ダッソー・システムズは10月11日、同社の解析ソフトウェア「SIMULIA」の年次ユーザーイベント「2017 SIMULIA Community Conference Japan」を開催。その中で、同製品の近況報告として、直近の製品ポートフォリオの紹介が行われた。

シミュレーションは「包括的」になっていく

登壇したのは、ダッソー・システムズ SIMULIA ワールドワイドセールス担当 副社長 Dimple Shah氏。まず大きな時流の変化として、シミュレーションという工程の持つ役割が変化していると指摘した。

ダッソー・システムズ SIMULIA ワールドワイドセールス担当 副社長 Dimple Shah氏

これまでは組織が設計、解析など役割ごとに縦割りされており、各部門のつながりは薄く、SIMULIAなど解析ソフトウェアは専任部門が利用するもので、シミュレーションは最終検証に用いられていた。だが昨今、シミュレーションはイノベーションに欠かせない役割としてみなされてきており、専任部門だけでなく多くのセクションにおいて活用されうるものに立ち位置が変化してきていると語る。

こうした時流の先進例として、P&GがSIMULIAを包括的なワークフローに導入したことを挙げた。ダッソーの各製品をつなぐ共通プラットフォームである「3DEXPERIENCE プラットフォーム」によって関係者の連携を強化し、イノベーションの効率化が実現できたという。具体的には、各セクションが即座に最新情報にアクセスできるため、急な設計変更が起こってもシミュレーション担当部門の手配した解析工程が空振りにならず、効率的に連携プレーが行えるなどの利点があるとした。

「Abaqus/CAE」をブラウザ上で利用可能

Shah氏は、SIMULIAが持つ新たな付加価値として、クラウド上でのシミュレーションが可能であることを紹介した。Webブラウザ上で「Abaqus/CAE」を起動できるため、解析担当者が新たにツールの使用方法を習得する手間なく、慣れ親しんだ解析ツールの操作感を引き継いだまま、「3DEXPERIENCE プラットフォーム」上での協業を可能にしていると語った。

必要なタイミングでHPCの演算能力を利用可能にする体制を整えた

また、シミュレーションが設計プロセスに統合されるにつれて、高負荷な解析が必要となるタイミングが予測困難になってきていること、ライセンスのフレキシビリティのみならずHPCへのアクセス需要も上がっていることを受けて、ピーク時にクラウドあるいはローカルで計算を走らせるという対応が可能になったことも明かした。

米エクサを買収、流体解析領域を強化

同社は企業買収により技術的に対応可能な領域を広げ、製品ポートフォリオを拡大している。直近のトピックとしては、製品開発向けシミュレーションソフトウェアの有力ベンダーである米エクサ・コーポレーションとの合併契約に調印したというものがある。これはイベントと同日に国内にて発表されたものだ。

同社は、流体解析の手法のひとつである「格子ボルツマン法」を用いた製品を手がけており、今回の合併によって、流体解析技術をさらに強化することが可能になる。2016年末に買収したXFlowも、企業規模としては米エクサよりも小さいものの、格子ボルツマン法を採用したシミュレーション技術を保有している。

次期SIMULIAのアップデート概要

そして、SIMULIAの次期バージョンのリリースについては、2018年第一四半期を予定しているという。次期バージョンでの注力領域は、大きく分けて「専任解析者」「アディティブ・マニュファクチャリング」「シミュレーションの大衆化」という3点にあるとした。

アディティブ・マニュファクチャリングは次期SIMULIAの主要な注力領域のひとつとなる

「専任解析者」のためのアップデートとしては、新たなソルバーの追加、材料モデリングや接触モデリングの新機能、クラウド上のコンピューティング領域の活用、SIMULIAの「3DEXPERIENCE」上での利用の加速、CATIA、SOLIDWORKS、また他社製品を含めた設計ツールと密に連携したシミュレーションの実現が行われると語った。

また、アディティブ・マニュファクチャリング領域では、包括的シミュレーションを行うための用意があるとして、次期リリースでも機能追加を行う予定であるとコメントした。そして、「シミュレーションの大衆化」については、CATIA、SOLIDWORKSといったCADツールの利用者にシミュレーション機能の活用が行えるような施策がなされるとした。

次期バージョンに米EXAの買収による新機能は追加されるかという質問に対して、正式合併前のため詳細なコメントは難しいとした上で、流体解析は同社にとって大きな投資領域であり、単に(SIMULIAを)技術の集合体とするのではなく、ソリューションと連携させ、技術を進化させていくと強調した。