AIやIoTに並んで、IT業界のトレンドの1つである「Fintech」は、テクノロジーにより先進的な金融サービスを構築しようとする取り組みだ。そのFintechに関連するテクノロジーの1つに仮想通貨「ビットコイン」がある。
ただし、マウントゴックス事件の影響からビットコインにネガティブな印象を持っている人が多いのではないだろうか? もし、ビットコインが安全でないとしたら、Fintechにも何らかの影響があるのではないか――そんな疑問を感じている人もいるかもしれない。
そこで本稿では、ブロックチェーン推進協会の代表理事を務める平野洋一郎氏に、安全性をはじめとするビットコインにまつわる疑問をぶつけてみた。
ビットコインは安全か?
ビットコインと聞いて、真っ先に気になるのは「安全性」ではないだろうか? 2014年に起きた、ビットコインの取引所であるマウントゴックスの破綻が記憶に新しい。この時、115億円相当のビットコインが消失したと言われている。「ビットコインは安全か?」と聞いたところ、平野氏は「ビットコインは安全です」と間髪入れずに回答した。その理由はビットコインの仕組みにあるという。
ビットコインを理解する上で押さえておかなければならないテクノロジーが「ブロックチェーン」だ。これらはどのような関係にあるのか。
ビットコインとブロックチェーンはサトシ・ナカモト氏のアイデアをもとに生み出されたテクノロジーだ。ブロックチェーンは分散型台帳技術とも呼ばれ、ビットコインの取引記録を記録している部分のことを指している。ブロックチェーンは分散ネットワークであり、ネットワークに参加している世界中のコンピュータ(ノード)で同じデータを保管しているので、現実的に破壊することが不可能だという。
「2009年の稼働開始以来、ブロックチェーンは1回も改竄されていませんし、ダウンもしていません」と、平野氏はブロックチェーンのシステムの堅牢性を強調する。
また、ブロックチェーンには管理者がいないが、取引台帳に対し「作業証明(Proof of Work)による台帳の正当性の証明」を行うことで、不正な取引を排除し、安全性が担保されるという。
また、ビットコインの仕組みがオープンである点も安全性を保証する要素の1つと言える。例えば、発行量が明らかになっているほか、台帳のデータもオープンなので、誰もが取引状況を確認することができる。
「ビットコインではマネーロンダリングが簡単という意見がありますが、ビットコインでは取引状況がオープンなので、実は、リアルマネーによるマネーロンダリングのほうが逆に簡単なのです」と、平野氏。ビットコインは従来の金融システムに比べて、透明性が高いというわけだ。
マウントゴックスの破綻はビットコインの破綻ではない
ここで気になるのが、マウントゴックスの破綻だ。平野氏によると、マウントゴックスの破綻はビットコインの仕組みが破綻したのではなく、従来の金融システムで言うところの「銀行」が破綻したにすぎないという。これまで、世界中でさまざまな銀行が破綻してきたが、それと同じレベルの話というわけだ。
「ビットコインの仕組みがよくわからないがうえに、マウントゴックスの破綻が、そのままビットコインの仕組み自体が破綻したと受け取られてしまいました」と、平野氏は当時、事実がきちんと伝わらなかったことを嘆く。
先に、マウントゴックスの破綻により、115億円相当のビットコインが消失したと述べたが、この点も気になるところだ。
ビットコインには「ウォレット」という機能があり、この機能を使えばビットコインを自身で管理することができる。「取引所にビットコインを預けずに、自分のウォレットで管理していれば、マウントゴックスが破綻してもビットコインが失われることはありませんでした」と、平野氏は説明する。
ただし、高速で取引をしたい人は取引所にビットコインを預けておくそうだ。平野氏によると、ビットコインは秒単位で取引が行われるため、自身のウォレットから出してから取引を行っているようだと、あっという間に為替が変わってしまうという。
つまり、取引所に預けなければ、取引所の影響を受けてビットコインが消失することはないというわけだ。仮想通貨という性質上、ビットコインはシステムの不具合で消えてしまう可能性があるように思えてしまうが、ルールに従って保管していれば、守ることはできると言える。