早稲田大学・戸山キャンパスの大学生協では、今春よりアップルのMacBook Air 11インチ 128GBモデルが推奨パソコンとなっている。これまで、戸山キャンパスの生協ではWindows PCが推奨モデルとなっていたが、何故、MacBook Airに切り替えたのだろう?

左から、MacBook Airを使っている文学部3年の田中諒子さん、文化構想学部1年の楠真奈実さん、同じく岡村祐香さん、文化構想学部3年の柏木佐和子さん

早稲田大学生協・戸山店でPCの販売を担当されている吉岡正也さんは、Windows PC販売の失敗談を最初に聞かせてくれた。生協の4年間の保証・保険、講習会の案内など、量販店にはないサービスをしっかりと伝えられなかったというところもあったが、なによりも販売台数をかなり落としてしまったところが大きく、改めて、戸山キャンパスの学生に求められているパソコンとは何なのか再検討をする必要があったと、不調に終わった2015年の実績を振り返る。必要なパソコンを学生と一緒に考えた結果、価格帯、4年間しっかりサポートできるものということで、MacBook Airが選ばれたとのことだ。教員にもヒアリングを行い、講義に際して支障がないことを確認した上で決定がなされた。学生からは、「カッコ良い」「バッテリーの持ちが良い」「持ち運びがしやすい」といった点が高く評価されたとのことである。

早稲田大学生協・店長の遠藤朋子さん(左)とPC販売担当の吉岡正也さん

戸山店の店長・遠藤朋子さんにも話を伺うと、売れ行きも好調とのことで、取材の時点で販売台数は700台で、新入生の42%が購入したと驚きを隠さない。昨年の実績が223台で、学生に対するシェア率が10数%程度だったのに比べると、3倍以上の数字となっている。

購入の動機を文化構想学部の1年生に伺ってみたところ、普段は使ってなかったが、家族全員がアップル製品好きだったので、自分もという感じでと答えてくれた。同じく、文化構想学部の1年生に聞いてみると、これまでパソコンは触ったことがなかったが、普段iPhoneを使っていて、Macのアプリのアイコンが同じだったので、これなら大丈夫そうと思ったという返答が。筆者は、iPhoneとMacは共通アプリも多く、使いやすいと指摘してきたが、実際初めて買ったというユーザーも同じことを感じているようだ。

文化構想学部1年の楠真奈実さん

文化構想学部1年の岡村佑香さん

受講に必要なアプリはMicrosoftのWordやExcel、PowerPointだったりするのだが、これらもMac用のものが提供されているので、問題なく生協推奨モデルを選択できる。ある程度使いこなせるようになったなら、Boot CampでWindowsを動かすというのも手だ。

今回取材で素晴らしいと思ったのは、大学側の主導でなく、またアップルが営業活動を頑張ったという訳でもなく、あくまで生協と学生の自主的な活動の中で推奨パソコンが選ばれたというところである。最初からアップル製品を選ぶのが決まっていた、ということではなかったのだ。

生協は、販売するだけでなく、「ならでは」のサポートを提供し、また学生は、新入生が使えるよう、上級生による委員会を構成。機種の選定から使い方の講習会、Macを検討するに際して参考となるパンフレットの制作などを行っている。

文学部3年の田中諒子さん

文化構想学部3年の柏木佐和子さん

文化構想学部の3年生は、パソコン、まず何にするの? というテーマの中で、価格帯は? スペックは? と議論していくうちに、条件を満たすのがMacだったと話す。Windowsマシンも検討されたが、同価格帯の機種では、耐久性、グラフィック機能で劣る面があるという理由で却下されたそうだ。

MacBook Airで論文を読んでいた文学部の3年生は、他のパソコンだと、いちいち電源落とさないとバッテリーが激しく消耗してしまう、が、Macならあまりその心配はない、いつでもモニター部を開閉して続きが読めると、省エネルギー設計と機動性を指摘。このあたりはiPhone/iPadと同じようにMacを使っているという印象を受ける。また、「オシャレだから」とか「カッコ良いから」という理由で選ばれることも多いMacだが、これは、畢竟、「機能美」の一言に集約されるのではなかろうか。日常に溶け込み、持っていれば様になる、さらに機能も優れて、安い(以前なら想像できないくらい)となれば、むしろ選ばれないほうが不自然と言えよう。

論文を読んでいる最中に取材現場に駆けつけてくれた文学部の3年生が使っているMacBook Air

早稲田大学生協の推奨パソコンは、通常1年のメーカー保証が4年に延長されており、さらに動産保険も付帯する。液晶を割ったりすると修理代は数万かかるのだが、早稲田大学生協で購入すれば、5,000円程度で修理でき、しかも、修理期間中は代替機が無料で借りられるのだ。使ってるMacが壊れたとしても、修理に出すのも受け取るのも、大学に通うついでで済むのというのもポイントだ。保護者もこれなら、安心して資金提供できるのではなかろうか。

店頭サポートも実施されており、年に一度、専門の技術者による無料点検会も行われている。そして、前述の講習会と、まさに至れり尽くせりで、学業に集中できる環境を整えてくれている。

ちなみに、MacBook Airを生協推奨パソコンとしているのは、早稲田大学内では戸山キャンパスだけとのこと。意外と大学側が保守的で、学生向けに開放している、自由に利用可能なパソコンはWindowsマシンのみとなっているらしい。筆者は以前に東京大学の事例を紹介したが、多様な分野での履修において、一種類のOSで全てが賄えるかといえば甚だ疑問である。MacがあればWindowsも動くし、UNIXも利用できるのだから、再検討されても良いのではないだろうか。そこで学生側から声が上がるのを期待したいし、研究機関としてすべき選択をして欲しいという思いもある。少なくとも学生は、Macをチョイスすることに積極的な意味を見出しているのだから。