【レポート】

なぜヤマハは、二輪車開発ソリューションとしてシーメンスPLMを選んだのか - CEOが語った採用に至る背景

杉田泰輔

9月6日(米国時間)、シーメンスPLMソフトウェアは、米国ボストンで行われた「Siemens Industry Analyst Conference」で、ヤマハ発動機が二輪車の開発用に3D CADソフト「NX」とPLMソフト「Teamcenter」を導入したことを発表した。

これは他社製の3D CAD、PLMソフトを置き換える形での導入で、グローバルな二輪車開発環境全般に適用していく予定。今回の導入により、さらなる品質向上、開発時間の短縮、工数削減の実現とともに、設計者がイノベーション創出に、より多くの時間を使うことが可能になる。

ヤマハは、長年にわたって、高い経営効率と商品競争力の向上を目指して、製品開発における次世代のデジタル化を検討してきており、「このビジョンを達成できる包括的なソリューションとしてシーメンスのソフトウェアが評価された」とSiemens PLM Software社長兼CEOのトニー・ヘミルガン氏は述べている。

Siemens PLM Software社長兼CEOトニー・ヘミルガン氏

今回は大規模なシステムの入れ替えとなったが、比較的短期間で導入が完了した。これはシーメンスPLMが提供するPLM導入におけるベストプラクティスを利用することで実現できたとしている。

今後は、これらソフトウェアを基盤として、設計から生産までの全プロセスを通して、デジタルデータを活用した環境も構築できるとしている。

また自動車部品メーカーのデンソーでは、エアコンのノイズのテストプロセスにおいて、デジタルでの設計と解析、これらの連携を拡大することで、製品の市場投入までの期間が従来と比べて約3倍のスピードアップにつながった。

エアコンのテストプロセスを約3倍にスピードアップしたデンソーの取り組みの概要

2007年にUGSを買収しシーメンスPLMとなって以降、これまでに100億ドル以上を投資し、製品ポートフォリオを強化してきた。最近ではCFDソフトのCD-Adapco、電気系PLMソフトのMentor Graphics、また自動運転システムと総合安全システムのソリューションを提供するオランダのTASSを買収している。

2007年以降、これまでに総額100億ドル以上を投資

CD-Adapcoとの統合は順調に進んでおり、開発部門はすでに完全統合が完了しており、営業部門も10月に統合する予定。Mentorとの統合に関しては「まだまだやることがある」としているが、直近のシナジーとしてTeamcenterとの統合を挙げている。

CFD分野において、CD-Adpacoはハイエンドユーザー向けで、MentorのFlow Thermは日常的にCFDを使いたい設計者向けと棲み分けている。

ヘミルガン氏は日本企業を訪問した際、シーメンスPLMが推進するデジタル化のためのソリューションが、自動車関連およびコンシューマ向けハイテク製品のメーカーの間で評判が良かったとしている。

これに関してヘミルガン氏は「全プロセスをデジタル化できることが評価されている。電気系を含めて統合ができるものは他にはないだろう」と語った。

すでにMentor Graphics製品のユーザーでは、Mentorとの統合に興味を示しており、期待が高いとの事。また、自動車関連メーカーでは、TASSのソリューションにも関心が高いとしている。

シーメンスPLMのデジタル化ソリューションは、製品の設計・開発、製造だけでなく、製品の利用もカバーしている。利用段階においてIoTを通して各種データを収集、フィードバックし、シミュレーションによって問題解決を図り、次の製品開発に活かす。このような継続的な最適化を実現する要として「Mind Sphere」を提供している。Mind Sphereは、IoTのオープンなOSとして位置づけており、今秋にはアマゾンのプラットフォームに対応したバージョンをリリースする計画。

IoT分野では、PTCのThingsWorxもある。ヘミルガン氏は「ThingsWorxは競合と認識している。しかしMind Sphereと比較した場合、製造の部分をカバーしているか否かの違いがある。製造の部分をカバーしていなければフィードバックができない。すでにシーメンスは、製造分野でも多くのインストールベースを持っていることが強みだ」と述べている。

また、今後はMind Sphereのアプリの開発を強化する計画で、まずはIoTにあるデータをフィードバックする部分から対応する予定。

シーメンスPLMではデジタル化ソリューションにおいて、「デジタル・ツイン」というコンセプトを提唱している。これは物理的な製品を単にデジタルデータとしてコピーしたものではなく、すべてのプロセスを包括したものであり、ここに真の価値があるとしている。

デジタル・ツインにより、試作を必要とせずシミュレーションを繰り返すことで設計を改善することが可能になる。

同社では、製品のアイデア段階から市場投入され、利用されるプロセスで、「設計」、「製造計画」、「製造技術」、「製造」、「サービス」の5つのステップを定義しており、すべてのステップを1つの製品ポートフォリオでカバーできるのはシーメンスだけだとしている。

製品のアイデア段階から利用における5つのステップ

なお、今回のイベントでヘミルガン氏は収集されたデータをもとに解決を図ることで、インパクト(顧客のメリット)が生み出されるとして、「Insight + Action = Impact」というメッセージを発しており、「データをモニターするだけでなく、問題を解決できる会社を目指している」と述べている。

データをもとに解決を図ることで、インパクトが生み出される

関連キーワード


人気記事

一覧

イチオシ記事

新着記事