なことは、根底にある想いということで、本書も、小手先のテクニックでなく、著者の想いを中心に語ります。

最近のビジネスの現場は、コミュニケーションも不足がちで殺伐としています。そのせいか、情熱とか、想いとかは、青臭いと敬遠される傾向があります。

しかし、仕事が人の営みである以上、その質を高め、成長するために大切なのは、やはりこの青臭い部分です。そのことを改めて思い出させ、教えてくれました。

想いを大事にする著者だけに、本書も熱い筆致でつづられています。壮絶な体験や、その時の心情も包み隠さず語ってくれるため、ビジネス書なのに感動さえ覚えます。

もちろん、アイデア発想に必要な大原則や法則も紹介します。アイデア発想したり、それを職場に活かす際に活かすことができます。

広告や宣伝、商品開発など、クリエイティブな部門に携わる人は、ぜひ、お読みください。また、仕事にやりがいが感じられない人や、仕事に疑問を感じている人にも、お勧めの一冊です。

選者紹介

藤井孝一

経営コンサルタント。週末起業フォーラム代表。株式会社アンテレクト代表取締役

1966年千葉県生まれ。株式会社アンテレクト代表取締役。経営者や起業家という枠にとどまらず、ビジネスパーソン全般の知識武装のお手伝いを行うべく、著作やメールマガジン、講演会、DVDなど数々の媒体を活用した情報発信を続けている。著書にベストセラーとなった『週末起業』(筑摩書房)はじめ、『かき氷の魔法』(幻冬舎)、『情報起業』(フォレスト出版)など。

情報提供: ビジネスパーソンの情報サイト「ビジネス選書&サマリー