サイバー攻撃は近年ますます巧妙になってきており、攻撃者は対策の隙を突き、ユーザーのシステムや端末に悪質なプログラムを潜ませるようになっている。攻撃側の地政学的な動機に加えて、データ主権やデータローカライゼーション、暗号化に関して各国の法規制が課す要件の食い違いが絡むことで、昨今のセキュリティ対策は国を越えてさらに複雑な様相を呈している。
シスコシステムズは3月10日、こうした現状を踏まえ、高度化するサイバー攻撃から組織や企業を守るサイバーセキュリティ対策の現状と、最新のセキュリティソリューションについて、報道関係者に向けた説明会を開催した。
ますます高度化するIoT時代のサイバー攻撃とその対策
企業は近年、セキュリティ対策への投資を強化しており、自社の策定したセキュリティ・ポリシーに多くの企業が自信を持っているという。一方で、実際にセキュリティ・ポリシーを運用していくうえではさまざまな困難があり、54%の企業が自社のシステムに公開されている脆弱性を引き続き抱えているという現実がある。
さらに端末に関して言えば、Internet of Things(IoT:モノのインターネット)が進化を続けており、「つながっている」ことが当たり前の環境になってきている。デジタルインフラの成長はさらに加速し、2015年で約250億、2020年には約500億のスマートオブジェクトがネットワークにつながった状態になると予想されている。さまざまなサービスや機能が提供され利便性が増す一方で、これらのすべてが攻撃の対象となってくるため、時代に沿ったセキュリティ対策を講じていくことが急務である。
こうした状況を踏まえて、シスコシステムズのセキュリティ事業部長 桜田仁隆氏は、今日のセキュリティ課題として、「急速に変革していくビジネスモデルへの追随」「新たな脅威への継続的な対応」「多様化する攻撃に対するさまざまな環境への適応」の3つを挙げた。また、「問題の本質を把握すること」「組織としてリスクを理解すること」「守るべき対象を明確にすること」「準拠すべき法令を理解していくこと」「どこに投資するべきか理解すること」といったサイバーセキュリティに関して重要となる5つの項目を挙げ、組織を上げてセキュリティ問題を解決していくことの必要性を説明した。
シスコが提言する新しいセキュリティモデルとその実現
そうしたなか、シスコシステムズは、セキュリティの整備・堅牢化から、攻撃者侵入の防御・検知、侵入を許した際の対応までを包括的にサポートする新しいセキュリティモデルとして「BEFORE DURING AFTER」を提案。このモデルをベースとした多層制御を実現するセキュリティ製品群を用意している。
BEFORE(整備・堅牢化)とAFTER(対応)のフェーズでは、ユーザーにとっての可視性を重視。セキュリティ・ポリシーの管理および制御プラットフォームである「Identity Services Engine(ISE)」を中心としたデバイスのネットワーク接続時点での状況を把握し、誰が何を使ってどこに行こうとしたのかを精査しつつ、マルウェアすらも見える化することで、次のセキュリティ投資に備えていくことができる。
DURING(防御・検知)のフェーズにおいては、できるだけ未知の脅威を把握するための仕組みが必要となる。シスコシステムズでは、メールセキュリティアプライアンス「ESA」、Webセキュリティアプライアンス「WSA」、次世代ファイアウォール製品である「ASA with FirePOWER Service」、サンドボックスの機能を備えたマルウェア解析アプライアンス「ThreatGRID」のハードウェアに加え、マルウェア防御ソリューション「AMP」などのクラウドベースのソリューションも提供している。ISEを含め、これらの製品を連携させることで、多層制御の実現が可能となる。
シスコシステムズ セキュリティ事業 テクニカルソリューションズアーキテクト 西原敏夫氏は、「こうしたさまざまなセキュリティ対策が1つの製品に集約されていればよいが、それは現実的に不可能。よって、複数の製品を併せて使っていくことになるが、管理の複雑さを軽減するために、できるだけプラットフォームをそろえ、単一の画面で管理できるような製品を開発していきたい」と述べた。