日本マイクロソフトは1月18日、代表取締役社長の平野拓也氏による新年懇親会を開催した。同氏は、2016年7月からの振り返り、今後の事業の方向性や注力分野について説明を行った。
2016年後半はデジタル・トランスフォーメーションのスピードがアップ
同社の会計年度は2016年7月~2017年6月となっていることから、平野氏は、「半期」について振り返りを行った。初めに、「顧客のデジタル・トランスフォーメーションの推進を重要戦略と据えてきたが、顧客が大きな関心を持って取り組んでおり、変革のスピードが上がっていることを実感している」と語った。
そして、「デジタル・トランスフォーメーションの推進にはAIが必要」であることから、本社がAI関連の製品やサービスの研究開発を進めるため、5000人規模の研究者や技術者から成る新部門「マイクロソフトAI研究グループ」を立ち上げたことを紹介した。これに伴い、営業やサポート部門の改変も行われたという。
日本については、「働き方改革のスピードがアップしている」とした。「当社は5、6年にわたり働き方改革に取り組んできたが、安倍首相のメッセージにより、企業がその重要性に気づきだしたようだ。働き方改革はもはや人事課題ではなく、経営課題になってきている」と平野氏。
同社も働き方革命には積極的に取り組んでおり、昨年5月には、従業員が成果を出せる場所で働くことができるよう、制度を変更している。
下半期は「AI」「働き方改革」「MR」に注力
平野氏は、下半期の重点分野として「AI」「働き方改革」「MR(Mixed Reality)」を挙げ、それぞれについて説明した。
AIについては、「長年にわたり取り組んできた当社にとって新しい技術ではない。昨年発表されたAI関連の特許数の調査において、われわれは首位を獲得した。特許の数は第2位のGoogleの2倍に及んでいる」と、同社のAIの技術力の高さをアピールした。
また、平野氏は「お金がないと、AIに取り組むことができないという声を顧客から聞く。当社はこれまで高品質のモノを安価に出すというビジネスを行ってきた。AIにもこのやり方を適用し、AIも誰もが使える技術にしていきたい。これこそが、AIにおけるわれわれの強み」と語った。
ただし、同社だけではAI導入を含めたデジタル・トランスフォーメーションの推進を実現できないとして、日本独自のアプローチとして新たなコミュニティ「Japan X-Biz Community」を設立するという。
コミュニティでは、業種ごとにデジタル・トランスフォーメーションを展開しやすい環境の構築を目指す。既にいくつかの企業と話が進んでいるとのことだ。
働き方改革については、これまではテレワークなど、コミュニケーションを中心に推進していたが、AIを活用した第2フェーズに進めるという。平野氏はAIの活用例として、次のように話した。
「AIを活用して、個人やチームの働き方を分析することで、生産性の向上につなげたい。従業員に気付きを与えてくれるAIを活用した働き方革命を推進することで、ワークライフバランスや残業の削減を実現できると思う」
MRについては、「デジタル・トランスフォーメーションに生かす」ことができるとし、平野氏は、MRを体現するデバイスである自己完結型ホログラフィックコンピュータ「HoloLens」の初動のオーダーが日本は米国を除く6カ国の合計の3倍に達していることを明らかにした。
ちなみに、HoloLensは法人用と開発者用が用意されているが、後者の注文が飛びぬけて多いそうだ。
HoloLensの導入に向けて注力する業種としては、東京オリンピックを控える建設業、日本のお家芸の製造業、ヘルスケア、教育が挙げられた。
AI、クラウド事業における競合への対策について、平野氏は「製品、価格は他社に負けていない。今後、マインドシェアをどう作っていくかが課題と感じている。事例を公開したり、クロスビジネスを推進したりすることで、波及効果を狙っていきたい」と語った。