ブラザー販売は1月19日、インクジェットプリンター「PRIVIO」の新製品として、全色顔料ベースインクを搭載するA3ビジネスインクジェット複合機 3モデルを発表した。これに合わせて、製品発表会を開催し、ブラザー販売 社長の三島勉氏が新製品の紹介と同社のビジネスインクジェットプリンターの戦略を説明した。

ブラザー特命営業部長"こじるり"の方針は「働く人を元気に」

印刷品質や耐久性が向上した最新インクジェット複合機

今回の新製品は、ブラザーとして初めて全色顔料インクを採用し、印字品質を向上したほか、プリンタエンジンの耐久度を従来比1.5倍の15万ページに、さらにファーストプリントの時間短縮や、ランニングコストの低減などを実現している。発売予定日は、全製品2017年2月上旬で価格はオープンプライスとなっている。

今回発表された新製品。最上位となるのがMFC-J6995CDW。想定価格は70,000円(税別)。下の用紙トレイが出っ張っているのはA3用紙を入れているから

MFC-J6980CDW。想定価格は55,000円(税別)。カラーは最上位製品がオフホワイトだけ、下位製品はブラックだけとなっている

エントリー製品のMFC-J6580CDW。MFC-J6980CDWとの主な違いはスキャナが片面のみで用紙トレイが1つ。想定価格は40,000円(税別)

上位製品はLC3129(CMY:1500枚、BK:3000枚)のインクを採用し、低コストを実現

下位製品はLC3117(CMYBK:550枚)とLC3119(CMY:1500枚、BK:3000枚)とインクカートリッジが異なる。印字コストも前世代から若干安い程度で、互換性はない

インクカートリッジ単体

印字品質の比較。空や海の青、ハイビスカスの赤だけでなく、自転車のイラストもよりクッキリした発色になっていることがわかる

ブラザーは、印字ボリュームの多いビジネスユーザーの開拓を進めている最中で、2016年は高耐久のモノクロプリンタや、大容量カートリッジを採用した複合機を展開したが、今回は主力となるA3の新製品を投入し、さらなるビジネスユーザーの獲得を目指す。

ブラザー販売 代表取締役社長の三島勉氏

「A3インクジェット複合機」という分野は、2008年にブラザーが他社に先駆けて開拓した市場で、「小型で低コスト」という魅力を武器にヒット。消費税増税の前、あるいはWindows XPのサポート終了前の駆け込み需要も背景に2013年まで販売台数が大きく伸びたが、その反動からか2014年以降は、おおむね11~12万台という市場規模で横ばい傾向となっている。

2008年にA3インクジェット複合機という分野をブラザーが開拓。2011年に競合も製品を投入するも市場全体では成長が続いていた。しかし、消費税増税前やXPサポート終了前の駆け込み需要が落ち着いたことで、市場は伸び悩んでいるという

とはいえ、右肩下がりである家庭用インクジェットプリンターと比べれば、手堅い成長分野だ。また、そろそろ買い換え需要も見込まれるため、2017年以降に伸びる可能性がある。

製品力と認知度の拡大でSMBをターゲットに

さらなる市場拡大を狙うためにブラザーは2つの戦略を取る。1つは製品そのものをブラッシュアップし、より高い品質の新プリンタを作ること、もう1つはインクジェット複合機という製品の認知度を上げることだという。

A3の「インクジェット以外の」複合機を使っているユーザーに「なぜインクジェットを選ばなかったのか?」というアンケートを行った結果、ランニングコストや、印刷スピード、耐久性や印刷画質という基本的な機能に不安を持っているということが分かった。

A3ビジネスインクジェットプリンターに対して、「選ばなかった理由」を分析。印字コスト、スピード、耐久性と画質が高い数字を占める

A3レーザー複合機の設置台数はおよそ370万。このうち「現在のレーザー複合機はオーバースペック」と判断している人を切り崩せば10万台のA3ビジネスインクジェット複合機の市場増が増えると判断している

前述の通り、新製品は印刷品質や耐久性が向上した一方で、ファーストプリントの時間を大幅したほか、大容量のインクカートリッジにより、モノクロで0.9円の低コストを実現している。アンケートに答えたユーザーに、こうしたスペックを伝えたところ、7割から購入を検討するという回答が得られたそうだ。

新製品のポイントとしてはキレイ、丈夫、速い、安いに主眼を置いている

そもそもA3複合機の市場は、複写機ベースの製品が多く、インクジェット複合機には成長の見込みがあるという。使用頻度や大型で現在使用している製品をオーバースペックと感じている顧客を取り込むことで、10万台程度の上乗せが可能と判断したという。

A3レーザー複合機の設置台数はおよそ370万。このうち「現在のレーザー複合機はオーバースペック」と判断している人を切り崩せば10万台のA3ビジネスインクジェット複合機の市場増が増えると判断している

想定するターゲット層として、ブラザーが従来から得意としているSOHOに加え、従業員50名程度のSMBも狙えるとした。

製品の理解が深まれば従来のSOHOユーザーのみならず、50名規模のSMB層にも満足してもらえるだろうと判断。そのために営業リソースも増やすという