富士通は6月6日に記者説明会を開催し、同社代表取締役社長の田中達也氏から2017年度の経営方針についての発表があった。

富士通 代表取締役社長の田中達也氏

連結営業利益目標に向けて着実に歩を進めている

まずは、これまでの成果と今後の取り組み、見通しについて田中氏が説明。同社は2016年度、連結営業利益1288億円、利益率2.9%を達成し、計画を上回る結果となった。2017年度については連結営業利益1850億円、利益率4.5%を計画している。

これについて田中氏は「2015年度から実施している変革の効果も着実に出ている。利益率については、昨年秋に2017年度の利益率は5%増と伝えたが、予定している4.5%はあくまでもミニマムライン。ビジネスモデル変革の効果を享受することで、さらなる利益率アップを目指す」と、前向きな姿勢を示した。また、2015年度の経営方針で目標として掲げたフリーキャッシュフロー、自己資本比率についても達成に向け着実に改善できているとのことだ。

海外売上比率については、進めてきたビジネスモデル変革にかかわる一時的な費用や為替変動で前年比マイナスになったが、欧米で進めているトランスフォーメーションを含めて、成長基盤の強化を進めているという。

そして田中氏は「2015年に設定した連結業績目標についての変更はない」と伝え、連結営業利益の目標10%に向けて引き続き、事業を強化していくと述べた。

同社の2015~16年度の実績と2017年度の計画

2017年の経営方針と強化ポイント

続いて田中氏は、「コア事業」「グローバルフロント」「独立事業」という3つの基本方針に沿って「"つながるサービス"の実現に向けたエコシステムの構築を目指すコア事業では、幅広い業種や業務の知見を核とするナレッジインテグレーションの専門力とキーテクノロジーの強化を進めていく。そして、グローバルに均一なサービスと品質の提供を目指すとともに、あらたなビジネスモデルを創出する力を強化し、グローバルで活躍できる人材の育成に注力。また、ユビキタスやデバイス事業を強い独立事業体として市場競争力を向上させ、そのうえでコア事業とのさらなるシナジーを追及していく」と、業績目標の達成に向けた強化ポイントを述べた。

経営方針における今後の強化ポイント

強化ポイントの中でもコア事業として掲げている"つながるサービス"の展開に向け、同社では顧客とグローバルICTプレイヤー、研究機関、大学等とともに、エコシステム作りに取り組んでいる。

特に顧客との関係の中で、「ICTサービスを提供するという従来の関係に加えて、お客さまとともに新しいビジネスモデルをCo-creationすることを実践している。今後も、お客様の事業の企画段階から参画し、お客様の本業そのものをともに担い、新たな価値を提供していきたい」と、田中氏は展望を述べた。

成長を支える3つのキーテクノロジー

同社では、デジタル化を推進していく中で差別化となるための重要なテクノロジーを「キーテクノロジー」と呼んでおり、本説明会では田中氏は3つのキーテクノロジーを紹介した。

キーテクノロジーとして、1つめに挙げたのがクラウドだ。顧客はデジタル革新においてスピードや膨大なデータの利活用促進、柔軟で堅牢な運用環境に期待しているとして、同社の「MetaArc」がその期待に応えることができると伝えた。「顧客のビジネス規模や内容に応じ、さまざまな環境を自由に選択できるマルチクラウドインテグレーションである」と、MetaArcを紹介。「これからもオープンソースコミュニティやグローバルなクラウドパートナーとコラボレーションしながら、MetaArcを強化しお客様への提供価値を高めていく」と展望を述べた。

クラウドサービスの展開イメージ

続いて2つめのキーテクノロジーとして、AIの「Zinrai」を紹介。同社が30年以上培ってきたAI基盤技術と業種ナレッジを相互的にインテグレーションすることで、期待に応えていくとした。「近年、業務の自動化やAIを活用した新しいビジネスの創出に対してお客さまの期待が高まっており、商談の事例も増えている」と、田中氏はAIの動向を語った。また、「豊富なデータを基に実現するAIにおいて、大規模災害のような限られた量のデータしか存在しないものに対しても、想定外を想定するAIをテーマに本年4月に理化学研究所と共同でセンターを設立し、先端技術の研究に取り組んでいる」と取り組みを紹介した。

AIの展開イメージ

3つめのキーテクノロジーに挙げたのがセキュリティだ。サイバーセキュリティリスクを回避することと、被害の極小化、そして体制力を強化していくことが顧客の期待だとして、同社では自社のグローバル16万人のセキュリティを24時間365日守り続けている経験から得たナレッジや、ネットワーク技術にAIを応用した自動対処技術などを駆使することで、顧客のリスクをトータルにマネジメントするという。さらに「自社でカバーできないところにも踏み込んでいく必要があり、富士通にない技術を持ったセキュリティベンダーや専門性を持ったコンサル企業、保険会社との連携も強化していく」と、田中氏は方向性を述べた。

セキュリティの展開イメージ

田中氏は「それらのキーテクノロジーやナレッジインテグレーションといった事業軸と地域軸のマトリックスでグローバル成長を目指す」と、連結営業利益目標の達成に向けた取り組みを紹介した。

レノボとの統合、そう遅くない時期に?

また、同社パソコン事業におけるレノボとの統合の時期について、記者から質問が相次いだ。

これについて田中氏は「現在は両社のシナジーをどう出していくかという点について、徹底的に突き詰めている段階。大きな問題が起きているわけではないので、早晩にまとまると考えている」と進捗を述べた。