北海道に拠点を置くインターステラテクノロジズが今夏、高度100kmを目指した新型ロケットの打ち上げを実施する。6月28日、DMM.make AKIBA(東京都千代田区)にてトークイベント「ロケットナイト」が開催され、同社ファウンダーの堀江貴文氏や代表取締役の稲川貴大氏が登壇。ロケット開発の最新状況などについて語った。

客席のど真ん中にロケットが置かれるという珍しい会場

堀江貴文氏(中)と稲川貴大氏(左)。お揃いのTシャツで登場

同社が打ち上げるのは、全長8.5m、重量900kg(推進剤含む)の1段式観測ロケット「モモ」。燃料にエタノール、酸化剤に液体酸素を使う液体ロケットで、推力1トンの新型エンジンを搭載する。打ち上げ後100秒で燃焼を終了し、そこから約4分間、微小重力環境を提供することが可能だ。ペイロードは最大20kg。

ロケットは全長8.5m、直径50cm。北海道大樹町より打ち上げられる

燃焼実験で使用したエンジン。1トンという推力を生み出す

同社は2011年3月から、北海道にてロケットの打ち上げ実験を繰り返してきたが、宇宙空間と言われる高度100kmに到達する能力を持つロケットはこれが初めて。今までの最高は6号機「すずかぜ」の高度6.5kmなので、一挙に10倍以上に挑戦することになる。そのため、モモでは機体の全長、エンジンの推力が約2倍に大型化している。

失敗も経験しながら知見を蓄えてきた。これは5号機「ひなまつり」の打ち上げ実験(2013年3月)

今回のイベントでは、モモと同サイズのモックアップが初披露。堀江氏も今回初めて見たそうで、「8.5mというのは数字としては頭に入っていたが、実際に見ると違う」と、実物の大きさに驚いた様子。客席の最後尾から最前列まで貫通するような長さだが、それでも搭載できる荷物はわずか20kgということで、稲川氏は「それが宇宙の遠さ」だとした。

初号機の打ち上げはDMM.comが協賛しており、大きなロゴが側面に

構造。ヘリウム、エタノール、液体酸素のタンクで大部分を占める

堀江氏は、宇宙開発を手がける理由を「みんなが当たり前のように宇宙に行ける世界を実現するため」だと説明する。今でも大金を払えば、民間人であっても宇宙に行くことは可能だ。障壁となっているのは技術ではなく、高いコストなのだ。堀江氏も「宇宙に行くボトルネックは値段だけ」だと言い切る。

低コスト化のために、部品は可能な限り汎用品を使う。性能は多少落ちてもいいから、シンプルに作る。使い捨てでもたくさん打ち上げることで、量産効果を狙う。そのためには、「最低性能があればいい。そう考えて作っているので安くできる。よくバカにされるけど、飛びさえすればそれでいい」(堀江氏)

量産で安くするためには、まずは需要が必要だ。ロケットが安くなったとして、どのくらいの人が使おうと思うか。堀江氏はその点について、「僕は楽観的」だと述べる。「僕が考えるだけでもいろいろある。鳥人間コンテストみたいに、地球と月の間でレースをしてもいい。ロケットはまだバカバカしいことに使われていない。それがすごく残念」

高度100kmへの到達は、本当に最初の一歩だ。今回のロケットは弾道飛行専用であり、まだ人工衛星の打ち上げには使えない。地球を周回するためには、さらなる大型化が必要になる。多段化など、技術的な課題もある。

だが、本当に「宇宙に行けた」となれば、ぐっと現実味が出てくる。本気で考える人が増えれば、今まで思いもよらなかったような使い方が出てくるかもしれない。そういう意味で、今回の打ち上げは大きなマイルストーンになるだろう。

初号機の打ち上げは技術実証試験として実施する。ペイロードは未定で、何か実験装置を搭載したい人がいれば声をかけて欲しいという。打ち上げの時期は8月下旬以降になる見込み。最初の数回は技術実証試験として行い、その後、商業打ち上げに繋げる考えだ。

なお、同社は打ち上げ費用として、2700万円を目標額としたクラウドファンディングを実施中。出資は3000円から。リターンは、オリジナルTシャツ、打ち上げ中継の限定公開URL、打ち上げ報告会参加権、指令所スタッフ参加権など。最高額の1000万円コースでは、なんと打ち上げボタンを押す権利まで用意されている。