ベネッセホールディングスは10月19日、「世界大学ランキング」を運営する英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」のトップが来日したことを受けて、同ランキングに関する記者説明会を開催した。
13年前から始まったTHEの世界大学ランキングは、教員数や博士号取得者数といった「教育力」、研究費収入や論文数といった「研究力」、論文引用数からみる「研究の影響力」、海外留学生数や国際共著者論文数といった「国際性」、産業界からの研究費収入といった「産業界への影響力」に着目したもので、全部で13の指標により決定される。全世界の評判調査(アンケート)を重要視していることがその特徴だ。
今年9月に発表された2016年~2017年の世界大学ランキングでは、全世界の約1万8000の大学のうち、980大学がランクイン。英国オックスフォード大学が1位となり、これまで5年連続で首位だった米国カリフォルニア工科大学が2位へと順位を下げた。
THE世界大学ランキングの編集長を務めるフィル・ベイティ氏は、この結果について「13年間の歴史のなかで初めて米国以外の大学がトップとなった。これは、オックスフォード大学を研究大学として総合的に評価した際、研究の影響力や研究費収入、学生に対する教職員の比率など、あらゆる点において改善が見られたためである」と解説した。
アジアにおけるランキングを見てみると、日本の大学にとって厳しい状況であることが伺える。日本国内トップの東京大学は前回、アジア首位から転落し、今回は4位。2年連続でアジア首位となったシンガポール国立大学は、政府から潤沢な支援を受けており、積極的な外向き指向の国際型の教育が評価されている。また、中国・北京の二大大学である北京大学と清華大学が第2位、3位の座を獲得。これは、「中国が知識経済の原動力として大学教育を重視し、政府から多額の資金が与えられたことによるもの」(ベイティ氏)であるという。
しかしながら、ランクインした980大学の国別構成比を見てみると、アメリカ(148校)、イギリス(91校)に次いで、日本(69校)は第3位。前年の41校から数を増やした形となる。この結果についてベネッセは、スーパーグローバル大学の取り組みの成果が表れたことや、地方国公立大学のエントリー数が増えたことが要因であると分析している。
日本国内のランクイン大学について前回のランキングと比較してみると、豊田工業大学が、九州大学と北海道大学とのあいだに割り込んできたことがわかる。豊田工業大学は旧帝大の平均と比較して、論文の引用数の得点が圧倒的に高かったという。
また、私立の総合大学という観点からみると、近畿大学が健闘していることがわかる。これについてはベネッセは、論文の引用数および産業界からの研究費収入が高いことが要因であるとしている。
ベネッセコーポレーション 取締役/学校カンパニー カンパニー長の山﨑昌樹氏は、「世界大学ランキングの報道では、日本の大学のランキングが下がっていることが取り上げられているが、ベネッセとしては、それに一喜一憂するのではなく、これをもとに日本の大学がグローバルスタンダードのなかでどうあるべきか見ていく必要があると考えている。ランキングが上か下かということではなく、他の大学と比較してどの項目で劣っているか勝っているかを自己診断し、強いところは伸ばす、弱いところは改善していく、ということを日々行っていくことが重要。世界ではそれがすごいスピードで行われている」とコメントした。
なお、今回発表されたTHE世界大学ランキングは、研究思考のランキングとなっているが、ベネッセとTHEは来年3月に、教育面を重視した評価指標による日本国内の大学のみを対象としたランキングを発表する予定。卒業生の収入、学生の多様性、高校教員や企業人事部による評判調査など、ベネッセが持つデータを活用し、ランキング作成を進めているという。