立命館大学は12月13日、同大学東京キャンパスにてプレスセミナーを開催し、おむつ交換時期を検知できる電池不要のワイヤレス尿失禁センサシステムのデモンストレーションを公開した。

同技術は、立命館大学理工学部電子情報工学科 道関隆国教授らの研究グループが開発しているもので、11月に米国オーランドで開催された「IEEE SENSORS 2016」にてその成果が発表された。

立命館大学理工学部電子情報工学科 道関隆国教授

同じ尿の総量で比較した場合、1回の失禁量が少量でかつ尿回数が多いほど、おむつからの漏れ出し量が多くなることが同研究グループによる実験からわかっており、おむつ交換のタイミングを検出するためには、失禁回数と1回の失禁量を評価することが重要となる。

同研究グループが開発するシステムは、尿で微小電力を発電することができる「尿発電電池」を用いた尿失禁センサシステムにより、適切なおむつの交換時期を遠隔で検出するというものだ。

ワイヤレス尿失禁センサシステムの外観。おむつに組み込まれた尿失禁センサ(左)と受信機(右)からなる

同システムは尿失禁センサと受信機で構成され、尿失禁センサ部は、尿発電電池、コンデンサ、間欠電源回路、送信機からなる。同センサでは、尿失禁により、尿発電電池が発電を開始すると、その電力がコンデンサに蓄えられ、コンデンサの電圧が一定以上になると、間欠電源回路がコンデンサに充電された電力を送信機に供給する。送信機が受信機への送信動作を行うと、コンデンサに充電された電力が使われ、送信機は送信動作を停止する。こうして送信機は間欠的に送信動作を行うが、今回の研究では、この間欠動作を行う送信機の送信間隔で、失禁回数と1回の失禁量を評価することに成功した。

尿発電電池は、おむつの吸水材の下に平行に配置された活性炭電極とアルミニウム電極からなる。同電池では、尿の注入量に応じて発電電流が増加していき、尿の注入時には、発電電流が急激に上昇する。このため、間欠動作を行う尿失禁センサの送信間隔は、尿の注入量に応じて短くなり、また尿の注入時には急激に短くなる。尿失禁センサシステムでは、この仕組みを利用することで、失禁回数および失禁量を判別し、適切なおむつ交換時期を知ることが可能になる。

尿発電電池構成。活性炭電極とアルミニウム電極からなる

無線センシング信号の特徴。信号の間隔で尿の量と回数を評価することができる

今後の研究では、尿失禁センサを大人用おむつに組み込み、装着状態での動作確認を行っていく予定だという。また道関教授は、おむつメーカーなどと連携することで実証実験を行い、実用化に向けた研究を進めていきたいと話していた。

デモンストレーションの様子。すでに120mlの人工尿を吸収しているおむつに、さらに120mlの人工尿を注入すると、交換時期であることが赤色で知らされる。前回の吸収量と総吸収量、測定時刻もわかるようになっている