日本ナショナル・インスツルメンツは11月22日、都内でプライベートカンファレンス「NI Days 2014」を開催し、さまざまな最新ソリューションの紹介などをユーザーに向けて行った。同カンファレンスにおいて、NI Director of Product Marketing, Data Acquisition, Chad Chesney氏にNIが今後、どのような方向に向かっているのか、といった話を聞く機会をいただいたので、その模様をお届けしたい。

NI Director of Product Marketing, Data Acquisition, Chad Chesney氏

National Instruments(NI)と言えば、言わずと知れたPXIによる計測ソリューションベンダの大手であり、さまざまな産業分野にて活用されているが、今回の話では「計測」という言葉以上に多く繰り返されたのが「IoT」だ。コンシューマ分野であっても産業分野であってもIoTが今後、開発の領域をけん引していくキーワードとなる。「エンジニアは常に新しい技術の開発を行っている。NIもそれに対応していく技術を開発していく必要があり、そのトレンドがIoT」ということで、それに対応できるスマートな計測技術を提供していく必要があるというのが同社の考えだという。

スマート化という点については「長期的な視点で見ればコンシューマも産業分野もスマート化は確実に進み、それに対応した計測・制御が必要になる。それを実現するためにはハードウェアの進化はもちろんだが、使い勝手の高いソフトを実現し、それを設計・実装、そして評価まで幅広くLabVIEWを適用させていく必要がある」(同)とするほか、もう1つの背景として、ビッグデータの活用、中でもアナログデータのビッグデータ「ビッグアナログデータ」を活用したいというニーズが高まってきており、それに対応していく必要性が生じていることがあるという。

IoTを構築する各種要件と、それが適用される分野の例。コンシューマユースもビジネスユースも包括し、ほぼすべての分野での活用が期待されている

ビッグアナログデータとは、例えば、センサからデータを取得し、計測機器を開始て工場プラントのサーバにデータを送信し、プラントの状態などを監視し、従来、人海戦術で行っていた設備のチェックといった予防保全などの作業を自動化させるために用いられる。この際、データの管理や解析、システムそのものの管理といったところまで考える必要があり、それを実現するためには計測機器にもスマート化(インテリジェント化)が必要になるということであった。「従来、計測機器単体ではデータの解析といったことはあまり考えられてこなかった。しかし、ビッグアナログデータの活用を推進するためにはインテリジェンス性を持たせたプラットフォームで、顧客が実用化したいインテリジェントをそこで実現する必要がある。それはすでに計測機器ではなく、小型の高瀬能コンピュータという世界だ」と同氏は計測機器という枠からNIが抜けつつあることを強調する。

ビッグアナログデータを活用するうえでの課題と、ビッグアナログデータをソリューションとして見た場合の各レイヤのアーキテクチャの例

またその一方で同社が長年、参入を挑みながら、なかなか市場を伸ばせない分野に半導体製造があった。しかし、新たにPXIプラットフォームをベースとしたテストシステムがIoT向けの安価なデバイス、特にMEMS分野で受け入れられる土壌ができつつあることも同氏は強調する。「トランジスタあらちのデバイスコストはプロセス伸微細化により下がってきているが、デバイスのテストコストは横ばいかやや上昇傾向が続いており、MEMSマイクのような低コストデバイスでは従来のテストソリューションが採算に合わなくなってきていた。しかしPXIベースのテストシステムは従来ソリューション比でコストを1/10に低減することを可能にした。これは大きなマイルストーンである」とのことで、PXIによるテストソリューションではソフトウェアを更新することで、半導体デバイスの進化に対応できることもメリットになるとした。

NIとしても半導体分野は長年にわたって飛躍を狙ってきた市場であった。2014年に、PXIプラットフォームを活用した低価格テスタを提供したところ、デバイスコストを抑えたいという半導体ベンダのニーズとマッチしたこともあり、採用や導入検討が以前よりも進みつつあるという

IoTという流れがバズワードではなく市場として本格化するかどうかは「エンジニアの頑張り次第なところはあるが、多くのエンジニア、特に日本の場合、それをIoTと意識しないでスマートデバイスを作ってきた経験を持っており、進化の道筋として語ることができる」(同)とし、それに対しNIとしては「PXIという汎用品を安く提供することで、IoTの実現を自動車、メカトロニクス、FA、ロボット、半導体製造装置、プロトタイピングなどの産業分野にもたらすことができるようになる」とする。

実際の半導体テスタシステム(STS)の外観

最後にIoTの次は何か?、ということを同氏に聞いてみたところ、「まだまだ世界には多くの問題がある。そこに対応できるようなスピードにマッチしたアプローチを提供していくこと」としたほか、まだまださまざまな分野で検査や評価を行うニーズがあり、「エレクトロニクスやメカトロニクスのすべてのテスト・計測の分野に入り込める努力をしていく」とし、「我々NIをけん引するのは顧客の成果物。そこに柔軟に対応できるソリューションを提供できるのがNIの強みであり、いかなる分野であっても、あと一歩、それを実現するためのパフォーマンスが欲しい、というニーズがあれば我々はそれを助けることをいとわない」と、顧客がニーズをNIに伝え、それに対して実現するソリューションを顧客に提供するサイクルを今後、さらに広い分野で実現していくことをより深く進めていくと語ってくれた。