赤ちゃんの皮膚は大人よりも薄く、湿疹などの肌トラブルに見舞われがちです。湿疹だらけの赤ちゃんのお肌を見ると、なんとか治してあげたいという気持ちになりますよね。
すぐに治る場合は「乳児湿疹」と呼ばれますが、良くなったり悪くなったりを繰り返す場合、「アトピー性皮膚炎」(以下「アトピー」)を起こしている可能性があります。今回は子どものアトピーについて、小児科医の竹中美恵子先生に聞きました。
Q.乳児湿疹とアトピーとの違いは何ですか?
乳児湿疹は顔や頭皮、首のしわなどに出ることが多く、治療して改善した後は症状が治まる傾向にあります。一方アトピーは、腕や足の関節、それに首や顔などに多く見られ、一度治療して改善しても、すぐに再発しがちです。
アトピーは肌に出るアレルギーの一種なので、何か原因になっているアレルゲンがあると考えられます。乳児湿疹とアトピーの違いを見分けるのは非常に難しく、長期にわたって症状を診なければ判別できないことも多くあります。
Q.赤ちゃんは生後何カ月からアトピーと診断できますか? また、どのような治療を行う必要がありますか?
症状を観察し、さらに血液検査をして、症状が重い場合は、生後3カ月でもアトピーと診断するケースがあります。どんな治療をした時に症状が良くなったかなど、長期にわたってさまざまなアプローチを試していくのですが、基本的には塗り薬や飲み薬の治療、そしてアレルギーの原因となるものをできる範囲で除去していくことになります。
Q.「アトピーかな?」と思った時、お医者さん選びのコツを教えてください。
小児科医であれば、やはりアレルギー専門の医師に診てもらうといいでしょう。アトピーの子どもを診察し慣れているため、アトピーかどうかの見極めは上手だと思います。また、皮膚科の小児専門の医師がいれば、診てもらってもいいかもしれません。
アトピーはすぐに治る病気ではないので、長く治療をする必要があります。途中で病院を変えてしまうと、症状が良くなったり悪くなったりしたタイミングが分からなくなってしまうので、最も大切なのは、相性の良い、信頼できる医師に継続して診てもらうことです。
Q.家庭でできることはありますか?
アトピーは、肌が乾燥することによって毛羽立ち、そこからアレルゲンが入り込んで症状が発症します。そのため、「肌を清潔に保つ」「保湿をする」の2つを意識しましょう。お風呂の後の清潔な肌に、薬などを塗り、しっかりと保湿しておけば、肌がスムーズな状態を保てます。
アトピーの症状が出ていても、お風呂に浸かったり、石けんで体を洗ったりして構いません。しかしお湯の温度は、熱すぎずぬるめにして、洗う際もこすらない方がいいでしょう。
Q.アトピーもしくはその疑いで悩んでいるパパ・ママに、アドバイスをお願いします。
「神経質になりすぎないで」と伝えたいです。全ての肌トラブルは、アトピーか、アトピーではないか、はっきり区別できるものではありません。肌の状態は、全ての人が良くなったり、悪くなったりを繰り返します。特にアトピーの可能性がある場合、その治療は長期戦になります。
一喜一憂したり、「これはしてはダメ!」と子どもの行動を制限したりするのは、できるだけ避けましょう。アトピーは、ストレスにより悪化することも分かっていて、子どもがストレスを感じないような生活を送らせてあげるのも大切です。そのためにはパパ・ママ自身も、可能な限りストレスをためずに生活できたらいいですよね。肌のコントロールを上手にすれば、必ず症状が改善する日は来るので、おおらかな気持ちでいてほしいなと思います。
※未就学児童の症状を対象にしています
竹中美恵子先生
小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。
アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。
日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得
メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加する「En女医会」に所属。ボランティア活動を通じて、女性として医師としての社会貢献を行っている。