IDTは11月14日、都内にて同社Global Vice President of Operations and Chief Technology Officer(CTO)であるSailesh Chittipeddi氏が現在の同社の技術がどういった方向に向かっているのかの説明を行った。

IDTのGlobal Vice President of Operations and CTOであるSailesh Chittipeddi氏

IDTは2014年2月に社長兼CEOにGregory L. Waters氏が就任して以降、ポートフォリオの整備を進めてきており、以前の日本法人社長である迫間幸介氏へのインタビューでも取り上げたとおり、「4G Infrastructure」、「Network Communications」、「High Performance Computing」、「Power Management」という4つのビッグトレンドにマッチする製品群の構築を進めている。

今回、Chittipeddi氏は「4G Infrastructure」と「Network Communications」をまとめて「Communications Infrastructure」という市場として表現。同市場にはRapidIOのスイッチ、ブリッジ製品、ミキサなどの基地局向けアナログ高周波製品やタイミング製品などを提供しているが、中でもSerial RapidIO(SRIO)は、爆発的に増加する通信データを高速にやり取りするために必要とされる技術であり、それは5Gへと進化していく今後、より重要になってくるものであることを強調。基地局だけでなく、その後段に存在するデータセンターでも活用できる技術であり、すでに4Gの基地局でパケットスイッチとして活用が進められているほか、Cloud-RAN技術や次世代のLTE-Advancedの実現に向け、SRIOの活用が模索されているという。

RapidIOの利点について同氏は「レイテンシがナノ秒オーダーで実現できるほか、パケットロスが生じた際もリトライを実施でき、かつ消費電力も低く抑えられることなどが10G Ethernetに比べたメリット」とし、次世代品では1レーンあたり10Gbps、そして25Gbps/レーンと速度を向上させ、かつレーン数も最大48まで引き上げたスイッチ製品を開発することで、次世代の通信ニーズに対応していくとした。

RapidIOと10G Ethernetの仕様比較と、IDTのRapidIO製品のロードマップ

また、通信関連として、タイミング製品にも言及。これまでは単に周波数を高精度に提供できればよかったが、IEEE1588やシンクロナス・イーサネット(SyncE)の登場で、各ノードを同じ周波数で位相を併せる必要性などが生じており、さらなる高性能な製品の提供を進めるとするほか、「RapidIOはラック間のスイッチやCPUのスイッチなどへの活用といったインターコネクトとしても期待が高まっており、幅広い分野に対応する製品展開を行っていく」とする。

ワイヤレスインフラやデータセンターのルーターにおけるIDT製品の適用範囲の例

一方のHPC分野だが、ここは同社が昔から強かったメモリインタフェース製品などのほか、発振器などが含まれる。中でも発振器は400fsよりも上のハイエンド分野を指向し、高速通信にマッチする位相ジッタが少ない製品の開発を行っていくほか、発振器にイーサネットのPHYやパワーマネジメント機能などを統合したインテリジェントクロック製品の提供なども行っていく計画とする。

HPC分野におけるIDT製品の適用分野の例(左)と、タイミング分野におけるIDTのターゲット範囲(中央)、タイミング製品ロードマップ(右)

そしてパワーマネジメント分野だが、「我々はこの分野に関しては後発のベンダ。だからこそ、闇雲に販売を行うのではなく特定分野に合わせたパワーマネジメントIC(PMIC)」とワイヤレス給電技術を提供していく」とする。同社のPMICはICそのものの追加ではなく、DPU(Distributed Power Units)と呼ぶ給電ユニットを追加することで、1チップながらスケーラブルにシステムの要求に対応することが可能となっているほか、ワイヤレス給電技術にしてもWPC、A4WPの両方に加盟し、すでにスマートフォンベンダやプロセッサベンダとソリューションの開発や、実製品への搭載などが進められている。また、Qi規格では、規格にはトランシーバ側からレシーバ側にパケットを送る規程が存在していないため、独自機能としてそれを可能にするなど、使い勝手の向上も進めているという。

IDTのPMIC製品の特徴。DPUの追加だけで、求められるシステムごとの電力供給量を変化させることが可能

なお、同社では2~3年後の実用化に向け、タイミング製品にPMICの機能を統合したり、Q値の高い製品、水晶振動子と半導体パッケージの融合といった技術、メモリインタフェース向けに使っている温度センサ技術の他チップへの転用、スピンRAMやMRAMといった次世代メモリ向けインタフェース製品の開発などを行っているという。また、米国の大学と連携することで、5年以上先に実用化が求められるであろう基礎技術の開発も進めているとのことで、こうした技術を順次実用化していくことで、他社との差別化とし、市場の拡大を目指していくとした。