CCCマーケティング 執行役員 企画本部 企画本部長 橋本孝一氏

続いては、カルチュア・コンビニエンス・クラブのデータベース・マーケティング事業を推進するCCCマーケティングで執行役員 企画本部 企画本部長を務める橋本孝一氏が「5,700万人超の『Tポイント』購買データによるデータベース・マーケティングの進化」と題した講演を行った。

カルチュア・コンビニエンス・クラブでは書店・レンタル店「TSUTAYA」をはじめ、スマートフォンブランド「TONE」、チケット販売サービス「Tチケット」、電子マネー「Tマネー」など、共通ポイントサービス「Tポイント」と連携する多彩な事業を展開している。

ここまで幅広い事業を手がける理由について、橋本氏は「すべての目的は、趣味・嗜好性を踏まえたライフスタイル提案のためのデータベース(以下、DB)構築にある」と語る。

ポイント付与や還元・値引きでは動かない顧客にアプローチするには?

ベースとなる「Tカード」は約13年前、ポイント/レンタル会員証/クレジットカードの各機能を1枚にまとめたTSUTAYA会員向けのカードとして登場した。そこから事業拡大や提携先企業の増加により、「T会員」は2016年3月末時点で5792万人に到達。この数値は、名寄せ後かつ1年に1回以上使用した"実際に活用している有効会員"のみながら、日本総人口の約45.5%に相当する。ポイントアライアンスも139社49万6262店舗まで拡大しているそうだ。

このように圧倒的な規模を誇るTポイントだが、橋本氏は「お客さまにとって、共通ポイントはもはや当たり前の存在であり、会員規模にものをいわせた単純送客の時代はもう終わった。単なるポイント付与や還元・値引きではお客さまは動かない。そうした中で、過去の購買履歴/嗜好性/ライフスタイルからその商品を欲している"本当の"顧客を見つけ出し、そこに"最適な方法"でアプローチすることが求められてる」と語る。

同時に、提携企業から求められる要求レベルも格段に上がっているそうだ。Tポイント加盟企業に対する同社のコミットメントは、昨対比の売上・利益を上回ることにある。そこで、従来のようなCRM推進はもちろん、各種データ分析を基にした商品企画や店舗における販売促進方法など、経営に結び付く総合的な支援が求められているという。

こうした状況下において、橋本氏は「データアナリスト/コンサルティング集団/DBという3つの要素を束ね、アライアンス企業やその先にいるメーカーと共通言語で話せるマーケティング・プラットフォームを準備することが、共通ポイントの競争優位性につながっていくと考えた」と語る。

商品購買者のライフスタイルや購買傾向が把握可能に

こうして誕生したのが、同社で現在取り組んでいる新たなDBマーケティングプラットフォーム「Watch And Recommend Platform(WARP)」だ。このWARPはまだ正式リリースを発表しておらず、本講演で初めて社外に公表されたものだという。

同社では従来、Tポイント流通各社のDBから受け取った購買明細とマスタをまとめ、そこにテレビ視聴履歴やインターネット接触履歴などのメディア接触軸、天気・気温・物価指数といったコーザルデータ軸が追加された統合DBを構築。データ可視化ツールにより情報を提供していた。一方、WARPではさらに商品購買者のライフスタイルや購買傾向を把握できるT会員アプローチツール「Market Watch(MKW)」を追加することで、アプローチ支援までをも可能にしたのである。

現時点では分析テンプレートとして、時系列分析/曜日時間帯分析/価格分析/トライアル&リピート分析を含む「基礎集計」、スイッチ・流入流出分析/カテゴリ横断分析からなる「併買分析」、生活属性分析/雑誌併買分析が可能な「ライフスタイル分析」、テレビオペレーションを主体とする「メディア分析」という大きく4つのメニューを展開しているそうだ。

橋本氏は、講演の終盤で各分析テンプレートの詳細を紹介し、参加者の注目を集めていた。なお、Market Watchは2015年度に大手メーカー数社を利用モニターとした試験運用で機能・性能検証を実施し、2016年4月から本番環境で稼働を開始。現在は本格導入・運用に向けて数社に提案をしているという。