「人と人が紡ぎ合ってビジネスは初めて成り立つ」。テレビ会議システムの販売や保守・運用サービスなどを展開する、VTVジャパン株式会社 代表取締役 栢野正典氏の言葉だ。同社は人と人、企業と企業の関係を設計・最適化する「コミュニケーションをデザインする」を事業コンセプトに掲げ、新たなビジネスの可能性にチャレンジしている。
新たなイノベーションを創り出す「VTVジャパン」
VTVジャパン株式会社が設立したのは約20年前の1995年。ちょうど日本でもインターネット基盤が整備され始めた頃である。それまでのテレビ会議システムは、ISDN回線を主に用いていたが、2000年代に入るとインターネット回線を利用した専用デバイスだけでなく、PCを利用したWeb会議にも注目が集まるようになった。テレビ会議室のレンタルサービスから事業を始めた同社だが、今ではAvaya、Cisco Systems、Polycom、Lifesizeといった主要なテレビ会議メーカー製品の販売、システム提案、レンタル、保守・運用サービスまでトータルで行っているテレビ会議製品に特化した国内でも数少ないインテグレーターである。
代表取締役の栢野正典氏は、「企業は社会に属し、価値を提供するからこそ、それに見合った報酬を受けることができます。だからこそ我々は『コミュニケーションをデザインする』ことによって、社会的な価値を作り出していきたいと考えます」と同社の事業コンセプトを説明する。昨今、「"コミュニケーションの活性化"を唱える企業が増えていますが、テレビ会議システムを導入するだけで、本当に活性化するでしょうか」と述べる。
「会議の機会や回数が増えたところで、生産性の向上につながらなければ意味がありません。さらに社員同士や上下関係の間で認識の相違をまねかないため、共通認識の醸成が必要です」と、”コミュニケーションをデザインする”ことの目的を明らかにした。
企業経営を最適化するERP(Enterprise resource planning)やBPM(Business Process Management)パッケージなどの有効性は改めて述べるまでもない。だが、企業という大きな組織体の中で行われる営みには、それらだけでは最適化できないものも存在する。それは誰しもが感じることだろう。同社が目指しているのは、企業の中における人と人との間に存在する”コミュニケーション”というオブジェクトを最適化することなのだ。
ユーザーニーズを先取りしたソリューション構築
冒頭で述べたようにVTVジャパン株式会社は、主要なテレビ会議メーカー製品の販売、システム提案、保守などを行う企業である。栢野氏は「弊社は日本のテレビ会議市場にTandberg(現Cisco Systems)やaethra(現Avaya)などの優れた製品をいち早く紹介し、メーカーと協力して市場を立ち上げて来ました。その他にもVidyoのようなH.323以外の新しい技術にも着目し、国内へ展開してきました。また、システムの販売や保守だけでなく、UIを含めた周辺アプリケーションの開発やユーザーに合わせたサポートプランを作るなど、導入効果を最大化させるためのノウハウを積み上げてきました」と述べた。
VTVジャパン運営のPexip紹介製品サイト |
今年10月からは新しい技術として、Pexip ASのテレビ会議システム「Pexip Infinity(ペクシプ インフィニティ)」の販売を開始している。
国内での展開に当たりVTVジャパン株式会社はGUIの日本語化や日本語マニュアルの作成などのローカライズに加え、技術スタッフによる保守サービスも提供している。システムの特徴は、VMWare/Hyper-Vといった仮想マシン上で稼働するソフトウェアMCUである点と、H.323、ブラウザ(WebRTC実装)、LyncなどのUCクライアントと相互接続できる点にある。また、APIによる拡張性の高さや、1ライセンスからの契約可能なライセンス体系にもある。栢野氏は「MCUのようなハードウェアの増設を行わずに、ライセンスの追加だけでユーザーの増加にも柔軟に対応できます」とポートライセンスの優位性も強調している。
ポリコムやシスコなどのH.323/SIP対応のテレビ会議端末からモバイル端末やPC。そしてMicrosoft Lyncとの接続も可能なため、場所や端末を選ばないシームレスなテレビ会議を実現し、注目を浴びている「Pexip」。世界各国の大手企業や大学などで導入実績が増加しているソフトウェアMCUだ。 |
栢野氏が述べたようにVTVジャパン株式会社はテレビ会議に特化したノウハウを持っており、ユーザーニーズを先取りし、日本市場にフィットするように製品へ自社のノウハウを組み合わせて販売・保守を行ってきた実績があるのだ。同氏の言葉を借りれば「各ネットワーク製品を組み合わせて、新たなイノベーションを創り出す」企業といえるだろう。
日常的に実践するVTVジャパン内でのコミュニケーション
前述のように同社は、テレビ会議のソリューションを数多く展開している。同社のWebサイトには、テレビ会議システムやMCU(多地点接続装置)サーバーなどのハードウェアの情報から、テレビ会議の利便性を向上させる自社開発製品やASPサービス、保守・運用支援サービスまで、同社が提供する製品・サービスが数多く掲載されている。そんな同社自身も、日常的にコミュニケーションによる共通認識作りを実践している。
現在VTVジャパン株式会社は、テレビ会議システムだけでは埋まらないコミュニケーションの隙間を埋めるツールとして、社内SNSにも注目していることを話してくれた。従来はテレビ会議を含めた対面コミュニケーションを重視していたが、更にコミュニケーションツールの可能性を探るため、今年10月から社内SNSを実験的に導入した。コミュニケーションをカジュアル(社員同士の日常的な情報交流)からフォーマル(経営会議など)といったレイヤーに振り分け、まずはSNSによるカジュアルなレイヤーからのアプローチを始めたのだという。
栢野氏は「文章に書き残す習慣を付けることで、各社員の経験を共有するのが目的です」と説明しつつ、SNSに書き残したテキストデータが社内マニュアルや社内ガイドといった文書、もしくはナレッジベースを生み出すための材料になる。さらに同社は積極的な参加を促すために「個人/部署/プロジェクトグループ/(社員同士の)サークル」と4ジャンルのブログ(仮想会議室)を設けそれぞれに公開範囲を設定したのだという。
営業部営業企画室マネージャーの藤川直也氏は「カジュアルなコミュニケーションの土壌には、相手の人となりを理解しなければなりません。だからこそ顔を合わせた(テレビ会議システムとの)相乗効果を狙えると考えています。ユーザーの立場から見た場合、会議室に集まってアイデア出しに苦労するよりも、ひらめいた時にSNSへ記録し、その後反応が返ってくる"非同期な会議"として活用しています」と語る。
VTVジャパン マーケティング部の大川香織氏 |
同社マーケティング部の大川香織氏は、「部署内やプロジェクトチーム内で互いの考えていることが分かるようになりました。ちょっとした思いつきやひらめきなどのアイデアも、相手に伝えやすいので便利です」と効果のほどを教えてくれた。確かに社内SNS自体は珍しいものではない。だが、生産性の向上や企業価値を高めるツールとして使う場合、一定のルールが必要であることがよくわかる。
今後の社内での導入効果や運用実績を踏まえて、SNSとテレビ会議システムを融合させた製品の開発も検討していくという。"テレビ会議=会議室で行うもの"と思いがちだが、他のITツールと組み合わせることでテレビ会議システムの使用シーンが広がる可能性は、まだまだ数多く存在しているのだ。また、同社では自社でもテレビ会議システムを日常的に運用している。東京本社と大阪支社をつなぎ、日常業務や連絡をテレビ会議システム経由で行っている様子も見せてくれた。日頃からテレビ会議システムを使うからこそ、新しい視点が培われてくる。
VTVジャパンの東京本社側に設置されているテレビ会議システム。議題のある会議はもちろん、何気ないコミュニケーションでも活躍。取材時には、”おーい”と気さくなやりとりで大阪のチームに声を掛けるシーンも印象的だった。 |
他にもテレビ会議システムの活用方法として、「テレビ会議システムのログデータの分析による、グループ間連携の数値化があります。よくユーザーからは、導入による生産性の向上につながる指標が明確でないとのご指摘を受けますが、テレビ会議システムのログデータによって、支店間や部署間の接続頻度を把握し、それに業務分析を合わせることによって情報ルートや組織的距離感が明確になるのです」と今後の展望の一端を栢野氏は教えてくれた。栢野氏の目には、コミュニケーションをデザインするという明確なビジョンが映し出されている。
同社開発製品のテレビ会議端末操作タブレットソフト「EazyTouch」。タブレットを使っての軽快な操作で煩雑な操作になりがちなテレビ会議操作を制御し、画面レイアウトの切り替えやズームやパンといった操作が可能になる。大きなモニタに映し出されたテレビ会議画面をタブレット操作で制御するデモンストレーションは、圧巻。 |
VCスペシャリストや営業達が支えるプロフェッショナル意識
VTVジャパンのWebサイトに掲載されているVCスペシャリストの特設ページ。栢野社長を筆頭にVCスペシャリストたちのメッセージも掲載されている。 |
テレビ会議システムに特化し、新たなコミュニケーションをデザインするVTVジャパン株式会社は、栢野氏を筆頭に営業職に「VC(ビジュアルコミュニケーション)スペシャリスト」という呼称を用いている。「テレビ会議システムを通じて、お客様と相互的なコミュニケーションを行うには、営業担当者が深い知識を持たなくてはなりません。1人1人が『プロフェッショナル』であることを大事にしてきた結果、自然と根付きました」と栢野氏は説明する。
テレビ会議が多くの企業に既に導入・利用されている現在。既に導入しているテレビ会議システムが抱える課題の相談や、機能の拡張などの提案依頼も増えてきており、多様化する課題・ニーズに応えながら、顧客とともにシステムの構築をしていかなければならないのだ。
同社のWebサイトにはこのプロデューサーとも言えるVCスペシャリスト達も掲載されている。ここには、同社営業たちの熱い思いや苦労話、実際の導入実績の事例なども記載されている。厳しいネットワーク要件下での実地試験、テレビ会議システムと自社アプリケーションとの連携など、テレビ会議システムの奥深さの一端を垣間見ることができるだろう。
「コミュニケーションをデザイン」する - テレビ会議システムの"本当の力"で企業を変えてきたVTVジャパン 後編
VTVジャパンのテレビ会議ソリューション
コミュニケーションをデザインすることで企業の活性化を目指すVTVジャパン。導入から実際の活用方法までテレビ会議の本当の力を知り尽くす同社のWebサイトには、数多くの事例を筆頭に用語集や各社製品比較などなど豊富なコンテンツも掲載されている。