俳優の坂上忍(49)が、全世界で30億ダウンロードされた人気ゲームを映画化した『アングリーバード』(10月1日公開)で怒りん坊の主人公・レッドの吹き替えを担当し、ハリウッドアニメの声優に初挑戦。「怒りんぼうの鳥を演じられるのは、日本一の怒りんぼう=坂上忍さんしかいない!」との理由でオファーを受けた坂上は、「僕もよく怒っています。まゆ毛もしっかりしている。顔も似ているかも!」と、本人も納得の起用だった。

本作を鑑賞して感じたこと…レッドと坂上はそっくりじゃないか。それは、レッドの声を聞いて「あ! 坂上忍さんだ」と思うのではない。性格面でレッドと坂上が似ている思う部分が多いからだ。そして、物語が進むにつれて顔まで坂上に見えてくる。坂上自身も、演じ終えてレッドへの共感は増したのだろうか。レッドとの共通点や怒りキャラについて、アフレコでの苦悩、さらに、今後の芸能活動の計画なども本人に直撃した。

――今回、毎日ノイローゼになるくらいアフレコに苦労されたそうですね。

『アングリーバード』で主人公・レッドの吹き替えを担当した坂上忍 撮影:奥西淳二

最後までディレクターさんと、いい意味でけんかしながらやっていました。セリフ量が尋常ではなく、しかも擬音語がたくさんっていう…。あまりにも詰まっていて、息継ぎが不可能なんです。ディレクターさんは気を遣ってくれて、止めながら録ろうとしてくれたんですが、やる側としては感情があるのであまり止めたくないというのがあり、僕が意地になってしまって。自分のやり方を押し通して、あんまり切らずにやりたいと言いながら、結局できなくて切りながら録るとか、そういうようなことを繰り返していました。

――ハリウッドアニメに初挑戦して、新たな発見やつかんだことはありましたか?

つかんだなんておこがましいですけど、アニメの声優ってこういうものなんだなと。想像以上の大変さを身をもって知ってしまいましたね。でも、ディレクターさんに「特にハリウッドアニメは、人間の感情を意識した編集になっていない。物理的にも息継ぎが不可能なんです」と言われてちょっと安心しました。俺がダメなんじゃなくて物理的にダメなのねって(笑)。本当に落ち込んでいたので、それ聞いてホッとしました。

――本作は、レッドたちがいじわるなピッグたちに盗まれた大切な"たまご"を取り返すために大冒険を繰り広げる物語。最後の1つの"たまご"まで守るんだというレッドの姿に感動しました。

僕も完成した映画を見ましたが、俺の声じゃなかったら泣いてます(笑)。自分の声を自分で聞くと、「こういう言い方があったんじゃないか」とか、あらばかり探しちゃうので。僕がこの作品を客として見られるのは公開が終わってからじゃないですかね。ただ、公開中もこっそり客として映画館に行きますよ!

――ご自身の作品を見られるんですね?

いつもは自分の作品は見ないですけど、これはレッドだし! 自分の顔は映ってないでしょ? だからちゃんと見に行って、どこで笑うのかとか、ここでこういうリアクションなのかとか、坂上ヘタクソだなとか、たまに褒め言葉があったりとか、それを盗み聞きしに行きます(笑)。やっぱり、映画の醍醐味は映画館で大きいスクリーンで見ることですから、映画館でお客さんのいる中で見たいですね!

――最近、アニメや洋画の吹き替えを、声優さんではなくタレントや俳優さんがやることが多くなっていますが、それについて坂上さんはどう感じていますか?

バラエティで役者の僕を使うのと似たようなことだと思うんです。声優さんの方が声優のお仕事はもちろん慣れているけど、声優という仕事にそこまで慣れていない役者の方が新鮮なときがある。だから、芸人さんを使ったりするのは、全然ありだと思いますね。本当に声優さんの技術は特殊な技能だと思います。ただ、そのよさもあれば、そういうプロの人たちの中に何人か俳優さんや芸人さん、新人というのもありかなと。映画に芸人さんが出るのとも似たようなことですよね。たぶんバランスだと思います。