アニメソングを中心に活動しているシンガー・黒崎真音が、自身のデビュー7周年を記念したベストアルバム『MAON KUROSAKI BEST ALBUM -M.A.O.N.-』を9月27日にリリースした。このベスト盤には、アニメタイアップとなったシングル10曲に、新曲「僕はこの世界に恋をしたから」を加えた全17曲が収録されている。
今回のインタビューでは、幼少期から抱いてきたゲームや漫画への愛と、それを原動力に活動していたアマチュア時代から2017年のミュージカル出演に至るまで、彼女の歩んできた道程を伺った。今一度そのバイオグラフィーを捉え直し、彼女が伝えてきたメッセージを見つめ直してみると、"戦う"というテーマ、それに対する答えが浮かぶ。そして彼女自身が抱く、これからの黒崎真音像とは。ベスト盤リリースのタイミングに、様々な角度から彼女の過去、現在、そして未来を探る。
音楽、漫画、ゲームが身近にあった幼少期
――ベスト盤をリリースされてのインタビューということで、まずはご来歴を振り返っていきたいと思います。子供の頃はどのように音楽に触れてきたのでしょうか?
家族の皆、音楽が好きで……父がギター、姉がエレクトーンとフルートを演奏していたんです。私も子供の頃にピアノを弾いていて、小さい時から皆が一緒に演奏するのを見ていたので、割と近くに音楽がありましたね。中高の頃にトランペットを始めて、吹奏楽部にも入りました。そうして音楽と触れ合っている内に、歌の道にどんどん入っていきましたね。
――小学生の頃の思い出深いアニメ作品を一つ挙げていただけますか。
『セーラームーン』ですね。グッズを買ってもらった思い出があります。父もアニメは好きだったので、『笑ゥせぇるすまん』とかを観ていて、むちゃくちゃ怖かった記憶も(笑)。ただ、2人の姉が漫画好きで、家にものすごい量があったんですね。なので、アニメよりは漫画の方が身近だったかなと思います。あとゲームはだいたいのハードがそろっていました。小さい頃は、漫画を読むかゲームをしているかという感じでしたね。
――では、その漫画やゲームで「この作品が面白い!」と挙げるなら?
渡瀬悠宇さんの作品はほぼ全て読みましたね……特に好きなのは『ふしぎ遊戯』です。それに矢沢あいさんと浦沢直樹さんの作品もすごく好きです。今は、2018年に実写映画化される『累-かさね-』にハマっています。ゲームは、まず熱中したのは恋愛育成シュミレーションゲームですね……『ときめきメモリアル』シリーズが好きでした。でも乙女ゲームが一番やっていたかもしれないです。『薄桜鬼』はずっと好きでしたし、『うたの☆プリンスさまっ♪』も追いかけていたし、それにオトメイトさんのゲームは随分とやりこみましたね。
エヴァネッセンス×アニソン!? 目標はMinami
――その環境で、どのようにアニソンに興味を持たれたんですか?
アニメそのものには……吹奏楽部の活動にのめり込んでいったことや、「アニメは子供が観るもの」という家の雰囲気もあって、ちょっと離れていたんです。そんなところで、大人になってから、ある時に昔のアニメを観返す機会があって、「アニメもどんどん進化している」と気付いて、それが面白く思えたんです。また、オープニングテーマ(OP)やエンディングテーマ(ED)を改めて聴いて、「このアーティストさんは、作品のことを考えて歌っていて、作品に身を捧げているんだな」「ここの歌詞は、たぶんこのキャラのことを歌っているんだな」というのが強く感じられて、とても感動したんです。その時、自分が体験したことのない音楽への愛情を感じて、「こういう風に音楽を作れる人になれたら幸せだな」と考えて、アニソンをすごく意識するようになりましたね。
――当時をいま振り返ると、いかがでしょうか。
アニソンに出会う前から、歌の活動はしていました。1枠10分くらいの出演時間で、お客さんを20人くらい呼ばないといけないといった状況で、友達に来てもらったりしていましたね。洋楽の曲に無理やり日本語の歌詞をつけて歌ってみたり、アニソンに出会ってからはカバーしたりもしました。メンバーを集めて、アイドルが出るようなイベントにフルバンド編成で挑んだこともありましたね。目立とうと必死で、メイクや衣装もすごく濃かったです。
――その頃から影響を受けていたロックバンドやシンガーさんはいらっしゃいますか?
アメリカのエヴァネッセンスというゴシックメタルバンドが好きでした。ボイトレに通っていた時に「こういうのがいいんじゃない?」とおすすめされたのがきっかけで……「これだ!」と一瞬でバッチリはまりました。その流れでアニソンを聴いた時、「ゴシックメタルとアニソンを合わせたらとてもいいんじゃないか?」と考えて、デビューの時もそれを狙った作風にしました。アニソンシンガーですと、やっぱりMinamiさんに一番影響されましたね。『君が望む永遠』という作品を知ったのがきっかけでした。アルバムを全部聴かせていただいて、とても可愛らしい歌声ですし、ご自身が書かれる歌詞もすごく共感できるところが多いんです。作詞や作曲といったクリエイティブな面も含めて、理想とするアニソンシンガーのスタイルで、私の目標です。
1stシングル「Magic∞world」は「意外とちゃんと書けてる」
――そんな黒崎さんも今回のベストアルバムでは、ほぼ全曲で作詞されています。詞を書き始めたきっかけをお聞かせいただけますか?
最初に書き始めたのは、高校の頃だったかなと思います。ワンフレーズひらめいたら、そこからノート1ページ分書いていくような感じでした。今も詞を書いていく上では、験担ぎのようなものもなくて、「作詞するぞ」と準備してから始めると全然出てこないですね。ベッドに寝っ転がって、ぼーっとしながら曲を聴いて、そこから受けとったものを、自分の記憶や経験などとリンクさせていく作業から始めています。
――では、今回のベストアルバム収録曲の中で、特に「これは書けたな」と手応えを感じたのはどの曲でしょう?
作詞を最初に務めることになった「Magic∞world」でしょうか。当時、私はプロデビューしたてで、(タイアップになった)『とある魔術の禁書目録』は人気も歴史もある作品ですから、「これでいいだろうか? 大丈夫だろうか?」と思いつつ書き上げた詞なのですが、7年経った今読み返してみると、「意外とちゃんと書けてるな」と思えます(笑)。また『がっこうぐらし!』のEDとして、劇中のある大事なシーンで流れる「アフターグロウ」は、とても切ない楽曲で、「好き」と言ってくださる方が多いんです。印象的なシーンで使われるからこそ作品に寄り添っていたいなと思って書いた経緯があるので、観て下さった方に気に入ってもらえたというのはとても嬉しかったですね。