アニメ業界におけるペーパーレス作画をテーマにした大規模フォーラム「アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム2017」(以下、ACTF2017)が2月11日に開催され、大勢のアニメ関係者で賑わった。フォーラムではアニメ制作会社によるセッションが多数開催されたほか、デジタル作画に関するツールやソフトの展示も行われた。

「ジョジョ」アニメシリーズ製作に携わっているデイヴィッドプロダクションが、デジタル絵コンテについての講演を行った。 (c)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険DU製作委員会

本稿では、イベントイントロダクションおよびデイヴィッドプロダクションによる事例を紹介する。

地方アニメスタジオ設立が相次ぐアニメ業界

ACTF2017の進行役を務めたワコム・轟木保弘氏

イントロダクションに登壇した進行役のワコム・轟木保弘氏は、ACTFの活動理念について、「アニメ制作に関わるデジタル技術の情報交換および情報提供をする組織」と説明。3回目となる今回のACTF2017では、全国5カ所でサテライトビューイングにより中継された。その目的について、「地方の制作スタジオ設立が相次いでいることもあり、人材リソースの活用が課題になっている。地元の教育機関との連携も重要であり、情報格差を生むことがないようサテライトビューイングを行うことにした」と述べた。

絵コンテのデジタル化は何をもたらすか

デイヴィッドプロダクション 津田尚克氏、笠間寿高氏

イントロダクションに引き続き、デイヴィッドプロダクションによるセッション「デジタルツールによる絵コンテ制作の効果と課題」が行われた。同社からは津田尚克氏(ディレクター)、笠間寿高氏(ラインプロデューサー)が登壇した。

デイヴィッドプロダクションは2007年に設立された制作会社で、これまでにアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズや『planetarian~ちいさなほしのゆめ~』、『妖狐X 僕SS』などを手がけてきた。登壇した二人も、『ジョジョの奇妙な冒険』に携わっているクリエイターである。

今回、二人が語ったのは、主に絵コンテと呼ばれる作業工程のデジタル化について。絵コンテとはアニメの設計図ともいえるもので、アニメの流れが連続するコマでラフに描かれている。これまでは紙が主流だった絵コンテをデジタル化することで、何が起きるのか。

実際に絵コンテをデジタルに切り替えた笠間氏は、「書き込む文字が活字になることで読める字になるのが大きかったですね(笑)」と冗談めかして語った。しかし、これはあながちただの冗談というわけでもないらしい。

もちろん、デジタル化のメリットは文字が活字になることだけではない。「紙で書いた方が簡単じゃないのかと、手練のアニメーターほどそう言うのですが、絵が描ける人間だけではありません。デジタルだとリフレーム(フレームの調整)が楽にできたり、拡大縮小やコピペができたりと、描けない人間が作業する上でのツールになるのです」と語る。

中でも最大のメリットは、タイムライン制御ができることだという。タイムライン制御とは、時間軸にカットをのせて連続して動かすこと。紙に書くとパラパラめくる「ページ」になるが、デジタルの場合はタイムラインなので、全カットが横にずらりと並ぶことになる。これにより、集中力が途切れないという効果があるのだ。また、タイムラインは再生することもできるので、プレビューしながら絵コンテを描けるというのも大きなメリットである。