亡くなったSteve Jobs氏のプレゼンが素晴らしいという話は、その魅力を分析した本が出版されているほど周知の事実といえるだろう。
Jobs氏のプレゼンのポイントはいくつかあるが、そのうちの1つは「Jobs氏が挙げる要点は、必ず3つあった」といわれている。この「3」という数字は偶然の産物ではなく、「Rule of Three(3の法則)」に基づくものだという。
「3 is a magic number」(3は魔法の数字)と昔の歌にあるように、「3」は記憶するのにもちょうど良く、4つ以上になると覚えられずに混乱しやすいが、2つだと物足りない……そこで3なのだ。
スピーチでも、3つの言葉を並べた方が2つよりもかっこいいし、「決まった!」という達成感がある。古くはカエサルの「来た」「見た」「勝った」から、18世紀のフランス革命に由来する「自由」「平等」「博愛」、米国の独立宣言「生命」「自由」「幸福の追求」、リンカーンの「人民の、人民による、人民のための政治」といったように、3つの言葉が並ぶ例は枚挙に暇がない。
そしてJobs氏の例でいえば、2007年に「iPhone」を発表した時、Jobs氏はMac、iPodに続く3つ目の革新的なデバイスと述べた。それに加えて、「iPodと電話、インターネット通信デバイスの3つを盛り込んだ1つのデバイスとして『電話を再発明する』」と発言したのだ。
iPadの時も、iPhoneとMac、iPadの3つを並べたスライドを用意しているし、iPad 2を発表する際には、初代iPadより「薄く」「軽く」「高速」と3つの形容詞を並べた。
「3の法則」はビジネスでも応用できる。
BizShifts-Trendsの記事「3のルール、3のパワー(原題:Rule of Three, Power of Three)」では、作業タスク、目標などで3のルールを用い、意思決定を合理化できると説明している。
企業の3つの法則として、「価格競争の前に改善」「コスト削減より売上増」「それ以外にルールなし」という専門家の意見を紹介している。また、生存のための3の法則(3時間極寒、極暑状態にさらされたり、3日間水なしで過ごす、3週間食料なしだと生存に関わるなど)をビジネスに応用して、3時間、何らかのマーケティングがない状態では生き残れないとする向きもあるとか。これは、顧客の注意が続く時間は非常に短く、市場に向かって3時間おきに顧客を維持するような取り組みをしなければならないというものだ。ほかにも、ThinkTQのCEOを務めるEric Haas氏は「顧客獲得」「顧客の維持」「収益」としている。
このように「3」は何かと使える。3匹の子豚や3匹のクマなどの童話を覚えているだろうか? パターン認識は3番目から始まるので、物語風のコンテンツを作成する場合は、3つの要素を意識してみようもちろん、Jobs氏のようにプレゼンで意見や要点を述べたり、社内のミーティングで目標をかかげる際にも、3つの法則は活用できる。
いかがだろうか? 3がマジックナンバーになるのかどうかに、保証はない。だが、楽しみながら3の法則を取り入れてみる価値はありそうだ。