台湾TSMCに次いで世界第2位の半導体ファウンドリGLOBALFOUNDRIES(GF)は5月27日(米国時間)、受託生産用の300mmウェハ対応半導体工場を中国内陸の重慶市に設けることで、現地人民政府と合意したと公式に発表した。

既存ファブを改装して生産開始を急ぐ

GFの300mm工場は中国中央政府の直轄市である重慶市の地方人民政府との合弁の形をとり、地元の半導体ファウンドリである中航(重慶)微電子(Skysilicon)の200mmウェハ対応製造ラインを300mm用に改装し、300mm対応製造装置を搬入するという。GFはシンガポール工場(図1)から、検証済みの半導体製造技術を移管し、2017年にも生産を開始する。新たにファブを建設せず、既設ファブの改装により、生産開始時期を早めて、先に中国に進出を決めている台湾の競合ファウンドリに打ち勝つ狙いがある。

設計支援も強化して1年で中国での売上倍増へ

GFはさらに、中国での半導体の設計支援能力の拡大に向けて、積極的に設計サービスにも投資を行っていく方針も同時に発表した。GFは現在、北京と上海に販売/デザイン/サービスセンターを開設しているが、ここでのASICビジネスを強化し、一年後には中国での売り上げを倍増したいとしている。GFの中国進出で、同社は文字通り、グローバルな規模のファウンドリとなる(図1)。

図1 GFが現在所有する3大陸5工場群。左から米国ニューヨーク州イーストフィッシュキル(旧IBM工場)、ニューヨーク州マルタ(GF自身が建設した最新鋭工場)、バーモント州バーリントン(旧IBM工場)、独ドレスデン(旧AMD工場)、シンガポール(旧Chartered Semiconductor Manufacturing)。これに中国重慶工場が加わると文字通り、業界唯一のグローバルな規模のファウンドリとなる (出所:GF)

重慶市とWin-Winの関係構築

図2 GFのCEOであるSanjay Jha氏 (出所:GF)

GFのCEOであるSanjay Jha氏(図2)は、今回の中国への工場進出に際して、「中国は、世界で最も急成長している半導体市場で、世界の半導体消費量の半分以上を占めている。それに加えて、世界規模でビジネスを行うファブレス(工場を持たない半導体規格・設計・販売企業)が多数育ってきている。私たちは、重慶政府のリーダーシップのもとで、ますます成長する中国の顧客をサポートするために投資できることを大変喜ばしく思う」とコメントを発表している。

重慶市長である黄奇帆(Huang Qifan)氏は、今回のGF誘致成功に際して、「近年、重慶市は、インテリジェントな最終製品の製造に適した、中国で最も重要な場所の1つになっている。今年から始まった『中国の第13次5カ年計画』の期間中、重慶市は、インテリジェントICはじめ戦略的新興産業を振興し、持続的かつ健全な地方経済発展を推進していく。 GFが当地でのインテリジェントICの生産を増大し、お互いWin-WInの関係になるよう協力していきたい。これにより重慶市のみならず中国全体の電子情報サプライチェーンが強化されることを期待する」と語っている。

半導体の自給率向上は共産党政権の国策

図3 重慶市長である黄奇帆(Huang Qifan)氏 (出所:重慶市人民政府Webサイト)

中国では、半導体デバイスは、2013年には石油を抜いて最大規模の輸入品目となった。いまや中国は世界最大の半導体輸入国である。「世界の工場」(世界のモノ造り拠点)と呼ばれる中国にとって、その工場で消費する半導体のほとんどを輸入に頼っている現状を改め、国産化することで自給率を高め、共産党政権国家として軍需産業の強化を図り、産業全体の底上げを図ろうとしている。

中国では、地元のファブレスが急速に多数育ってきており、欧米のファブレスも日本を素通りして中国国内に多数のデザインセンターを設置している。中国勢はあっという間にファブレス市場(2015年)の1割を占めるまでに急成長し、さらに急速にシェアを伸ばしている、AppleのiPhone/iPadはじめ、多種の最終製品を受託生産する鴻海科技集団、家電大手の海爾(ハイアール)、スマートフォン・通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)など短期間に世界的企業に成長した中国企業、さらには多数の成長予備軍が半導体の大口顧客として控えている。