部門トップが語ったルネサスの自動車戦略の方向性

さて、今回のDevConにおける自動車関連向けのトピックスとしてADASを前面に打ち出した同社だが、もう少し広範に自動車関連の話題について同社のAmrit Vivekanand氏(Vice President, Automotive Unit)にお話を伺う機会を得たので、その内容をお伝えしたい。

――基調講演ではADASなどについてのみ紹介がありましたが、もともとルネサスはボディコントロールなどに大きなマーケットシェアを持っていたと理解しています。まずはこのあたりをご説明いただければと思います

Amrit Vivekanand氏(以降、敬称略。Amritと表記):元々、「Automotive Deep Embedded」、つまりボディ/シャシー/セーフティといった分野に非常に強いシェアを確保しており、このビジネスは極めて安定している。ただ、今我々は、もっとビジネスを成長させたいと思っている。コックピット/インフォテインメントや、ある種のADAS、HUDなどであり、これは従来のDeep Embeddedとは異なる部分だ。現在、自動車業界は従来型のコックピットから新しいコックピットへの変化の時期を迎えており、ここに我々の(ビジネスの)成長の余地がある。キーポイントは、ルネサスがDeep Embeddedを手がける事で、さまざまなノウハウを獲得している事だ。こうしたノウハウをSoCに盛り込む事で、インフォテインメントのマーケットにおいても良いポジションにつけることができる。これが我々のアドバンテージであり、ノウハウを新しいマーケットでも生かせると考えている。

――米国ではかつてトヨタがアクセルペダルに関する訴訟の中で、ECUのプログラミング方法にまで言及されるようになり、このあたりも契機になりECUを従来型の開発からモデルベースなど機能安全に留意した作り方になるようにどんどん変わっていったと記憶しているのですが?

Amrit:その通り。2000年のはじめ頃だと思うが、その頃はそもそも機能安全の基準そのものがなかった。そのため自動車メーカーは各々独自に標準化を行っていた。ISO26262はここ数年の話で、一般に標準の策定から、それに対応した車が市場に出るまで数年はかかる。この10年の間は、機能安全に関してさまざまな技術が導入されてきたが、ここ最近は主にソフトウェアに注目が集まっている。

――現在、さまざまな半導体メーカーがまさにそこを狙ってきています。例えばTIはCortex-RベースのSafeTIというソリューションを持ち込んできていますし、STMicroelectronicsもCortex-Rベースの製品を計画しています。FreescaleはPowerPCベースですが、もちろん、このマーケットに強力にアドレスしてます。こうした競合にどう対抗していかれるのでしょう?

Amrit:答えは2つある。1つはCPUパフォーマンスだ。スループット/mWとスループット/MHz、非常にシンプルに比較できる。ここでは我々のRXは非常に強力だ。これに比べると、機能安全(Functional Safety)はCPUコアほど判断は簡単では無い。これにはチップのさまざまな要素が関連してくる。信頼性はこうしたものに依存する。この観点で言えば、新たなアーキテクチャは大きな変更になる訳で、必ずしも良いとは言いがたい。もちろん我々は顧客の要望に合わせる形で製品をリリースしているし、もちろん機能安全にもフォーカスしているが、これはチップの内部すべてに関係してくる。アドレスバス、メモリコントローラ、セルフテスト、etc…。これらはCPUコアとは独立している話だ。それに(我々のコアは)省電力だしね。

――もう1つ。アメリカにおけるルネサスのボディコントロールのマーケットシェアはどの程度か、教えていただけないでしょうか?

Amrit:それに答えるのは中々難しい。我々の重点顧客はTier 1だ。ContinentalやDelphiなどが挙げられる。私の立場から言えば、米国のビジネスは非常に順調だ。ただ、Tier 1はグローバルだからね。