仮想環境向けデータ保護製品と監視ツールを提供するヴィーム・ソフトウェアが4月21日、日本市場への本格参入を発表した。同社製品の特徴は、データ保護とともに、データの可用性の提供をしている点。同社はなぜ日本市場に参入したのか、日本市場で何を狙っているのか、社長兼CEOであるラトミア・ティマシェフ氏に話を聞いた。

なぜ今、日本市場に本格参入したのか?

同社は、「Availability for Always-On Enterprise」を実現する製品として、「Veeam Availability Suite v9」を提供している。同製品により、VMware vSphere/Microsoft Hyper-Vによる仮想環境やストレージ、サーバ上のデータ保護と管理に必要な機能を提供し、15分未満のRTPO (復旧目標とする時間およびポイント) を提供する。

ティマシェフ氏によると、同社の製品は主にサーバ、ストレージ、ハイパーコンバージド・インフラによるデータセンターのモダナイゼーションのプロジェクトの一部として採用されているという。「企業は今、迅速にサービスを提供すること、新たな市場を作ることを目指し、データセンターのモダナイゼーションを図っています」と、同氏。

旧来のアーキテクチャやハードに基づく、レガシーなデータセンターでは、変化が目まぐるしいビジネスの変化についていくことが難しく、スピードやイノベーションが求められる企業のITインフラに対する要求にこたえることができない。

実のところ、同社の製品はパートナーであるクライムによって2009年より、国内で導入が始まっている。導入企業はすでに500社に達したことから、ティマシェフ氏は「クリティカルマスに達した。もっと成功を加速させたい」ということで、日本市場への本格参入に踏み切ったという。

さらに、ティマシェフ氏は、日本に同社のビジネスチャンスが潜在していると考える要因として、日本における仮想化の普及を挙げる。物理サーバと仮想サーバの比率が、世界市場は4対6であるのに対し、日本は3対7であり、同氏は「日本は世界で最も仮想化の導入が進んでいる国」と語る。

ご存じのとおり、仮想環境のデータを保護するには物理環境とは異なった手法をとる必要があり、パフォーマンス維持や災害対策など、さまざまな観点から仮想環境の保護が求められている。同社の製品はこうした高度なニーズに応えることが可能だ。

企業の規模によって変えるメッセージの出し方

同社の販売戦略は基本的に、中堅規模の企業まではリセラーがユーザーに販売し、大規模企業は同社が販売するという形態をとっており、さまざまなベンダーとアライアンスを結んでいる。

例えば、グローバルのアライアンス・パートナーには、ヴイエムウェア、マイクロソフト、シスコシステムズ、HPE、ネットアップ、EMCが名を連ねる。ティマシェフ氏によると、これらのパートナーが開催する各国のイベントに協賛するなどのマーケティング活動を行っているという。

また、「日本は特別な市場」としたうえで、日立製作所、富士通、NTTといった国内の大手ベンダーが提供する包括的なソリューションに同社の製品が採用されるよう、取り組んでいるとした。

このようにリセラー販売を基本的な戦略としている一方、企業規模によってメッセージを出す対象は変えていると、ティマシェフ氏は話す。

「バックアップおよびリカバリー製品を提供していた当初は、企業でヴイエムウェア製品の管理を担当しているアドミニストレーターをターゲットとしていました。しかし今は、中小・中堅規模の企業に対しては技術関連のメッセージを、大規模企業に対しては技術とビジネスの双方に関するメッセージを発信しています」

ティマシェフ氏は、大規模企業では、データセンターに関して、技術的な面で責任を負っている人たちとビジネスの課題を解決するためにモダナイゼーションに取り組む人たちがいるため、分けてメッセージを出しているという。

最後に、日本企業に対するメッセージをうかがったところ、次のような答えが返ってきた。

「われわれは日本市場にコミットしています。そのために、大越氏をはじめとする素晴らしいチームを日本に用意しました。われわれの製品を使うことで、Veeam Softwareは日本企業からきっと感謝してもらえると思っています」

ビッグデータやIoT技術の活用により、企業にとってデータの重要性は増す一方である。データのバックアップとリカバリーに加えて、可用性(Availability)の重要性を実現する同社の製品は、企業のデータ活用における信頼性を高めてくれるだろう。