【レポート】

H-IIAロケット35号機現地取材 - 準天頂衛星「みちびき3号機」の状態は正常、4機体制の構築に前進

三菱重工業(MHI)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月19日、準天頂衛星「みちびき3号機」を搭載したH-IIAロケット35号機の打ち上げを実施。ロケットは正常に飛行を続け、打ち上げの約28分37秒後、衛星を分離した。衛星は太陽電池パドルの展開まで確認できており、状態は健全だという。

左から、MHI防衛・宇宙セグメント長の阿部直彦氏、内閣府特命担当大臣(宇宙政策担当)の松山政司氏、文部科学大臣の林芳正氏、JAXA理事長の奥村直樹氏

H-IIAロケットの打ち上げ成功はこれで29機連続。これまでの全35機中、成功は34機で(失敗は2003年11月の6号機のみ)、成功率は97.14%となった。増強型であるH-IIBロケットも合わせると、連続成功は35機、成功率は97.56%。

記者会見において、MHIの阿部直彦防衛・宇宙セグメント長は、「機体確認のため1週間延期しての打ち上げとなったが、無事衛星を所定の軌道に投入できて安堵している」とコメント。「この後も短いインターバルで打ち上げが続く。引き続き安定的な打ち上げを提供できるよう、細心の注意と最大限の努力を傾注していきたい」と述べた。

一方、安全監理を担当しているJAXAの奥村直樹理事長は、「秋に予定されている準天頂衛星4号機の打ち上げに向け、確実な業務を推進していく」とコメント。「世界的な衛星測位技術の進展に対応すべく、測位衛星の基盤技術を整備する。内閣府から受託している研究開発を通し、測位分野の発展に貢献していきたい」と述べた。

準天頂衛星みちびきは、初号機が2010年9月、2号機が2017年6月に打ち上げられており、今回が3機目。次の4号機が打ち上がることで、当面の目標である4機体制が完成し、常時日本の天頂付近にみちびきが1機いる体制が整うことになる。

みちびきのウリは、誤差がcmオーダーとなる高精度な測位が可能になることだ。ただし、このCLAS(センチメータ級測位補強サービス)はみちびきの独自機能であるため、受信機側での対応が必要になるし、衛星の軌道上、サービスが利用可能なエリアも東アジアやオセアニアに限定されてしまう。

グローバルな商品展開を目指すメーカーにとって、これは決して小さな問題ではない。北米や欧州といった大きな市場で使えないのであれば、対応させても単なるコスト増になってしまうし、みちびきを使わなくても問題無いのであれば、そもそもみちびきに対応させる必要が無い。

この点については、内閣府の高田修三・宇宙開発戦略推進事務局長が「準天頂衛星システムの測位信号を日本だけで閉じたものにしないように、EUと協力していく」と回答。EUは独自の衛星測位システム「Galileo」を持つが、「EUとすでに協定を結び、同じような形で信号を使えるよう検討することで合意した」と述べた。

日本は今後、準天頂衛星をさらに3機増やし、2023年度からは7機体制での運用を開始する計画。これにより、GPSやGalileoなど、他国の衛星測位システムに頼らず、日本の衛星だけで測位が可能になるが、7機体制の整備には数千億円もの巨額のコストがかかる上、寿命が尽きた衛星の交換など、システムの維持費も必要となる。

投資に見合ったリターンが得られるのか。今年度中に4機体制を構築する以上、それが今後の大きな課題であるし、長期的な目で厳しくチェックしていく必要があるだろう。ただ、筆者は高精度測位自体のポテンシャルは非常に高いと思っている。社会が変わるようなイノベーションを期待したいところだ。

また今回のH-IIAロケット35号機では、久しぶりに機体側の問題で打ち上げが延期になったことが注目された。裏返せば、それだけ最近の同機が安定していたということだが、秋に36号機を打ち上げるとなると、機体はすでにかなり完成していたはずだ。気になるのは、次号機で同じ問題が起きることが無いか、という点だろう。

この点について、MHIの二村幸基防衛・宇宙セグメント技師長は、「次号機については、可能性のあるところを全面的に洗い直す」と言及。今回、作業工程に一部変更があったことがすでに分かっているが、「問題が起きた原因については、時間をかけてさらに分析したい。必要があれば、今後、微細な設計の変更もあるかもしれない」とした。

ほんの0.5mmの小さなゴミ1つだけでロケットの打ち上げは止まる。それだけロケットは巨大で精密なシステムなのだが、「シールへの異物混入は昔から何度も経験していることで、徹底して手を打ってきたつもりだった。引き続き、モノ作りに対してなすべきことがあるということ」と述べ、気を引き締めた。

MHI防衛・宇宙セグメント技師長の二村幸基氏(打上執行責任者)

みちびき3号機は打ち上げから10日ほどかけ、静止軌道へと移動。その後、搭載機器の初期チェック、測位機能の性能確認などを行い、打ち上げ後3か月半ころより試験サービスの提供を開始する予定だ。

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