ワークショップでは、JR東日本がモバイルSuicaの事例紹介などを行ったほか、NFC Type A/B/Fそれぞれの違いの分析、どうハーモナイゼーションするかといった議論が行われたという。

JR東日本の事例紹介

特にNFC Type Fがほかと異なるのは、その処理速度だ。JR東日本は改札の処理が200ミリ秒以内に終了し、1分間に60人が改札を通るだけの処理性能があって、しかもICカードとリーダー/ライターまでの距離が85mm以内、という要件を求めて採用したのがNFC Type F(FeliCa)だ。これに対して、欧州の鉄道事業者は処理時間は500ミリ秒以内で、改札からカードまでの距離も20mm以内という要件で、Type Fより処理が遅く、ICカードをより近づけないと処理できないものとなっていた。「これでは1分間に30人しか通過できない」と山田氏。

JR東日本の要求仕様

欧州の要求仕様との違い

ピーク時のJR池袋駅の改札の様子。30秒で30人を処理していた

山田氏は、ワークショップでピーク時のJR池袋駅の改札の様子を映したビデオを紹介し、なぜこの要件が必要かを欧州の鉄道事業者に説明したと報告。ただ、JR東日本の要件が厳しすぎるということで、日本だけこのまま独自路線で行けばいい、というような雰囲気にもなったそうだ。

さらに説明を重ねる中で、欧州の要件は、改札のリーダー/ライターのアンテナが小さいこと、古くて消費電力の大きいICカードを想定していることから、JR東日本の改札なみのアンテナ(Class 1以上の大きさでICカードサイズ)を使い、最新のNFCチップを使えば、NFC Type A/Bでも処理性能は同等を実現できると訴えたそうだ。

日本と欧州の仕様の違い

こうしたJR東日本の説得が功を奏し、ワークショップではNFC Forum規格とISO/IEC10373-6を変更することで合意が成立したという。この合意によって、NFC Forum規格を採用することで、「決済、公共交通分野の双方で使用でき、世界中で同一の規格を使用できる」ようになる。つまり、NFC Forum規格として「NFC Type A/B/Fを搭載する」ことが決まったのだ。JR東日本としては、既存のインフラがあるためNFC Type A/Bを改札で受け入れる気はなく、合意に従うには、スマートフォン側にType Fを搭載するしかない。

参加団体の主張を取り込みつつ、今回の合意にいたった

合意にもとづいて規格が改定された

これに加えて、モバイル業界の業界団体であるGSMAと、その下で欧州向け端末の認定試験を行うGCFがNFC Forumと提携。GCFの認定試験では、GSMAの規格書をもとに認定を行うが、NFCの規格についてはNFC Forum規格を参照することになった。

GSMA・GCFとの合意で、GSMA規格はNFC Forum規格のサブセットを参照することになった

NFC Forum規格は決済と公共交通におけるハーモナイズの結果が反映されている。ということは、GCFの認定を受けるためにはNFC Forum規格に従うことになり、グローバルモデルでもNFC Type F、つまりFeliCaチップの搭載が必要になる。

ワークショップの合意では、2017年4月以降、公共交通で利用されるGCF認定を受けたNFC対応スマートフォンなどの端末は、「NFC Type Fも実装される」ことを目指すとしており、公共交通系の標準化団体である欧州系のSmart Ticketing Alliance(STA)や米公共交通協会(APTA)、そしてJR東日本が新仕様に沿ったインフラを整備していくという。

その結果、GSMA規格に準拠したスマートフォンにはNFC Type Fが搭載されることになる