NHKは9月21日、「あなたの遺骨はどこへ ~広がる"0葬"の衝撃~」と題したクローズアップ現代+を放映。死後に引き取り手が見つからない遺骨を取り巻くさまざまなサービスや、変容する「弔いの形」を紹介した。
放映後には、家族に引き取られず、先祖代々のお墓にも入れない遺骨の行く末を目の当たりにした人たちが、インターネット上に数多くの意見を述べていた。
骨を預けて音信不通になる人が増加
現代社会では、死者を弔う形が多様化してきている。これまでのように家族の手で亡くなった人を埋葬するのではなく、第三者に遺骨を委ねる以下のようなサービスも始まっている。
■預骨……親族らがお墓を用意できるまで一時的に遺骨を預かるサービス
■迎骨……家などの保管場所まで遺骨を引き取りに行くサービス
■送骨……遺骨を宅配便で送るだけで合同のお墓に埋葬するサービス
「家族が葬儀もせず、遺骨も引き取らず、お墓も作らないこと」を一部の業界では「0葬」と呼ぶそうだが、この0葬が近年、広がりを見せているという。
埼玉県のある葬儀会社は、お墓を購入できない遺族のために預骨のサービスを行っている。3万円で預けられ、これまで2,500人分もの遺骨を預かってきた。毎月3~4件の依頼があり、多いときは10~20件にも及ぶそうで、同社の男性は「5年前より倍近く増えている。(預かる)スペースがなくなるので増やさなくてはならない」と話す。
同社に父親の遺骨を預けているという男性は、母親の医療・介護費がかさみ、100万円以上するお墓は購入できないという事情があり、「なんとかお墓に入れてあげたい気持ちはありますけれど、手が届かない」。
男性のように預けている遺骨のもとに足を運ぶ人がいる一方で、遺骨を預けたまま音信不通になる人が最近増えてきたとのこと。「こちらのほうでどうにか処分してもらえると考える方もいる」と葬儀会社の男性は話した。
合同で遺骨を埋葬
遺骨を預けっぱなしにしている人にはどのような事情があるのか――。番組は、9年間誰も手を合わせにこない男性の遺骨の家族に会いに行く場面へと変わる。男性の妻を直接尋ねに行くと、遺骨を手放したつもりでいたという妻は「捨てちゃっていい」と素っ気なく話した。
亡くなった男性とは20年以上も別居しており、ある日突然、男性が孤独死したことがわかり、警察から遺骨の引きとりを求められたという。お墓もなく、自宅に置いておけなかったため、取りあえず預骨したとのこと。別居後も男性の借金を押し付けられたというその女性は、年金暮らしで生活に余裕がなかった。
この男性の骨を預かる葬儀会社は、預け期間が過ぎたり、引き取り手がなかったりする遺骨は合同墓に埋葬している。画面には、次々と骨つぼから取り出される遺骨が映し出されていた。その日、合同墓に埋葬されたのはこの男性を含む41体の遺骨で、家族の立ち合いはなかったという。この葬儀会社は、これまでに200体以上もこうして埋葬しているそうだ。
遺骨の引き取り手がおらず、自治体の無縁墓地に埋葬される遺骨も増えている。埼玉県さいたま市における無縁墓地への埋葬件数は2003年に33件だったが、2015年には188件にまで増加。この変化には、生涯未婚や熟年離婚など、家族の形の多様化も関係していると考えられている。