多様化するモバイル決済で顧客を獲得する
Apple Payがすべてではないし、今後は利用率が下がって米国でも一定水準で落ち着くことになるのは日本での前例から想定済みだが、小売店舗が最初から決済手段を限定して顧客への門戸を閉ざしてしまうのは機会損失以外の何物でもない。
日本では決済手数料や投資負担からクレジットカード導入を避けている小売店はまだ多いが、一方で外国人観光客を多数受け入れている店舗や地域では、クレジットカードを導入してその決済比率が増えている現象も見られるなど、小売店側がターゲットとなる顧客や利用スタイルを見据えて適時最適な決済手段を検討することが重要になってくる。
ゆえに自前技術普及を優先して加盟店全体で決済手段を縛ってしまうMCXの方策は、あまり賢い選択ではないとも考える。どちらかといえば、CurrentCの優位性をアピールして市場で選択してもらうほうが、決済手段の多様化する現在においては正しい方策に思える。
WSJによれば、MCXの設立当初こそはこうした加盟店間での「競合サービス排除」の申し合わせが行われていたものの、これは今週中にも解除されるとの見通しだ。実際、MCXでは競合サービス排除の申し合わせは間もなく解除するとのことで、それは理にかなった選択だろう。Best Buyは年内にもApple Payの受け入れを開始するほか、Rite Aidは8月15日にもNFC系の決済技術受け入れを開始する予定だという。
9 to 5 Macによれば、前述CVSも検討を始めているとのことで、7-ElevenのようにそもそもNFC非対応の決済ターミナルを導入しているケースでもない限り、Apple Payのような技術はMCX加盟店内でそう遠くない将来に広く利用可能になるとみられる。
またモバイル決済というとリアル店舗での対面決済技術(NFC、QRコード、Samsung PayのMSTなど)に注目が集まりがちだが、最近ではUberのようにサービスを利用した時点ですでにアプリ内決済が完了しているといった仕組みも拡大している。従来の決済体験だけでなく、モバイル決済においてはマーケティングも含めてより広い視点での端末やサービスの提供手段を検討していく必要があるだろう。