3つ目が「可視化」。自動車向けとしては、まずConsole/Infortaiment向けにR-Carのプラットフォームがスケーラブルに適用できること(Photo21)を示し、さらに将来ロードマップの一端を公開した(Photo22)。ここに出てくる「R-Car V2H」そのものは2014年8月に発表されているから、機能そのものには目新しさはないのだが、講演の中ではむしろソフトウェア開発環境の充実を強調する形で説明が行われた。

Photo21:もちろんR-CarはConsole/Infortaiment向けだけの製品ではないが、可視化ということでまずはこの形で示したのだろう

Photo22:こちらのロードマップにはPhoto21にはなかったADAS向けの映像処理製品も含まれる。流石にGeneration 3の詳細は今回は明らかにはされなかった

Photo23:機能そのものはルネサスが提供するとしても、それを使って実車にシステムとして搭載するのは自動車メーカーあるいはTier 1の仕事であり、なのでどれだけ使いやすいAPIというかライブラリを提供するかが鍵になる。そのあたりを強調した説明であった

こうした映像処理はR-Carが先行した形になるが、これを産業あるいは民生分野向けにフィードバックしたのが先月発表された「RZ/Gシリーズ」である(Photo24)。こちらもラインアップが充実していることをアピールし(Photo25)、さらにそのアプリケーション環境を紹介するなど、力の入ったものになった。この分野ではルネサスはやや出遅れた感が無くもないので、これを巻き返すべく力を入れていることがよく判る内容であった。

Photo24:パートナーの中には、R-Carシリーズの製品を民生機器向けに転用している例などあり、こうした「高いグラフィック性能」を必要とする用途向けの製品と居得る

Photo25:流石に製品が出たばかりなので、将来ロードマップなどは今回は未掲載である。ただ、CPUコアとかGPUコアの構成を考えると今後の展開は容易に想像できる

Photo26:遅ればせながらというわけでもないだろうが、HTML5をベースとしたスキームをBSPレベルから整え終わったことが説明された

講演の最後は、同社はパートナー企業と共にWin-Winの関係を築いてゆきたいというもので、その1つの実例として示されたのが「GRリファレンス」というのは多分に高橋氏の趣味な気はする(Photo27)が、判りやすい話でもある。同社はすでに900社以上のパートナー企業と提携しており、これらの企業なしではルネサスは成立し得ない、とアピールした。普通だとこれで講演の締めとなるところだが、ESECを意識してか最後に「すべては組み込みから始まった」と、PCやサーバ、携帯電話やデジタル家電などが元々は組み込みから始まった事に言及、最後にGRボードを使ったNECのTK80のエミュレータを紹介するあたりは多分にESECを意識してのことであろう。

Photo27:展示会場でもGRリファレンスボードが貼り付けてあった

Photo28:ちなみにこのGR-SAKURAを使ってのTK80のエミュレータはがじぇるねの作品である