2011年夏のLTEサービス開始から1年、韓国の通信業界には新しい波が押し寄せている。事業者やメーカーのシェアの変動は今後日本でも同様の流れが起きるかもしれない。

事業者のシェアに大きな異変

韓国の通信業界はこの10年間で大きく変わった。携帯電話シェアトップのSK Telecom以下、2位のKT、3位のLG U+の各社は他社の買収や子会社とのサービス融合で「固定」「移動」「インターネット」と3つのサービスを提供する総合通信事業者となり、それぞれの分野で各社が顧客獲得にしのぎを削っている。

このうち携帯電話分野に注目すると、3社のシェアはSK:KT:LGの比率が約5:3:2のまま大きく変わることはなかった。政府がSK Telecomの新規加入受付を強制的に制限したり、KTがiPhoneの取り扱いを開始しても王者SK Telecomのシェアトップの地位は崩れなかったのである。

だが昨年7月にSK TelecomとLG U+がLTEを開始してから、両社の差は一気に狭まっている。LG U+は昨年内に韓国主要都市を先駆けてLTEのカバーエリアとし、料金もSK Telecomより割安としたことで顧客数獲得ではほぼ互角の戦いをしている。一方LTEの開始が今年1月にずれ込んだKTは半年間のブランクが影響し2社に遅れを取っている。

韓国では全事業者がLTEを開始している

LTE加入者数でシェアを伸ばすLG U+

2012年7月時点でのLTE加入者数はSK Telecomが400万、KTが140万、LG U+が300万で比率は47.6:16.7:35.7、LG U+の躍進が目立っている。今後は総加入者数でLG U+を上回るKTが3Gからの乗換えでLTE加入者を増やすと見られているものの、LG U+は対応端末や代理店を増やすことで対抗、両社の差がどこまで縮まるかが注目されている。

Pantechがシェア2位に浮上

全通信事業者がLTEを開始したことで、売れ筋の端末も大きく様変わりしている。韓国でも各通信事業者、メーカーが販売する製品は今やほとんどがスマートフォンになっており、メーカーの勢力はSamsungのお膝元だけあって同社は韓国でシェア1位の座を長年に渡ってキープ。2位のLGが追従、そして3位にPantechというのがこれまで各社の「定位置」であった。

だがLTEの開始と共に各メーカーはハイエンドモデルを中心にLTE対応製品を強化。そのような状況の中、圧倒的な新製品数を矢継ぎ早に市場に投入するSamsungの前に、LGはやや苦戦を強いられている。そしてその差を突くようにシェアを伸ばしているのがPantechだ。同社は国内向け製品をLTEスマートフォンに完全シフトさせており、フィーチャーフォンや3G製品は北米向けなど海外市場向けのみとしている。

各メーカーはLTE製品を増やす

2月の販売上位5にPantechが2台入る

製品を特化した結果、あらゆる製品が揃うSamsungに対し「LTEならPantech」という差別化に成功。同社は今年1月にはLTEスマートフォンでLGを抜き国内シェア2位に浮上。2012年第1四半期でも韓国国内LTEスマートフォン販売台数が同社は45万台となり、1位Samsungの223万台には追いつかないもののLGを抜き去った。今後韓国のLTE普及率が高まるにつれ、Pantechの存在感はより大きなものになりそうである。

日本はこの秋に注目

日本ではドコモに続きこの秋冬にauとソフトバンクがLTEを開始予定で、ようやく本格的なLTE時代を迎えることになるだろう。韓国のようにこれら大手3社の競争がLTE加入者数の拮抗や逆転を起こしうるかもしれない。しかもこの秋登場の新しいiPhoneがLTEに対応するとなれば、各社のパワーバランスには大きな変化が生じるだろう。LTEの開始は日本のみならず、シェア奪回を目指す各国の事業者にとって大きなチャンスになるだろう。