日本のものづくり=最新の設備+匠の技

ここまで高性能、高精度、高速といった技術のすごさを伝える言葉がいくつも並んだので、工場も自動化され、最新の設備が並んで、人が介在しないで、勝手にプリント基板ができてくるというイメージを持ちそうだが、実はそうではない。というのもOTCの本社工場である鶴岡工場、建てられた時期の違いから1号館から5号館まで存在し、それぞれ個別の製造プロセスを担当しているため、プリント基板を移動させるのにも人手によって行われている。「設備産業なのでIoTやAIとかロボットの活用ももちろん進めていくが、それであれば日本でものづくりをする意味はない。本当のものづくりは匠の世界。例えばエッチングのコントロールなどは、技術を知り尽くした熟練の技がなければ、真に高い品質を出すことは難しい。最新の設備に匠の技、このデジタルとアナログの組み合わせが重要であり、OTCとしても人間の技というところを重視している」と、西村氏はOTCが人という存在そのものを重視していく企業であることを強調する。

実際の工場だが、先述の通り、1~5号館に分かれており、敷地面積は約2万m2で、工場の延べ床面積は1万9700m2だが、実はまだ使っていないスペースがあり、生産能力の向上には余力があるという。筆者が訪問させていただいた際は、ちょうど、日本アビオニクスの事業移管に向けた新規設備の設置に伴うレイアウト変更を行っていた段階であり、順次拡張が進められているといった様子であった。

工場は1号館から5号館に分かれて、新旧さまざまな設備が稼動している

写真工程のエリア。他のエリアと区切った形で作業が行われている

2016年末までのスケジュールで、日本アビオニクスからの事業移管に向けた新規設備の導入を順次進めており、取材時も新たな設備の導入が着々と進められていた

布線検査工程と最終検査工程の様子。布線検査では、多数のフライングプローブチェッカーが配置され、さまざまな検査が常に行われていた

「人を育て、技術を高め、顧客のニーズに愚直に対応してきたからこそ、今がある。それは今後も変わらない」と西村氏は語る。日本全域の企業に向けて、高い品質のプリント基板を少量でも届け、それが日本のものづくり産業の活性につなげてもらえれば、OTCにとっても成長につながり、ひいては地域の活性化にもつながる。その結果がチームものづくりジャパンの一角を担えるような存在になるということではないか、と同氏は鶴岡市でのプリント基板製造に思いを馳せる。「絶対に日本にものづくりは残る」。その思いを胸に、同社はこれからもエレクトロニクス産業の基礎であるプリント基板を日本で製造することにこだわって行くことであろう。