グランプリ(GP)シリーズのアサインがISU(国際スケート連盟)から先日発表され、浅田真央選手の本格復帰が話題になったことを記憶されている方も多いでしょう。
ただ、昨シーズンは、シニア移行1年目の本郷理華選手のGPファイナル出場や、宮原知子選手の世界選手権銀メダル獲得など、高校生以下の選手の飛躍的な活躍が目立ったシーズンでした。また、世界ジュニア選手権では出場者3名全員が初出場と、新たなスター誕生を予感された方もいらっしゃったのではないでしょうか。
そこで今回は、GPシリーズに何度も出場している選手ではなく、同シリーズの初出場選手やジュニアの注目選手など、若手スケーターを中心にご紹介したいと思います。
長身を生かした演技が光る永井と努力が実った中塩
現段階で2015-2016シーズンにGPシリーズ初参戦となるのは、永井優香選手と中塩美悠選手です。まずはこの2人の注目株について触れておきましょう。
永井選手は長身を生かした演技が魅力的ですが、3回転ルッツ-3回転トゥーループなど、難易度の高いジャンプも得意としており、昨シーズンはジュニアGPファイナルに初出場しました。活躍の勢いは止まらず、全日本ジュニア選手権では3位、推薦で出場した全日本選手権では4位に入りました。
その結果、四大陸選手権・世界ジュニア選手権の代表選手に初選出されました。初めてのシニアの国際大会となる四大陸選手権では、フリーで自己ベストを更新するなど、今後のさらなる飛躍を期待させる結果を残しています。
広島県出身の中塩選手は、リンク環境に苦労したことも多かったと思いますが、長年の努力が実り、昨シーズンはジュニアGPシリーズに初参戦することができました。しかも、2戦出場したうちの1つである「タリン杯」で優勝し、見事ファイナルに進出。シーズン最後に行われた初のシニアの国際大会「トリグラフトロフィー」でも優勝を飾りました。中塩選手も今後の活躍が楽しみな結果を残しています。
樋口新葉と坂本花織のジュニア組にも期待
ジュニアの選手では、樋口新葉選手と坂本花織選手に要注目です。樋口選手は昨年の全日本選手権で3位に入賞して新人賞を獲得、世界ジュニア選手権の代表にもなりました。坂本選手も世界ジュニア選手権初出場を果たしました。2人共ピッチの速いジャンプが持ち味で、樋口選手はスピードのあるダイナミックな演技が、坂本選手はエレガントさを持ち合わせた演技が魅力なのではと私は感じています。
2人は昨年の全日本ジュニア選手権での結果をもって、全日本選手権に推薦で出場しました。シニアの中に入っても動じない度胸を持ち合わせており、攻めの姿勢も強いです。新シーズンではどんな成長ぶりが見られるのか、楽しみでもあります。
宮原知子の"後輩たち"に注目
また、昨シーズンはノービスでしたが、今シーズンからジュニアに上がる選手もいます。ぜひ注目してほしいのは、本田真凛選手と白岩優奈選手です。2人とも宮原選手と同じ濱田美栄コーチに師事しており、難しい種類の3回転-3回転もすでに習得済みです。「宮原選手の背中をずっと間近で見てきた結果なのかな」と感じさせられる部分も、いくつかあります。ジュニア移行1年目のシーズンでどれだけの活躍をしてくれるのか、楽しみです。
昨年の全日本ノービスで優勝した青木祐奈選手にも注目です。青木選手も難しい種類の3回転-3回転の大技をすでに取得していますが、それに加え、優雅なスケーティングも魅力的です。つま先まで意識が行き届いて、一つひとつのポジションもきれいですし、ひと蹴りで滑る距離が長くスピードも落ちないため、流れるような演技をする印象です。
今回は若手スケーターに注目をしてみましたが、飛躍を期待できる選手は紹介しきれないほどまだたくさんいます。9月下旬から各地方で全日本選手権(ジュニア・ノービス含む)への予選が始まりますが、昨年の全日本選手権(ジュニア含む)で3位までに入った選手以外は全員が出場する大会になります。
こういった試合も観戦して、「次はこの選手が活躍するかもしれない」と次のニュースター候補を探すことも、フィギュアスケートの楽しみの一つですよ。
写真と本文は関係ありません
筆者プロフィール: 澤田亜紀(さわだ あき)
1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。