オライリー・ジャパンは8月6~7日の2日間、東京ビッグサイトにてモノづくり系イベント「Maker Faire Tokyo 2016」を開催した。自分の手でモノを作り、その成果を多くの人と共有しようというMakerムーブメントが生んだお祭りというのが趣旨で、過去Maker:TokyoMeeting時代から数えると2008年以降12回目の開催となる。

今回は1Fの西2ホールとアトリウムを使用し、2015年の西3ホール+屋上展示場という会場構成よりもスペースを拡大、約400組の出展者と多数の入場者でにぎわっていた。毎年子ども向けのワークショップも多く、子ども連れでも楽しめるイベントも多かった。

初日は12時からの開場にも関わらず先頭の親子(母親と息子)は10時から来ていたということで、どちらが主導したのかと思って聞いたところ「父親がこの手のが大好き」ということだった。

今年はスポンサーブースがまとまって配置されており、来場者のみならず出展者のMakerにもアピールする製品や技術の展示が行われていた。なかでもNVIDIAはカードサイズで1TFLOPSを実現するJetson TX1と前世代のJetson TK1を全面的に押し出したかなり濃い展示を行っていた。

NVIDIAのブース。一昨年よりもやや狭かったが密度の濃い展示を行っており、来場者だけでなく画像処理に興味のあるMakerをひきつけていた

NVIDIAは国内でのTX1の説明会の際、enRouteがドローン捕獲用に画像認識で捕獲対象のドローンかどうかを判断するというデモを見せていたように、組込機器でも動作する消費電力と強力な演算能力を備えており、画像認識や自律動作と言った用途にも利用できる。

そこで、比較的大きなスペースを割いて見せていたのが「Jetson搭載ロボット」。イタリアのロボット研究者ラファエロ・ボンギ氏を招き、Jetson TX1ベースのPanther、Jetson TK1ベースのDudeを展示。ボンギ氏による説明を行っていた。深度カメラやステレオカメラ等のセンサー情報を内蔵されたJetsonで解析することで、周辺環境に応じた自律動作が行えるという。

イタリアからやってきたロボット研究者のラファエロ・ボンギ氏。氏の作成したロボットのデモンストレーションを行っていた

Jetson TK1を搭載したDude。正面のステレオカメラからの画像を解析して自律動作を行う

Jetson TX1を搭載したPanther。キャタピラにより走破性も向上し、演算能力も増大している

また、ステレオカメラZEDからの情報を処理するデモンストレーションやWebカメラから得た画像からニューラルネットワーク「NeuralTalk2」を使って画像内容を解析し、これを音声で伝えるデモや、これらの実装を容易に行えるNVIDIAのVisionWorksライブラリーの説明を行っていた。

ニューラルネットワークによる画像処理デモ。ここでは学習用の静止画を使っているが、上にあるWebカメラからリアルタイムの画像を処理するデモも実施

ニューラルネットワークによる画像処理デモ。ここでは学習用の静止画を使っているが、上にあるWebカメラからリアルタイムの画像を処理するデモも実施

NVIDIAのVisionWorksライブラリーのデモ例。オープンソースのツールを更に使いやすくしたものを提供しているため、アプリケーションの構築も容易となるという

NVIDIAのVisionWorksライブラリーを使った別のデモ

画像認識の例。以前もこのデモを行っていたが、今回はこの解析結果を音声で伝えており、視覚障がい者に目の前の状況を説明できるようになるという

右上の猫の画像をいれると、下のサンプルの「画家のタッチ」に変換するというデモ。CPU演算の半分程度の時間で処理できるということだが、それでも30分近くかかるので、結果だけを見せていた

Jetsonシリーズの特価販売も行っており、Jetson TK1 開発者キットが19,000円、Jetson TX1 開発者キットが70,000円(いずれも税込)とかなりお得な価格で販売されていた。特に手の出しやすいTK1は「初日に売り切れるかも(初日の担当者談)」の勢いで売れていたようだ。

実際に使ってみたい人のために、Jetson TX1/TK1を会場限定で特価販売していた

Jetson TK1をWii UのGamePad代わりにしてゲーム画像を解析

また、Jetson TK1をWii UのGamePadとして動かし、画像解析でプレイヤーに新たな情報を通知するというデモを行っているMakerがいた。

Jetson TK1を使った画像解析を展示していた「ハードウェアとか研究所」。FPGAを使ったHDMIの画像キャプチャにJetson TK1を使ったWii Uゲームパッドエミュレーションの画像解析結果をオーバーレイ表示するハズだが、ネット環境の問題で本当のデモは断念

システムは別途Wii UのGamepad画像を横取りして、そこに解析の結果をスーパーインポーズするというものだが、この手の展示会の常として無線環境が悪くライブデモは行えず、2日目は説明システムだけが動作していた。作成者によるとTK1ではまだ処理能力が足らないのでTX1があるといいがちょっと高いということだった。

左下が追加された画像で、本来はプレイヤーの行動支援をおこなう画像となる

システム一式とJetson TK1の解析画面。TK1ではやや力不足ということだ

大人も子供も楽しめるワークショップ・展示も盛りだくさん

Maker Faireの「ここが良い」と筆者が思うのは知識や腕のある人だけでなく子供も楽しめる(自由課題が早々に終わる!)ワークショップや、見ていてワクワクする展示が多いことだ。

Maker Faire Tokyo 2016では今回初の試みとしてニューヨークからやってきたルール無用のミニチュアカーレース大会「Nerdy Derby」がアトリウムで開催されていた。

アトリウムで開催されていたNerdy Derby。一番右側の列は順番待ちでなかなか途切れなかった。左が本番コースだ

ナットとワッシャをタイヤ代わりにして傾斜を滑らせるという「おもちゃの車」を作るのが目的だが、ルール無用ということで工作だけでなくデコ方面もアリ。

「こうさく」に使えるフリー素材。これにボルトを車軸、ワッシャを車輪にした車を作る

作業台。真ん中にあるのがテスト用のコース。ストローに車軸を通すと抵抗が減るので、テープで仮止めして、接着剤でくっつけている

工作例。どのように作るかは自由。右側に電池が乗っているのは「おもり」

工作台のテストコースで試したあとは、本番の大コースに挑戦。大コースもニューヨークオリジナルのコース以外に日本独自の4つのコースも用意されており、「初日だけで2日目のパーツもなくなりそう(初日担当者談)」の盛況ぶりだった。

うまくできたと思ったら本番コースで挑戦。写真はニューヨークでも使っている公式コースで、この谷の部分でスピードを出して左の山を越えられるかどうかはポイント

お! 見事に山を超えた。3つ並べて同時にスタートする競技も可能だ

TOKYOオリジナルコースもいろいろ。このコースは角度がキツイ上にカーブがあるのでコースアウトしやすい

ラージヒルジャンプ。うまく速度を付けて遠くまでジャンプできれば優勝。旗は参考記録のようだ

壊れたら「しゅうり」してくれる……「まかいぞう」もしてくれる。扱いが難しいリューターによる削りとホットボンドでパーツをくっつけてもらえる

それ以外にもエディケーション & キッズゾーンや「子どもプログラミングカフェ」といったコーナーも用意されており、ほかのワークショップ同様に盛況だった。子どものプログラム教育はアシスタントが多く必要なので、こういう機会をうまく利用して、体験してほしい。

新設された「子どもプログラミングカフェ」ここも常時満席の盛況ぶりだった

学べる教材も豊富な上に先生も多かったので、なかなか良い機会ではないかと思う。ちなみにIchigoJamは別ブースで展示販売されていた

「できんのか!」によるロボットプロレスもおこなわれた。選手もロボットならレフリーもロボット。右の青いロボットの目にはクラッカーが仕込んであるが「おとなの事情で不発」

メカメカしいのから結構かわいいのまで。さらに「鏡獅子」