長野県の最南端にある下伊那郡天龍村。人口は7月末時点でわずか1444名、高齢化が進み高齢化率(65歳以上の割合)が57%と、地方の過疎化、そして少子高齢化という日本の課題を体現する自治体といえる。
関東目線で恐縮だが、東京から電車で約5時間という土地柄で、飯田線という長野県飯田市と愛知県豊橋市を繋ぐ路線は1時間に1本電車が来ればよく、村民の"足"はもっぱら車。飯田線は、住民の足としての存在感よりも"秘境駅が集う路線"として著名で、"秘境駅ランキング"なるものでは天龍村の中井侍駅をはじめ、5駅がランクインしている。
筆者は東京から新幹線のひかりで豊橋駅へ向かい、そこから天龍村の平岡駅へと向かったが、取材時間の都合上、前泊した上で朝6時発の電車に乗り、3時間弱かけて平岡駅に到着した。在来線で3時間はなかなかのものだが、景色の移り変わりは見ていて楽しいものがあった。秘境駅も噂に違わずの"秘境"っぷりで、こうした環境に足を運ぶことが好きな旅行好きな人には、ぜひ訪れてもらいたい路線といえるだろう。
天龍村と読みを同じくする一級河川の天竜川は多くのダムが設けられており、天龍村最大の集落である「平岡」にも、平岡ダムが設置されている。取材を行った8月下旬は天気がよく、川まで降りてみたが、水の透明度も高く、その自然豊かな地域の香りは都心ではなかなか嗅ぐことのない胸がすっきりするものだった。
村のトリビアで言えば、村の中に信号は一つもなく、車を停める物は踏切のみ。山間のため車道幅が狭く、地元の人でなければ対向できないような場所も多く見られた。特産品は、「ていざなす」と呼ばれる巨大ナスで、その大きさは一般的なナスの4、5倍はあった。村で数少ない飲食店のレストラン龍泉では、このていざなすを使った定食があり、人気のメニューだという。筆者はそれに並ぶ人気メニューのカツカレーを食べてしまったが、それは余談ということで。
もちろん、天龍村へ足を運んだ理由は観光レポートのためではない。冒頭の「日本の課題」を"解決"こそできないものの、いかに社会の負担とせずに「どのようにすれば住民が幸せに暮らせるか」という観点で努力した"ソリューション"がこの村には存在する。それが「おらのタブレット」だ。