自社で運用せず、24時間365日のサービス提供が可能に

2017年2月にはアズワンとオラクルの間で契約を締結。開発プロジェクトにおけるシステム構築は、関電システムソリューションズが担当した。そして契約からわずか1カ月の間に、「Oracle Database Exadata Express Cloud Service」とデータベース基盤を連携させて外部に公開するシステムの開発が、チャットボットのインタフェースを含めて完了した。

「手組みによるツールの開発などはほとんど必要なく、EAIツールとオラクル側が提供している既存のツールだけでほぼシステム全体を構築できたことが、高速開発を可能にしたと考えています。困ったことと言えば、他に同様の事例がなかったことぐらいですね。そこは、関電システムソリューションズと手探りで模索しながら進めました」と、箱田氏は語る。

4月にシステムをリリースし、検証を兼ねてまずは社内で利活用を進めている。チャットボットの採用により、LINEのようなUIでスマートフォンからチャットで問い合わせることができるようにした。これにより、営業担当者などが出先から気軽に在庫を確認できるようになったと好評だという。

チャットボットの利用画面(L is Bのビジネスチャットサービス「direct」のチャットボット開発環境「daab」を使用)

「社内システムとしては、既存のオンラインシステムでも在庫データの検索が可能ですが、普段の生活で使っているアプリと同様のUIで、いつでもどこからでも気軽に問い合わせることができるというのはメリットが大きいようです。マニュアルも研修も不要でした。また、APIだけ用意しておけば、アプリケーション・サーバを構築して自分たちで運用する必要もなく、24時間365日のサービス提供が可能になるというのも大きなメリットだと実感しています」(箱田氏)

社内での高い評価を受けて、この夏にも販売店向けにチャットボットのサービス提供を開始する予定だ。

箱田氏は言う。「在庫がなかったり、納期が遅かったりすれば、販売機会を逃すことになるというのは、販売店側も同じです。そうしたリスクを少しでも低減できるようなサービスにつなげていければと考えています」

アズワンはまた、基幹システムの持つ150万点超の商材データの見える化による仮説検証を行う目的で、オラクルのクラウド型データ分析・可視化サービス「Oracle Data Visualization Service」も採用している。

「商材のデータ数がかなり増えたので、売上の傾向や特異点などをあぶり出せるようにできればと、まずは試験的に導入しました」(箱田氏)

今後アズワンでは、在庫の確認だけでなく、商品情報全般への問い合わせ対応や納期の回答などにも、チャットボットによるサービスを拡大していくことを視野に入れている。さらに、受発注に関わる部分は順次クラウドに移行して情報を積極的に公開していく構えだ。

最後、今後について箱田氏は「顧客向けのチャットボットは、会話のシナリオなどもう少し工夫が必要かもしれません。将来的にはAIを組み合わせて、よりユーザーエクスペリエンスを高めていきたいですね」と語った。