ベネッセは3月30日、「THE 世界大学ランキング」を手がける教育専門誌「Times Higher Education(THE)」を有するTES Globalが、ベネッセグループの協力のもと、同ランキングの日本国内版「THE 世界大学ランキング日本版2017」を作成し、このほど公開したことを発表した。
同ランキングの発表に際し、ペネッセコーポレーション取締役で学校カンパニーカンパニー長を務める山崎昌樹氏は、「日本では高等教育改革が進められているが、大学を1つの視点から見るのではなく、多面的な評価へと変えていきたい」とし、現状、一般的に取りざたされる合格者の学力によるランキングとは一線を画し、大学に入ってからの教育に対する充実度や、卒業した後を含めた評価など、さまざまな視点による評価を実施することで、高等教育をさらに良いものへと進化させ、世界から注目される大学になってもらうことを目指して同ランキングが作成されたと説明。また、「ランキングに一喜一憂するのではなく、個々の大学の強みを伸ばし、かつ弱点を補強するための参考材料として使ってもらいたい」とも述べており、必ずしも、その順位だけで判断をするものではないと注意を促していた。
では、なぜTHEが日本版を作成するに至ったのか。これについて、TES GlobalでTimes Higher Educationの編集長を務めるPhil Baty氏は、「世界大学ランキングは、グローバルの1000大学のランキングで、そこに日本は69校入っている。これはアジアではトップであるが、日本独特の多様性を深堀し、世界に届けるためには、日本に特化したランキングを作ることが必要であった」と説明。すでに2016年に米国版を発表したこともあり、そうしたノウハウをベースに、ベネッセと協力して開発を進めたとする(米国版はWall Street Journalと協力して作成)。
そのため、世界版と日本版では、メソドロジー(ピラーとTHEが呼ぶ評価分野)の内訳や区分が異なっている。世界では、主に研究力や論文数などをベースとした、「教育力(Teaching)」「研究力(Research)」「研究の影響力(Cltations)」「国際性(International Outlook)」「産業界からの収入(Industrial Income)」の5つのピラーで構成されているが(アジア版も同様だが、比率が異なる)、日本版では、「教育リソース」「教育満足度」「教育成果」「国際性」の4つのピラー(それぞれの比率は、順に38%、26%、20%、16%)で構成されている。
また、これら4つのピラーは、さらに11項目(Metrics)に分けられ、細かな配点がなされている。教育リソースは、「学生1人あたりの資金」、「学生1人あたりの教員数」、「教員1人あたりの論文数・非引用回数」、「大学合格者の学力」、「教員1人あたりの競争的資金獲得」の5項目に分けられるほか、教育満足度は「高校教員の評判調査:グローバル人材育成の重視」と「高校教員の評判調査:入学後の能力伸長」に分けられ、教育成果は「企業人事の評判調査」ならびに「研究者の評判調査」に、国際性は「外国人学生比率」および「外国人教員比率」に分けられている。
この細かな分け方により、同ランキングは総合ランキングのほか、4つのピラーごとのランキングなども公開しており、なんらかのランキングに名前が入ってくる大学は298大学におよぶという(各ランキングは150位まで表記。アンケート調査に協力した大学数は435校)。
これらのデータの精査を行ったTES GlobalでData and Analytics Directorを務めるDuncan Ross氏は、「日本の大学のパフォーマンスが世界に対して高い分野が学生1人に対する教員の数の部分。これは日本が生かすべき特徴といえる」と説明するが、「世界と比較して、国際的な対応が遅れている。国際的な多様性は、大学の成功にとって重要だと思っている」とも指摘。もっと大学ごとに差異化を進める必要があるとした。
さらに、今回公開した大学ランキングについても、改良の余地があることも分かっているとのことで、2018年度版に向けて、対象とする大学数の拡充を目指すとしているほか、実際の学生へのアンケートによる満足度の調査や進路の決定率などの指標を追加を目指すとしている。また、米国版、日本版と作成してきている流れを世界に広げ、将来的には、国別での比較なども出来るようにすることで、グローバル化が進む高等教育における留学生の確保といった支援などにもつなげていきたいとしていた。
なお、次ページ以降に、総合ランキングならびに教育リソース、教育満足度、教育成果、国際性の各順位を記す。