プロセサの命令アーキテクチャは、京コンピュータではSPARCであったが、ポスト京ではARMv8+HPC Extensionアーキテクチャに変わる。筆者の個人的見解であるが、命令セットアーキテクチャがSPARC V9でもARMv8でも、できることは大きな違いは無いので、ハードウェアの開発には大した違いは無い。それよりも、2020年にふさわしい性能/電力を実現するなどが設計上の課題になると思われる。
ARMはHPCにはほとんど実績がないのであるが、EUはARMのHPCでの利用を推進しているので、ARMから流用できるものがでてくるという期待もあり得る。
積和融合型の演算、演算を加速するプリミティブ、コア間バリア、セクタキャッシュ、ハードウェアプリフェッチのアシストなどが、富士通拡張としてARMv8の拡張の候補となっているようである。HPC拡張アーキテクチャについては、8月のHot Chips 28(HC28)で発表が行われる予定である。
そして、ポスト京では米国エネルギー省傘下の研究機関との協力も視野に入っている。新しい3レベルのメモリ階層に対応するメモリ管理や新しいMPI通信に関しては、アルゴンヌ国立研究所との協力が予定されている。
システムソフトウェアに関しては、軽量カーネルを使うことの利点についてIntelと意識を合わせ、IntelのmOSと日本McKernelとの違いの相互理解を経て、軽量カーネルのAPIの標準化に進みたいという。
プログラミングは、XMPなどのディレクティブベースの並列プログラミング言語を使う。これらの並列言語の開発には、AICS、ヒューストン大学、筑波大などが協力する。また、ランタイムの開発はアルゴンヌ国立研究所と協力する。
まとめとして、ポスト京スパコンの命令アーキテクチャはARMv8にHPC拡張を追加したものになる。ARMには大きなコミュニティがあり、使い勝手が改善されると期待される。
システムソフトウェアスタックに関しては、国際的な協力を得て開発を行う。理研が開発するソフトウェアはオープンソースとして公開する。そして開発するソフトウェアはポスト京だけでなく、IntelのXeon、Xeon Phiでも動くものとする。という方針が明らかにされた。