日本アイ・ビー・エムは14日都内で、「IBM MobileFirst for iOS」の記者説明会を開催した。昨年7月のIBMとアップルによる電撃的な提携が話題を集めたが、エンタープライズ向け製品ということもあって正体がわかりにくい部分もある。一体どのような製品なのだろうか。

iOSに最適化された業種別業務用アプリ群

MobileFirstは、IBMが提供する企業向けのモバイルアプリケーション製品群の総称だ。もう少し噛み砕くと、企業で業務に利用する専用システムを、スマートフォンやタブレットといったモバイル製品で活用するためのアプリやバックグラウンドシステム、分析システムなどを統合して提供するものとなっている。

これではますますわかりにくくなっただけという気がするので、具体例を見てみよう。

航空業界向けのアプリ「Passenger+」は、機内のキャビンアテンダントが使用するアプリだ。このアプリでは機内の空席状況や、どこに誰が座っているか、搭乗手続き時に何かクレームがなかったか(荷物の紛失など)、乗り継ぎがある客は誰で、どこに向かっているのか……といった情報が、すべてアプリ上で確認/処理できる。

搭乗便を選択すると、出発地と到着地、時間、搭乗便で発生している問題の件数などが簡潔に表示される。ちなみに航空業界は英語が標準語なのでアプリの日本語化はされていない

例えば乗り継ぎに関しては、到着後に間に合う飛行機の便が表示されるので、選択すると画面上に二次元バーコード付きのチケットが表示される。あとは機内のプリンターで印刷して渡すなり、客のスマートフォンにメール等で転送してもいい。運行情報は機内Wi-Fiと衛星通信システムで常にアップデートされており、最新の状況に合わせたチケットが選択できる。

また、乗客のクレーム処理については、窓口で受けた情報を元に、その客がどの席に座っていて、どのようなクレームを伝えてきたかがわかるので、迷わずすばやく対応できる。処理した内容についても、地上にすぐ伝えられるので、到着後に処理が必要な場合も顧客を待たせなくていいわけだ。

座席の場所が一目でわかり、問題の内容についても簡潔に表示される。伝達ミスなどによるトラブルを回避できるだけでなく、リアルタイムで処理が地上にも伝えられるのは大きなメリットだ

日本でもJALやANAのキャビンアテンダントがiPadを使っているが、基本的にスタンドアローンでネットには接続されておらず、機内マニュアルなど固定した情報を閲覧するに留まっている。これが常時アップデートされる情報に対応すれば、提供できるサービスの幅はもっと広がるはずだ。このシステムはすでにエアカナダで導入されており、国内でも現在交渉中ということなので、近い将来、日本の航空会社でも一層柔軟なサービスが受けられるようになるかもしれない。