いよいよ、平成27年分の確定申告が始まる。来年からはマイナンバーの記載が必要になるなど、慌ただしくなりそうだ。

事業者向けのクラウド会計サービス「MFクラウド」を提供するマネーフォワードは、確定申告に関する今年のトレンドや、手続きの負担を減らす会計サービス、税理士から見たポイントに関する勉強会を開催した。今回は、その内容をお届けしよう。

勉強会の風景

2016年確定申告のトレンド

マネーフォワードによれば、今年の確定申告のトレンドは「フリーランス市場の拡大」と「女性の働き方の変化」である。現在の日本国内における労働人口が6463万人であるのに対し、副業を含む広義のフリーランス人口は1228万人と、約2割にも達したという調査結果がある(ランサーズ『フリーランス実態調査』より)。また、マネーフォワードの確定申告調査では、女性が確定申告を行う理由の中で「自営業・個人事業主の事業所得があった」という答えが最も多かった。これらの結果は、フリーランス人口の増加と、その中でも特に個人で事業展開をする女性が増えていることを示唆している。

フリーランスや個人事業主が増加するということは、初めて確定申告をする人が増加するということだ。マネーフォワードが調査した「初めての確定申告をする人が陥りやすいミスのトップ3」は「すべての領収書を経費に含めてしまう」「領収書やレシートの保管を怠る」「自分が確定申告すべきかどうか分からない」である。さらに、確定申告のどの作業に煩わしさを感じるかについては、「申告書の作成」「領収書や請求書の保管・整理」「経費の入力作業」が多いという。これらは、確定申告の経験者ならば誰しも共感を覚えるのではないだろうか。領収書や請求書といった書類の束を整理し、数字を管理していくことは、多くの確定申告者にとって悩みのタネである。

確定申告の手間を減らすには?

日本とは違い、アメリカでは所得のあるすべての個人が確定申告するように義務付けられている。そのため、作業を効率化させるクラウドサービスと電子申請の利用が進んでいるという。マネーフォワードによれば、クラウドサービスの利用率は日本の1.5%に対し、アメリカでは28%にも上るそうだ。

こうした状況の中、同社は「MFクラウド」によって、日本に新しい確定申告を提案する。同サービスはネットバンキングなどとデータを連携することで、銀行口座やクレジットカード、電子マネーといった取引情報を自動で取得することができる。スマホで領収書を撮影し写真を送ることで、数値の代行入力も行われる。

さらに、取得した情報に対応して勘定科目を自動提案してくれる。例えば、通販の購入履歴からペットボトルの水を購入した記録を見つけると、その経費を「福利厚生費」や「会議費」へと自動的に仕訳してくれるのだ。もし勘定科目が間違っているなら、訂正すればその仕訳ルールを学習していく。

つまり、「MFクラウド」は確定申告の全自動化を可能にするというわけだ。領収書を集め、保管し、手で入力して計算するといった確定申告における煩わしい作業のほとんどが不必要になる。

2014年1月にサービスを開始した「MFクラウド」は40万ユーザーを突破し、1900を超える会計事務所においても利用されているという。同社の調査では、同サービスの利用により、確定申告の準備にかかる時間が平均7.4日から1.6日に短縮されたそうだ。

「今後はクラウドサービスの活用が当たり前になる」と、税理士の木村行宏氏は言う。木村氏の事務所では、1年前から「MFクラウド」の利用を始めた。それまで月次決算に3日かかっていたところが1日で済むようになるなど、大きな効果を上げているそうだ。

確定申告における注意点

G.S.ブレインズ 代表社員税理士 木村行宏氏

木村氏によると、今年度、確定申告するにあたって最も注意すべきことは、「ふるさと納税の扱い」だという。

ふるさと納税とは自治体への寄附金のことであり、寄付額に応じて住民税が還付・控除される。平成27年4月からは、確定申告をせずにふるさと納税のメリットを受けられる制度が始まったが、寄付さえすれば手続きをしなくても良いという勘違いがあるそうだ。

「実際には、ふるさと納税をした時に各自治体に届出を出しておかなければなりません。もしこれを忘れてしまったら、確定申告の際にふるさと納税の証明書を持っていけば税務署でやり方を教えてくれます」

また、今年の1月から運用が始まった「マイナンバー」については、今年の申告には関係無いとのことだった。

「今後もきちんと確定申告をしていれば、マイナンバーによる影響は特に無いでしょう。ただし、申告していない人はマイナンバーによって所得隠しが見つかる可能性が高まります。当たり前のことですが、正しく確定申告をすることが大切です」

*  *  *

確定申告の準備を気重く感じる人は、まだエクセルで書類を作成している事が多いのではないだろうか。今は「MFクラウド」に限らず、各社からさまざまな会計サービスが提供されている。厄介な作業からお別れするために、まずはそれぞれのお試し版を利用するところから始めてみてはいかがだろう。