デジタル一眼レフカメラなど、コンシューマー向けカメラでは認知度が高いキヤノンが、現在成長市場である法人向けネットワークカメラ分野に注力している。一眼レフカメラのレンズ技術や画像処理技術を注ぎ込んだ高性能さと、そのカメラを活かすソリューション展開を武器に市場に乗り出した状態だ。
そこで、東京品川のキヤノンマーケティングジャパンを訪問し、キヤノンの最新のネットワークカメラの機能を取材した。
キヤノンは最新機種として、2015年5月に9機種を投入。中でも注目製品が、同社初となる360度旋回可能な屋外向けモデル「VB-R11VE/VB-R10VE」だ。
2つのモデルは外観が共通しているが「VB-R10VE」が純粋に映像の撮影を行うネットワークカメラであるのに対して、「VB-R11VE」は音声入出力端子や外部デバイス入出力端子などを備えており、外部機器と連携させてさまざまな使い方ができるようになっているのが特徴だ。
屋外でのハードな利用も想定した360度旋回可能な「VB-R11VE」
取材時は、出荷前ということでデモンストレーションに用意された「VB-R11VE」は、テーブル上に据え付けたアームに取り付けられていた。本体サイズは下向きの傘が始まる部分から透明なドームの先端までで290mmで、直径が229mm。間近に見ると意外に大きいが、通常は屋外の街灯があるあたりや、建物の上部等に取り付けられるものであるため、設置された実物を見る時にはかなり小さく感じられるはずだ。
耐衝撃性はIK10、防塵防水性はIP66と、屋外で安全に利用できる作りになっている。氷点下50~55度になる寒冷地での利用にも耐えられる。光学30倍、デジタル20倍のズーム機能を持っており、かなり広い場所に対しても対応可能だ。
透明ドームの中ではカメラが360度旋回することで、横方向360度の撮影を実現。縦方向は180度の移動が可能となっており、1台で広範囲の撮影が行える。回転速度は1秒あたり450度と高速で、見たい場所への移動や追尾がスムーズに行えるようになっている。
カメラ内映像処理や簡易な制御でリアルタイム活用
こうしたハードウェア的なスペックはカタログからも読み取ることが可能だが、実際に動く様子を見ると実感できるのがソフトウェア面だ。
回転撮影をリアルタイムに制御して見たい場所を見る方法が「マウスで見たい場所をクリックする」、「マウスで見たい方向へドラッグする」という非常に簡単なものとなっており、特にドラッグ移動は「画面上に短い線を引けば低速、長い線を引けば高速」とリアルタイムに動いてくれる。特定部分をズームしたい場合には、マウスを斜めに動かしてエリアを選択するだけでよく、誰にでも簡単に操作可能だ。
廊下の奥から手前へ動いた人がカメラ下を通り抜けて移動して行く動きを追う(180度オートフリップ)時には自動的にカメラ下を通過する時に映像表示を上下反転させるなど利用者の利便性も考えられている。
また暗い場所でも、0.03ルクスまでカラー撮影が可能で、ナイトモードの白黒撮影時ならば0.002ルクスというほとんど暗闇といえるような環境でも撮影できる。暗所撮影時でも白飛びを抑えるなどして見やすい映像を実現している。
「VB-R11VE」/「VB-R10VE」は、1.3Mピクセルの高感度CMOSセンサーなどにより、カラー撮影時には0.03ルクス、ナイトモードでの白黒撮影時には0.002ルクスの暗い環境での撮影が可能(画像は0.001ルクスの暗い環境での撮影が可能な「VB-M741LE」のもの) |
さらに画像に対して暗部を明るくし、露出の最適化を行なう「オートSSC機能」を搭載したことで、逆光環境にも対応。屋外撮影で問題になりがちな霧やかすみ、スモッグが発生している環境でもコントラストを補正して視認性を向上させる「かすみ補正」機能なども持っている。
特徴的なのは、こうした画像処理機能をカメラ内部に持っていることだ。ネットワークカメラの中にはとりあえず撮影してサーバへ送り、サーバ上でさまざまな処理を行なってからモニタリングソフトに戻すという方式をとっているものもある。しかしこの方式だと、伝送と処理の時間が発生してしまうため、リアルタイムにモニタリングしたいという需要には応えづらくなる。これをキヤノンはカメラ内で処理してしまうことで高速化、リアルタイムニーズに応えているのだ。