訪日中国人の消費を中心に語られてきた「インバウンド需要」、そして折しもリオ五輪閉会式で「バトンタッチ」された東京五輪に向け、訪日外国人向けのサービス拡充は各方面で進められている。
鉄道の駅や公共空間などで掲出されているサインにも、複数の言語での記述が行われるのが普通になってきている。そんな折、銀座交通デザイン社が開発したサイン・看板向けバーコード「XPANDコード」(ベータ版)がリリースされ、注目を集めている。
今回は、同社代表の 南木徹氏に、交通デザインを主軸とする同社が、バーコード自体の規格をリリースしたきっかけから今後の展開まで、お話を伺った。
――「XPANDコード」について、開発のきっかけを教えてください。
弊社では大手の案内表示器の表示デザインなど、交通向けのデザインを手がけているのですが、近年は多言語への対応ニーズが著しく増えています。「XPANDコード」は、そうしたニーズに対応する目的で、4年前から開発に着手し、今回ベータ版の提供を開始しました。
公共空間などのサインデザインを行うにあたって、英語、中国語、韓国語など多くの言語への対応が求められる中で、異なるフォントで書かれた文言の数が増えていき、デザインの統一性が失われがちです。そこで、景観デザインを大切にしながらも、ユーザーに合った多言語対応が可能なサービスが必要だと考えました。
「XPANDコード」はWebブラウザ経由で読み取る形式のため、掲出場所ごとに異なる"専用アプリ"を用意する必要はない。(※初回のみバーコード読み取りの汎用アプリ「pic2shop」をインストールする必要がある) |
――スマートフォンで読み取るコードというと「QRコード」が思い浮かびますが、プレスリリース内では「サインをデザインする上では使いにくい」と言及されています。使いにくさの理由は何でしょうか?また、XPANDコードの形状にはどのような利点があるのでしょうか?
QRコードはユーザーが接近して読み取る前提で作られています。ですが、サインはユーザーが遠くから見つめるのが普通です。
そのため、サインが表示される掲示板などは、小さいものでも横1メートル程はあります。仮にQRコードを配置するとして、サインの面積に比例してコードも大きくなっていきます。そうしたときに、ランダムなモザイク状のQRコードは、シンプルなサインの中に配置すると浮いてしまいます。
サインデザインを邪魔しないコードを模索した結果、横長の形状が一番収まりが良いことが分かりましたので、「XPANDコード」はこのようなカタチになっています。
――多言語対応と言うと、電子掲示板など表示側での対応も可能かと思いますが、スマートフォンとバーコードを活用したサービスとしてローンチした狙いは?
その背景として、われわれが創業時にはiモード公式コンテンツなど、Webサービスの受託開発をしていたことがあります。また、電子掲示板などのデザインは受託業務のため、一度完成したらリニューアルは早くておよそ7年後で、そもそも、次も弊社に依頼されるという保証もありません。ノウハウを活かしたい、そして会社として別の柱を持ちたいという思いから、サービス開発をいたしました。
――「XPANDコード」は現在ベータテスト中とのことですが、目的別のステッカーにあらかじめコードが印刷された「XPANDステッカー」はすでに発売されています。こちらの反響や利用(購入)状況はいかがですか?
実を言うと、想定ほどの反応はないというのが現状です。ステッカーとして見た時に他社よりすこし割高であることが一因かもしれません。ゆくゆくは、公共交通機関やショッピングモールでの大量導入を実現できればと思っています。
――公共交通機関のサインの代表格といえば鉄道駅のサインですが、鉄道会社単位での導入予定はありますか?
「XPANDコード」の開発を開始した段階で、各鉄道会社の現場のご担当者様に一通りプレゼンテーションは実施しました。今回、ベータ版ではありますが正式にスタートしたので、あらためてプッシュをしていくつもりです。
――最後に、「XPANDコード」の今後の展開について教えてください。
今年度中の発表を目標として、無料で誰もが「XPANDコード」を発行できるサービスを開発中です。ステッカーと同様、小規模な店舗の事業主の方などに自由に使っていただき、このコードが広がっていけばと思っています。