日本サイプレスは11月18日より20日までの期間、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜にて開催されている組み込み技術に関する展示会「Embedded Technology 2015(ET 2015)/IoT Technology 2015」において、チューブ入り香辛料をピアノの鍵盤と化した一風変わったデモ展示を行っている。

ET 2015における日本サイプレスのブースの様子

これは同社のセンサベースシステムに必要な機能を1チップで実現したプログラマブルSoC「PSoC 4 BLE」を用いたデモで、ボード上から伸ばした静電容量方式タッチセンサの電極(電線)を、無数のチューブ入り香辛料に挿したもの。各チューブ容器はタブレット上に表示されたピアノの鍵盤と連動しており、手を近づけると、その鍵が押されたとみなされ、割り当てられた音がなるというもの。担当者によると、米国本社からは、果物に電極を指してデモをやったらどうか、という話が来ていたが、それでは目新しさも面白さもない、ということから、チューブ入り香辛料に白羽の矢が立てられたそうだ。

「PSoC 4 BLE」を搭載したボードから出ているビニル電線の先には複数のチューブ入り香辛料がつなげられている。かといって、別段この中にセンサを入れているわけではなく、単なる電線の先端が入っているだけなのだが、手を近づけると、割り当てられた音階がキッチリと鳴る。1個だけリンゴにつなげられているのは「フルーツ楽器デモ」と銘打たれていることに対する配慮といったところか

1円玉以下のサイズでBLEソリューションを実現する同社のEZ-BLE PSoC/PRoCモジュール

また、このほか、Industry 4.0の実現に向けたFM4マイコンファミリを用いたセキュアゲートウェイソリューションや、未発表である「PSoC 4Lシリーズ」を用いたタッチセンサのデモ、指紋認証のターンキーソリューション「TrueTouch指紋リーダー」なども展示されている。このPSoC 4Lを用いたデモはIH調理器のスライダと静電容量ボタンを制御できます、というものなのだが、さすがに未発表品なだけあり、開発ボードやチップの展示はなく、IH調理器とチップ概要ならびにデモのブロック図を説明したパネルのみとなっている。

デモだけ見ると、ただのIH調理器を用いたタッチセンサソリューションに見えるのだが、中で稼働しているのは未発表のPSoC 4L。デモの説明パネルにはPSoC 4Lの文字はあるが、未発表という記載はない

一方のセキュアゲートウェイソリューションのデモは、モータの振動を加速度センサで分析、そのセンシングデータをデータベース化し、ゲートウェイとクラウド間でセキュアネットワーク経由で常時データを同期させ、振動が大きくなってきたときにメンテナンスのアラートを発行し、予防保全に役立てよう、といったもの。具体的にはインダストリアルネットワークに対応したFM4マイコン1チップで、クライアント側の処理を実現できることを示すものとなっている。

セキュアゲートウェイソリューションのデモ。左のモータは古くなり、振動が激しくなってきたもの、右のモータは新品で、振動はあまり起きていないもの、となっており、それらの振動を加速度センサで計測。得られたセンサデータをマイコンボード上でデータベース化し、常時監視を行い、それを予防保全に活かそうというものとなっている。右のグラフは2つのモータのX軸とY軸の値を示したもの。古い方はバラつきが大きいことが見て取れる

なお、同社は2015年6月にTrueTouchモバイルタッチスクリーン事業をParade Technologiesに売却すると発表しているが、TrueTouch指紋リーダーは売却対象に含まれておらず、継続してCypressより提供を行っていくという。

スマートフォンに使われているTrueTouch指紋リーダーのデモ。デモでは、モックのスマートフォンのボタン部分に指紋リーダーを搭載し、そこを触れると、指紋が認識される、という様子を見ることができる