企業のセキュリティを守り、ワークスタイルを変革するコラボレーションツール「Box」
近年、さまざまなオンラインファイル共有サービスが登場しているが、その大半は個人向けをベースとしている。共有機能などもリリース後から機能追加されたものが多く、企業での利用を考えると、どうしても物足りなさを感じてしまう。こうした中で注目されているのが、企業向けに特化したクラウドサービス「Box」だ。
Box Japan 代表取締役社長の古市克典氏は「Boxは、単なるクラウドストレージという枠を超え、企業のセキュリティを守り、ワークスタイルを変革するコラボレーションツールです」と語る。
北米市場で実績を積み上げた「Box」が、去年5月に日本での事業展開を発表してから、国内で既に数百社がBoxを導入している。代表的な利用用途は下記の通り。
① 安全なファイル交換手段として(メール添付の廃止)
② 社内外メンバーによるプロジェクト資料共有ツールとして
③ お客様訪問時、出張時の膨大な社内資料アクセス手段として
④ 仮想デスクトップ(シンクライアント)の馴染みやすい導入手段として
⑤ 業務フローの自動化ツールとして
⑥ 膨大な非構造化データを蓄積しビッグデータ解析によりイノベーションを起こすツールとして
⑦ 会社の合併や分割時、オフィス移転時にすぐ使えるITツールとして
⑧ ファイルサーバーの代わりとして
これまでのクラウドストレージでは、ファイルの同期・共有やモバイルサポート、セキュアに利用できる共有リンクなどが機能の中心だった。Boxはこれらに加えて、ドキュメント管理を含むコラボレーション、ワークフロー、高度なセキュリティなど、企業のコンテンツプラットフォームとしての機能を備えている。それでは実際に、Boxがどのような機能を有するのか見ていこう。
世界27.5万社の導入実績が裏付ける充実した機能
Boxを構成する柱となっているのが、「コラボレーション」「ワークフロー」「セキュリティ」「コンテンツプラットフォーム」という4つの要素だ。
まず初めに「コラボレーション」は、場所、容量、組織境界、デバイスといった様々な制約から解放され、ユーザーがファイルを共有・編集できることを意味している。たとえば、アプリケーションソフトウェアをインストールしていないデバイスからでも120種類以上ものファイル内容を閲覧できるプレビュー機能(3Dファイルや医療用画像DICOMファイルにも対応)、複数人での作業に便利なファイル単位のコメント機能などを搭載している。
Boxのファイル検索機能は、フルテキスト検索により、細かいフォルダ分けを行っていなくても、膨大な資料の中から瞬時に目的のファイルを見つけ出せる。つまり、社内外の関係者が作成した資料をキーワード検索で見つけ活用できるのである。容量無制限で利用できることも手伝って、組織知の集積と活用が飛躍的に向上する。
2つめは 「ワークフロー」。Boxではファイル名や日付だけでなく、さまざまなコンテキスト(契約書の満期日や金額、静止画のタイトルや色、動画の登場人物や所要時間など)をメタデータとしてファイルに紐付けることが可能。入力項目も自由に設定できるので、業界・業種を問わず活用できる。例えば、“100万円以上の契約書で、契約期限が1ヶ月以内に迫ったものは、まず課長に連絡し、続いて部長が確認。部長の承認を経た後に「承認済みフォルダ」に移動し、関係者全員に更新のお知らせメールを送る”──こうした一連のフローが自動化できる。また、人手を介さずコンテンツに応じた分類やレコメンドが行える自己学習技術も備えている。
3つめの、企業利用で非常に重要視される”セキュリティ”に関しては、多層暗号化(転送時:SSL/TLS、保管時:256ビットAES)は当然備えており、高度な認証機能やデバイスの安全性確認、7段階の権限レベル設定、すべての履歴を記録するログ管理、IRM(Information Rights Management)、詳細なレポートと監査証跡なども備えている。米国のHIPAA法をはじめ世界水準のコンプライアンス・セキュリティ基準に準拠しているのも、グローバルビジネスを展開する企業にとって魅力的だ。また、最高レベルのセキュリティを求める企業には、Box Enterprise Key Management (EKM)という、顧客自身が暗号化キーを管理できるサービスも提供している。
最後に、4つめの「コンテンツプラットフォーム」については、APIを通じてOffice 365やSalesforceなどさまざまなシステムと連携できるのが魅力である。ActiveDirectoryやLDAPによるシングルサインオンはもちろん、「Box Embed」を使えば各種アプリケーションとBoxのフォルダやファイルを簡単に統合することも可能だ。ユーザーはまるでBoxがそれらアプリケーションの専用ファイル保管スペースのような感覚で自然に使用することができる。さらに1,200種類以上のモバイルアプリを含むエコシステム「Box Partner Program」や独自のアプリケーションを効率良く開発できる開発キット(SDK)の提供も行っている。
Boxは、これら4つの機能を通じて、企業におけるセキュリティと生産性の向上を同時に実現してくれる。現在、Boxのユーザー企業数は世界で27.5万社を超え、ユーザー数は3200万人以上。米国の売上高上位500社で構成される「Fortune500」の99%が利用しているという実績からも、その実力が伺えるだろう。
ITにより高度なセキュリティと生産性向上を実現
古市氏は、総務省「平成25年度版 情報通信白書」のデータを挙げて「米国では70.6%の企業がクラウドサービスを導入しているのに対して、日本ではまだ42.7%しかありません。これは大半がクラウドに対するセキュリティ面の不安に起因するものです。しかし、オンプレミス環境のファイルサーバは本当に安全なのでしょうか」と問いかける。
オンプレミス環境の場合は当然ながらセキュリティ関連の整備をすべて自社で行うことになるが、クラウドサービス提供企業並みの技術力と予算を持つ企業は少ないだろう。 また実際の業務においても、たとえば社外へファイルをメール添付すると情報漏えいの危険が伴う。添付ファイルを暗号化しても、パスワードを自動送信すると情報漏えいのリスクは減らない。一方、クラウドならファイルへのリンクを送るだけで済み、ファイル自体はクラウドから動かない。モバイルデバイスの盗難・紛失時も、デバイス内にファイルが保存されていなければ被害が拡大することはない。
もちろん、すべてのクラウドサービスが安全というわけではない。様々な技術的課題を克服し、悪者ハッカーの標的攻撃を跳ね返さねばならない。ここで、事業開始の初期段階から企業向けサービスに注力しセキュリティ強化に継続的に取り組んできたBoxと他社との差が出てくる。他社が時々情報漏えいを起こすのに対し、Boxは高度なセキュリティを実現し、これがBoxの大きな差別化要因となっている。 さらに、Boxが提供する、いつ誰がどのファイルへアクセスし何をしたかといったログは他社サービスより格段と詳細に記録することが可能であり、それ自体が内部犯罪の抑止効果を生む。
また、クラウドサービスのメリットとして、高度なセキュリティを維持するためのコストは導入企業で分担となるため、自社のみで開発するよりもコストが大幅に抑えられるという側面もある。
さらに古市氏は「日本の生産性はOECD(経済協力開発機構)主要先進7カ国中、20年連続で最下位です。こうした状況を打破するには、BoxのようなITによる生産性向上が有効です。また、生産性に加えて、本業にイノベーションを起こすためにも、クラウド、モバイル、ソーシャルといった最新のITを日常業務で使いこなす必要があります。少し前はITは事務作業の効率化ツールでしたが、今やITは本業にデジタル革命といってもいいイノベーションをもたらせます。生き残りのために必須と言っていいかもしれません」と強調する。クラウド黎明期にある日本では、今こそITによる高度なセキュリティ、生産性向上、イノベーション促進が求められているのだ。
国内ベンダーとともに日本発のソリューションを世界に発信
Box Japanでは、国内のソフトウェアベンダー、システムインテグレーター、通信事業者などと積極的に連携していくと言う。
「日本のお客様、ベンダー様のレベルの高さは世界中を見渡しても抜きん出ています。国内ベンダー様と開発し、お客様に鍛えていただいたソリューションを世界に発信していきたいです。日本は市場としても、イノベーション創造の場としても超一流です」と、古市氏は力強く語った。
こうした状況下において、「Boxを使ってみたい」、「現在のオンラインファイル共有サービスに不安や課題を感じている」といった企業に朗報がある。Boxは6月17日に、渋谷ヒカリエホールで「Box World Tour - Tokyo」を開催する。当日は、Boxの共同創業者でありCEOを務めるアーロン・レヴィ氏が来日し、ビジネスを変える新たなワークスタイルについて語るほか、古市氏によるBoxの日本戦略とビジネスアップデート、SEディレクターの坂本真吾氏による新機能と製品ロードマップなども紹介される予定だ。さらに今回は、日本における最新のユーザー導入事例も多数公開されるので、これを機会にぜひBoxの魅力に触れていただきたい。