RSウイルスについて知ろう
アッヴィ合同会社はこのほど、東京都内にて「乳幼児の入院原因としてのRSウイルス感染症~重症化がもたらす家庭への影響 ~」と題したプレスセミナーを開催した。当日は、東京都立小児総合医療センターの医師・堀越裕歩氏による講演などが行われ、乳幼児が感染すると死亡例もあるほど重症化してしまうRSウイルスについて解説した。
RSウイルスはほぼ100%の人が感染してしまう
セミナーではまず、堀越氏からRSウイルスがどのようなものであるかが説明された。RSウイルスは大きさが1㎜の1万分の1ほどのウイルスで、1954年にチンパンジーから発見されたという。
ヒトにおいては呼吸器に感染し、くしゃみなどによる飛沫(ひまつ)感染や、ウイルスが残っている部分に触れてしまう接触感染によって感染する。ウイルス単独では増殖できない。
細胞に感染しないと増殖できないが、感染率としては1歳の誕生日までに約70%、2歳までにはほぼ100%の乳幼児が感染し、先進国においては乳幼児が入院してしまう原因の第1位とも言われているという。
症状としては鼻汁や発熱、せきといったように風邪の諸症状と一致するため、重症化しないと感染に気づかないケースもある。そして、RSウイルスは誰でも感染するため、乳幼児や小児のほかに老人でも重症化する場合がある。
「RSウイルスは流行期があり、7月ごろから感染者が徐々に増えてきて、秋から冬ごろにピークを迎えます。インフルエンザが流行し始めると、RSウイルスが落ち着く傾向です。多くの場合は軽症ですみますが、基礎疾患のあるお子さんが感染すると重症化しやすいです。多くは成長とともに軽快していきますが、入院するほど重症化したお子さんは、回復して退院しても30~50%が喘鳴を繰り返してしまいます」。
RSウイルスに感染すると、呼吸の通り道が狭くなり「ゼーゼー」といった感じの喘鳴が起こり、呼吸が苦しくなる。呼吸がうまくできなくなるほど重症化した場合は、入院加療が必要になる。おたふくかぜのように一度きりのものではなく、何度も罹患(りかん)することがあることも特徴だ。
患者の1割が重症化している現状
堀越氏が勤務している都立小児総合医療センターでは、年間で200人のうち18人が集中治療を行うまでに重症化、死亡例は0.2人ほどになる。この病院では基礎疾患を持った患者が多いため、死亡例は高めに出ているとのこと。インターネットでの調査では、入院した子供の3分の1には基礎疾患があったが、残り3分の2は基礎疾患のない健康な子供が入院していたという結果もあるため、注意が必要だ。
RSウイルス感染症は、日本をはじめ世界中に分布していながら認知度が低い。世界レベルで見てみると、死亡例の99%は発展途上国。5歳未満の子供が毎年7万~20万人もRSウイルスで死亡しているとみられている。
発展途上国を含む感染の自然歴では、100人中10人が入院し、0.5人が死亡していることになる。イギリスでの調査では、成人においても100人中3.6人が入院し、1.7人が死亡すると報告されており、インフルエンザと同程度の印象だという。