今回の選書

大人の勉強のやってはいけない! 仕事と勉強を両立させる108項目(佐藤孝幸) クロスメディア・パブリッシング

大人の勉強のやってはいけない! 仕事と勉強を両立させる108項目(佐藤孝幸) クロスメディア・パブリッシング

選書サマリー

社会人の勉強は、学生の勉強とは違う。一番の違いは、勉強に費やすことのできる時間だ。限られた時間での勉強に求められることは「一生懸命マジメにやる」ことではない。

目標を持ち、戦略を立て、効率的に時間を使うことだ。つまり、ムダなことをしないよう、合理的に取り組むことが大切なのだ。勉強には戦略が必要なのだ。

たとえば、世界には教材を販売して儲ける会社がごまんとある。彼らは、教材を売ることが仕事だから、教材を宣伝してたくさんの人に受講してもらおうとする。

彼らの誘い文句にはまり「何かしておかなければ」という漠然とした不安や「これさえやっておけば」という期待などに突き動かされ、結果の出ない、意味のない勉強を続ける人がたくさんいる。

「勉強して、何がしたいのか」「そのために何を身につけ、どう活かしたいのか」これを決めずに勉強を始めるのは、ナンセンス、時間のムダだ。

「目標を立てる」際に重要なのは、立て方だ。立て方次第で、結果が大きく変わってしまう。場合によっては「勉強なんかしなければよかった」ということになることさえある。

たとえば、今も「弁護士になろう」と考える人は多い。弁護士は増える一方だ。しかし、縮小傾向にある日本で、今後、弁護士の仕事が増えるとは考えにくい。

実際、弁護士になったのに法律事務所に就職できない「弁護士ニート」が増えている。何年も勉強して弁護士になったのに、なってみたら、一般の会社員より収入が低いという人も少なくないのだ。

「弁護士になる」は手段であり、目的ではない。「自分の目標には、戦略があるか」「目標が、目標になっているか」、勉強をはじめるに際して、必ずこの点を確認するべきだ。

「継続は力」という。しかし、ここにワナがある。勉強は定期的に続けていくことが大切だが、続けることが絶対必要なわけではない。問題は成果だからだ。

たとえば「健康のために毎朝30分ランニングする」という目標はいい。だが「英語を1日30分勉強しよう」はだめだ。「どれだけ続けたか」と勉強は関係ないからだ。

勉強するのは、達成したい目標があるからだ。だから、掲げる目標は「交渉ができるようになるまで、英語のレベルを上げる」などであるべきだ。効率を考えれば、勉強時間は少ないほどいいはずだ。

もし、勉強しているうちに「続けることが大切」と、意識が変わっているとしたら、改めるべきだ。そうした、目的と手段のすり替えが、大切な時間をムダにしてしまうのだ。

目標には「期限」を決めることだ。私は、資格取得には「必ず2年以内に取る」ことにしている。もちろん、資格によってバラつきはあるが、最長2年だ。達成できなければ諦める。

残酷だが、人には適正がある。特に資格試験の場合、合格がゴールではない。試験合格は「その道に入ることが許された」というビギナーの証であり、そこからがスタートだ。

たとえば、「15年間かけて公認会計士になった人」と「1年でなった人」のどちらかに仕事をお願いするなら、普通は1年でなった人にお願いしたいはずだ。

自分の適性に合わないことで結果を出そうとすると時間がかかるし、コストも増える。積み上がったコストの回収にも時間がかかる。その意味で「2年以内」というのはリスクヘッジにもなる。

期限を短くする理由は、もう一つある。集中して短期決戦できることだ。人は、期間が長くなるほど、モチベーションが維持しにくいのだ。短期間に全力を注ぎ、最小のコストで成果を出すべきなのだ。

選書コメント

大人の勉強がテーマの本です。社会人が資格や英語などの勉強に取り組む際、留意すべき点を108項目取り上げ、それぞれわかりやすく、項目ごとに読みきりで教えてくれます。

社会人向け勉強法が、ひところ大ブームになりました。今では、すっかり定番になっています。将来に対する不安を反映しているのだと思います。

普通、この手の本では「やるべきこと」を書くのが普通ですが、本書はやりがちな間違いを指摘し、解説する、いわば「べからず」集です。地雷を踏まないために読んでおきたい本です。

私自身、サラリーマン時代に自己投資と称して、資格に挑戦しました。中小企業診断士という資格です。そのため、本書の内容には、大いに共感しました。

今思えば、本書に書いてあることをたくさんやっていました。たとえば「勉強時間に満足してしまう」とか「天狗になる」などです。「あるあるネタ」のように読みました。

中には「勉強場所を決めるな」「人脈を作るな」など「おや?」と思う項目もありました。このあたりも、著者の説明を読めば納得できます。

なお、本書に挙げた項目は、勉強に活かせるに留まりません。時間の使い方、習慣など、ビジネスで成果を上げるための教訓としても活かせる内容です。

社会人で「これから勉強しよう」と考えている方や「すでに勉強をしているのに、まったく成果が出ない」という方、「何か勉強しなければ」と焦っている方にもお勧めします。

選者紹介

藤井孝一

経営コンサルタント。週末起業フォーラム代表。株式会社アンテレクト代表取締役

1966年千葉県生まれ。株式会社アンテレクト代表取締役。経営者や起業家という枠にとどまらず、ビジネスパーソン全般の知識武装のお手伝いを行うべく、著作やメールマガジン、講演会、DVDなど数々の媒体を活用した情報発信を続けている。著書にベストセラーとなった『週末起業』(筑摩書房)はじめ、『かき氷の魔法』(幻冬舎)、『情報起業』(フォレスト出版)など。

情報提供: ビジネスパーソンの情報サイト「ビジネス選書&サマリー