住宅・ホテル・オフィスの内外装・間取りなどの内部施設を手がける三井デザインテック。11月にリニューアルされた同社のオフィスは、オフィス空間のアイディアを社員自らが発案・体験することで、空間づくりの可能性を追求する"職場兼実験室"だ。インフィルのプロ集団が働くオフィスを見せてもらった。

社員が共同で描いたアートワークがお出迎え

廊下を歩いていてまず目に入るのは、黒壁に浮かび上がる「THE PALETTE」の文字。これは新オフィスのテーマで、様々な職種の社員がパレットのように混ざり合い、新しい可能性を創りだすという意味が込められているのだそう。社員の共同作品だというカラフルなパネルが、執務エリア見学への期待感を高める。

新オフィスのテーマは「THE PALETTE」

半円形ミーティングスペースでプレゼンテーション

ドアを開けすぐにあるのは、半円形のミーティングスペース「FUTURE MAPPING」だ。同社はデザインのプレゼンテーションやワークショップなどを頻繁に実施するため、大人数が集まれるイベントスペースが不可欠なのだそう。半円形のミーティングスペースは、視線が集まりやすく一体感も生まれやすいという。

半円形のミーティングスペース「FUTURE MAPPING」

また、女性社員がスカートを気にせず上段に座れるよう、ブランケットを用意。何とも気の利いた会社である。

円形というと無駄に場所を取りそうだが、座面の裏側を本棚とすることで、省スペースを実現。誰でも使える共有の本棚は、「同じ本を何冊も買ってしまった」という無駄遣いの削減にも役立っているそう。

ブランケットまで完備

「FUTURE MAPPING」の裏側は本棚

五感を刺激する演出も

柔軟な発想を生み出すため、五感を刺激するツールをたくさん導入している同社。アロマディフューザー、鳥のさえずりやジャズを流す音響設備、目にやさしい観葉植物など、リラックスしながら仕事ができる環境演出に取り組んでいる。

天然アロマによる香りの空間演出中。五感を刺激するのが目的だそう

フリースペースで相互理解を実現

執務スペース「PALETTE」は70%がシェア席。給湯室に近いハイカウンター席やPCの電源コードが設置された席など、その日の気分や業務内容に合わせて座ることができる。「PALETTE」が誕生した経緯をソリューション推進部 マーケティング推進室 黄明奕(こう みんい)さんに伺った。

黄さん「三井デザインテックでは部署や職種によって業務内容が大きく異なります。しかしながら、新しいアイディアを生み出すには、分野も職種も違う社員同士がお互いを理解し協力することが重要です。『PALETTE』は、『事業部を越えた社員同士の相互理解』を追求した形なんですよ」

執務スペース「PALETTE」

「PALETTE」は2事業部の共有エリアのため、全く違う仕事をしている社員と隣席になることがほとんどだ。ふだんはあまり接点のない人からのアドバイスで、新しいアイディアが生まれることもあるとのこと。

好きなタイプのシートを選べる

集中したい人用のスペースも確保

「PALETTE」の奥は「THE BOX」いうセキュリティエリア。1人用のつい立て付き家具が置いてあり、集中したいときはここにこもるという人も多いそう。ワーカーが1人になれる「プライベート性を確保できる家具」はオフィス家具の最新トレンド。交流を促進するフリースペースと、集中できるスペースのバランスの取り方も参考にしたいところだ。

セキュリティエリア「THE BOX」

執務エリアの大部分がシェアスペースのため、個人の荷物はすべてロッカーに収納するルールが徹底されている。また、共有できる資料や道具はすべて会社が一括で管理し、省スペースと情報共有、無駄な経費の削減を実現した。

共有することで収納スペースを減らす

フリーアドレス席と1人用スペースによって、コミュニケーションの活性化と集中を両立させた三井デザインテック。他事業部の社員との交流を日常的に生み出す仕組みは、アイディアが出ず仕事に行き詰まった時の解決策を生み出してくれそうだ。同社が考えるオフィスづくりの最終ゴールは「働く意識の改革」で、「THE PALETTE」はその通過点。同社は今後も自社を舞台に、働き方の実験を続けていくという。

カフェスペース