RSウイルスの予防薬はないの?

「RSウイルス感染症」の流行が始まっています。特効薬がないと言われる病気を防ぐには、どのような手段があるのでしょうか。また、インフルエンザの予防接種のように、効果の高い予防策はないのでしょうか。広島市立広島市民病院の小児科医、竹中美恵子先生に聞きました。


Q.「RSウイルス感染症」にインフルエンザワクチンなどの予防対策はないのでしょうか?

ワクチンはありません。しかし「シナジス」と呼ばれる抗体製剤があります。RSウイルスの流行期(10~4月)に合わせて、1カ月ごとに筋肉注射をすることで、重篤な症状の発症を防ぐものです。慢性的な肺疾患や心臓の疾患を持つ乳幼児、早産でうまれた乳幼児などに対して保険が適用されます。その場合は、お母さんが出産後25週未満のうちに医師から指導があるでしょう。

Q.条件に当てはまらない子どもは、筋肉注射を受けられないのですか?

保険は適用されませんが、受けることはできます。しかし、子どもの体重によって1回につき8~25万円程度の費用がかかります。そのため、RSウイルス感染症の予防対策としては、現実的な選択肢にはならないかもしれません。感染のリスクが高く、重篤になりやすいと判断できるケースでは、自然とシナジスが保険適応になっているので、保険に該当しない場合には、無理に接種する必要はありません。

RSウイルスは、2歳になるまでにほぼ全ての人が感染すると言われるほど、感染力の強いウイルス。症状は風邪のような軽いものから、肺炎を引き起こすような重いものまでさまざまです。大事なのは症状をいかに"軽く済ませるか"。そのため、特に症状が重くなりやすい生後3カ月未満の子どもの感染を予防するよう、気をつけることが大切だと思います。

何回か感染すると症状が軽くなる病気なので、大人や幼児の場合、たとえRSウイルスに感染していたとしても、軽い風邪だとあなどりがちです。しかし特にその家庭に1歳未満の子どもがいる場合、家族こそ「もしかしたらRSウイルスにかかっているかもしれない」という意識を持ってください。知らないうちに、赤ちゃんに移してしまう可能性があるからです。

予防対策が難しい赤ちゃんの感染を防ぐためには、家族の協力が欠かせないと言えそうですね。

※写真と本文は関係ありません

竹中美恵子先生

小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。
アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。以後、広島市立広島市民病院小児科などで勤務し、現在に至る。1児の母でもある。
日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得
メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加する「En女医会」に所属。ボランティア活動を通じて、女性として医師としての社会貢献を行っている